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132.奇跡艦隊(10)

「それにしても、何か古臭いたてもんやなぁ。ってか姫さんもう居ないやんけ」


 立ち上がろうとせず、口だけが次々と動き続ける。


「あっ、あんたが師匠さんかいな? ってか間違いないな、地球最強って言われてるくらいやし、ここをまとめてるアンタが師匠さんで間違いない。私のかんがビンビンそういうてるわ、な? 間違いないやろ?」


 私をジッと真っ赤な瞳で捉える老婆は、どうやら私に会いに来たようだ。

 ただ、一つ理解しかねる点がある。


「世界最強といっても、私はただのプロゲーマーだよ。まぁ、十中八九私の事を訪ねてきてくれたようだが? だがしかし、師匠師匠と呼ぶが私は弟子を取って覚えは無いんだがねぇ?」

「あー、はいはい。余計は情報戦しとったら気づいた時には滅亡ルートまっしぐらや。ここはひとつ、効率的にいこうや、な?」


 老婆の台詞に、何か急ぎを感じる。

 いや、急がなければいけないほどに、リミットが刻々と迫っているという事だろう。

 ならば悩んでいる暇はない。


「良い、だろう。作戦会議の続きに戻る、えっと……」


 そこで未だ名すら知らない事に思い至る。


「うちの事はマルムさんでええよ、師匠さん」

「私は……菜茶なちゃさんとでも呼んでおくれ」

「りょーかい、菜茶なちゃはん」


 何か調子狂うけど、部外者むこうのじゅうみんを招き入れるのもやぶさかではない。


「すまないっ! おいっ、そこの老婆! スグに出ていくんだ!」


 突如、ホール内にやってきたのは警備隊の副リーダーをつとめている西郷さいごうだ。

 体格がいかつく、オリンピック選手顔負けの身体能力と頭脳を持ち合わせたスーパーマン的存在だ。

 ただし、拳銃ピストルの練習外での発砲経験がないためそこまで上手くないわ! ガハハ、とは本人談である。


 ものすごい勢いで私たちの元へ駆け寄るも、やはり視認出来るレベルだ(それでもかなり速いが)。


「待って下さい、西郷さん」

「んっ、阿賀沙汰あかさた、コイツはお前が呼んだのか?」

「……実は隠し玉でして。お隠ししていて申し訳ありません」

「……まぁなんだ、俺達こそ厳重に警戒態勢ひいてたのに素通りさせたことを謝罪させてくれ」


 誰一人として対応出来ない事象に、責任を負う必要はない。

 こういう時は前へ進む方法だけを考えればいい。

 西郷もそれを理解している人物だ。


「会場内でも対応できるよう、俺はここに残らせてもらうぞ。後部下に頼んで赤外線トラップを増やす手配をしておいた、次はもっと早く対応してみせるさ」

「私が支払った報酬じゃ割にあわないんじゃないかい?」

「ガハハハ、金で動くのが俺達じゃねぇよ! 心で動けるのが俺達ってな!」


 全く、世迷言と笑うやつらがいれば、こうやって心一つで真摯に私の声に向き合ってくれる奴もいる。

 人の持つパラメータは複雑すぎて理解出来ないね、全く。


 西郷の言葉に癒されつつも、今はそんなところに思考をさくわけにはいかない。


「それで、ワープが出来るっていうのは?」

「そそそ、それだよっ! 俺も気になっていたんだ、ああ、失礼レディ、私はドクタァァァ・タクット! と申します。お嬢さん、是非その方法を我々に教えてください」


 食い気味に動いたのは元々のワープ立案者、ドクタータクトだった。

 まさかとは思うが、老婆ラブな属性もちなのだろうかね。


「私の奇跡、WY(ウィズユー)で愛する人のとこまで送ったるわ。このスクロールを使うと、一気にワープって寸法や。ただし」


 マルム老婆は警告を放つ。


「このスクロール一つじゃ精々《せいぜい》ワープ出来て人一人やな」


 色々期待させておいて、何というオチをもってくるのだろうか。


「アハハ、半分冗談やから! 実はここにこれたんも、うちの力と時間旅行ときわたりの複合なんよねぇ。きっとまとめてドーンって移動する手段、あるて」

「なるほど、すまないマイティ。私は一度このマルムお嬢さんとじっくり作戦を練る時間をいただけないだろうか? そして、この計画が成功するていで練度をあげるレシピをいくつか用意しているんだ、目を通してくれるかな?」


 メールが各自の端末に送信されると、添付された中にはいくつもの〇〇レシピと書かれた練度上げの方法が記載されていた。


「ふふ、私は正直教えるのは得意じゃないからね、良いだろう。みんな、各自練度上げに一日の猶予をあたえる! 明日のこの時間、再びこの場所に集合しよう!」


 静かにみなは頷いた。

 反復行動によりプレイヤースキルを磨くことは、プロゲーマーの大好物なのだ。

 その手段が一級戦略家が自ら用意したレシピの数々に、食いつかない訳が無かった。


 私も少しばかし、どの方法でも対応できるように技術上げにいそしみますかね。

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