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131.奇跡艦隊(9)

 誰もが声を出さない中、私が声を出そうと一歩前に踏み出す。


 刹那。


「大分疲労しているから、座らせてあげて欲しいかしら」


 正面にいたはずの幼女と老婆は一瞬に視界から消えると、気配と共に発せられた声は背後から、つまり私の椅子から聞こえてきた。


 踏み出した足をそのままに、くるりと半回転してみると案の定、老婆は震える手で杖を握り絞めながら私の座席へと腰かけていた。


「今、私は夢でも見ているのかしらね?」

「何てことないかしら。時間対策は必須だと思うのよ」


 さらりとどこかの主人公なり悪役なり、重要人物が吐きそうな台詞を恥ずかしげも無く言い放つ幼女の言葉には、納得する事しか出来なかった。

 ああ、奇跡は向こうからやってくるのだと。


「もしかして貴女達は助っ人、と考えて良いのよね?」


 あんな老婆が誰にも気づかれずに移動出来る訳がないし、ならばこの幼女のいう時間対策、つまり時間を止めて移動でもしたのだろう。


「攻略者……いえ、ここでも力が使えるってことは地球外からわざわざお越しいただいた、と考えてもいいのかしら?」

「あら、奇跡のろいのない住民にしては話がはやくて助かるかしら?」


 幼女は髪をかき上げながらそう言い放つが、それ以上に老婆の見開かれた瞳に固まってしまう。

 あそこまで真っ赤な瞳は、なかなかに見かけない。

 お尻付近まで伸びた金髪はくすみがかかり、手入れがしばらく出来ていないのだろう。


「それで、ワープが出来るって事だけど、あなたたちは何者で、何のためにここへ? それもこのタイミング、色々と聞きたいことだらけだわ」

「そうかしら? 地球出身の主様ぬしさまが故郷を助けたいと願ったから、私たちが奇跡をおこしにきたかしら」

「奇跡の力で助けてくれるって事かしら? それに、地球出身の主様って?」

「私の協力はここまでかしら。後はこの小娘の奇跡で主様の元まで行けば良いかしら」

「ちょっ」


 私が話しかける前に、幼女は姿を消してしまった。

 残されたのは今にも倒れそうな老婆のみ。


「やっと着いた、って事でええんかいな?」


 見た目に反し若々しい声で喋った老婆は、まさかの関西弁らしき喋り方で覚醒をした。

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