137.絶望の壁(2)
『師匠、師匠ですよね! あぁ、やっと会えました……』
個人通信? 見知らぬIDとキャラネームから突然喋りかけられ、即座にハウルと意思疎通を交わす。
『該当無、おそらく例の人物だと予想』
『そう、この声の主が……』
『初めまして。あなたの師匠にいつなったのか私は知りませんが、数多に及ぶ強力は感謝しているわ。えっと……』
『……イイって、イイって呼んでください』
『そう。イイ、ありがとう。それで念のため聞きたいのだけども』
私は一呼吸開けて問いかける。
『私達はアレを何とかできるかしら?』
誰にも弱音を吐かず、ただひたすらにこの局面まで突っ走った私だが、そんな弱い部分をみせれる相手が地上にはどこにもいなかった。
ルバーやハウルならば、と言えなくは無いが……やはりダメだ、そのどちらも私が導く側でなければいけない。
仮にハウルにそんなところをみせると、今のハウル達に一気に伝播してしまうだろう。
ルバーは口とオーバーリアクションだけで頼りないし。
『師匠、俺は知ってます』
何を知っているというのだ、イイは。
『師匠は一人で一騎当千でしょうけど、無敵の個人が艦隊を率いたらどうなるかなんて、余裕のよっちゃんでわかっちゃいますよ』
『……余裕のよっちゃんて』
『あはは、突っ込んでくれるってイイですね! あぁ、地球は懐かしいなぁ。あっ、Z軸さげないでくださいね? 俺の真上に師匠の船があるんで』
真下に彼の宇宙船はあるのか。
しかし。
『好き放題言ってくれるね? でもまぁ、チームを組んだ私が出来ない事なんて確かに無いのかもしれないね? さて、私達は左右に展開しつつひたすら打ち込ませてもらうけど、イイはどう動くのかしら?』
『俺はぐるっと縦に移動して一周してきます。師匠、必ず切り抜けましょう』
個人通信を終えると、私は総隊長の指揮する連帯を崩さぬよう宇宙船の操作に集中した。
「このミッションが終わったら、どんな人物かじっくりと拝ませてもらうよ」