127.奇跡艦隊(5)
結果だけ見ると、操縦に1時間程かけて慣れると首都攻略にはほとんど時間は必要では無かった。
NPCの町という扱いで考えると、やはりヘルダンジョンとは比べるまでも無くぬるかった。
「き、貴様等! こんなことをしてただですむと思っているのか!」
ぶっくりと太った男が威嚇してくるも、私は問答無用で空砲を放つと明後日の方向へと錐揉み状して飛んで行った。
「マイティのその力、FPSプレイヤーからしたら羨ましいですよ全く」
「ん、そういえば銃を渡しとけば早かったかもしれないね」
「「…………」」
二人して固まってしまう。
何という事だろうか、アイテムの受け渡しが出来るのだから銃生成を大量にして渡してやればよかった。
「ま、まぁ何かな? 魔力を消費するからね、これでも。桜井もそうだろう?」
「確かに。そうですね」
そう話しつつ、私は二挺程銃を渡し、操縦室へとたどり着いていた。
「操作方法は理解しているかね?」
「はい、ここは巨大な戦闘機という扱いらしくて操縦桿一つで操作みたいなんで。流石にFPSゲームにもここまで巨大な船を操作するタイプはなかったですがね」
やる気満々で操縦席へと座り込んだ桜井はモニターにうつるパラメータ群とにらめっこしながら楽しそうにしている。
「あぁ、箱点も一緒にやればよかったのになぁ」
桜井と一緒に組んでた箱点はここの攻略が終わると、自分も奇跡の力が欲しいと別のヘルダンジョンに向かったと補足をしておく。
「おや、他にも攻略組が出てきたみたいね」
「おっ、そうなんですか! どうしましょう、一度皆で会議しますか?」
「いや、君のおかげで大体のとるべき行動は把握したからね。ハウル」
『菜茶、私が居ない間に無茶はしないようにな!』
『お前は私の母親か! ほら、さっさとアシストしておいで』
『了解』
「ハウルがアシストしてくれるからね。私は次の盤面を考えて動くとするよ」
「ハハッ、わかりました」
『お兄ちゃん、操縦席で適当な操作はしないで! 流星群に向かうコースに傾いてるわよ!』
「わわっ、ごめんハウル!」
楽しそうで何より。
だけど、貴重な戦力を無駄にはしないでおくれよ? とは胸中でだけ呟いておく。
こうして、私は順次空砲が放てる武器を魔力が許す限り配り、更に一日が経った頃、最初の第一陣は全員攻略組となっていた。
奇跡の力を得たのは、桜井一成を始め、以下のようになっていた。
TODONATIONより、リーダーの桜井一成は戦闘機を生成できる力。
ベルギー出身のコスプレ男、CCCは闇を操る力。相棒はAI。
格闘ゲーム世界ランク1位の原梅は対象を殴ると破損させる力(ウェポン/アーマーブレイク系)。相棒はマッポン。
続いて格闘ゲームの賞金ランキング1位のジャン・チュンが金を生み出す力。相棒はジェ・チェン。
アメリカ代表のSayYeah!のEmmaが癒しの力。相棒は旦那のNoah。
HotGirlsの魔王咲が砂の力。相棒はリーダー紅
同じくHotGirlsよりLiLyが宇宙眼見の力。(本人はスペースアイと言ってたが)相棒は儚夢。
何故かTODONATIONとHotGirlsの複合PTで単鳥と升緒の、単鳥が風の力。
同じく、TODONATIONの卵と、HotGirlsのとろろ昆布のペアより、とろろ昆布が密着の力。
最後に格闘ゲーマーの二人、カナダのLESSと里氏が組み、LESSが収納の力。
と、こんな感じでザックリと奇跡の内容だけを確認していた。
これらを駆使してアレに対抗できる、とは想像に難しいがやれることをやるしかないのだ。
ついに私たちは本当の意味での人類存続作戦会議を開始した。