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125.奇跡艦隊(3)

 プロゲーマー達を招集して早二日が経っていた。

 初日は運よく集まった20名のFTPプレイヤーと格ゲープレイヤー。

 説明をハウルとマネージャーにほぼ丸投げ、午後には天文学者やまだ声をかけれていなかったプロ達に声をかけてまわった。ついでに、首相おうさまクラスに明日緊急会議を開く依頼をしてまわった。


 何千億もの金を動かしたのだから、動いてくれなければ困る。


 結果、二日目はテレビ会議という形式で数か国の首相達との会合を開くことに成功していた。

 勿論、意味がわからないと一蹴されたりすんなりこの会合を受け入れてくれた国は多くは無かった。


『君の世迷言は良くわかったよ、それでは時間ですしそろそろ解散しましょうか』


 翻訳家がそう言うと、各国から拍手が巻き起こり、たった15分という演説と罵声を浴び続ける15分、あわせて30分という短い時間で会議は閉会していた。


 モニターの前で、思わず空笑いしか出来なかった私も現実ではこんなものだ。


菜茶なちゃ、マネージャーから通信だ』

『あんた、容赦ないわね』


 疲れ切った声でハウルに返答してすぐ、いつもの口調で連絡をとる。


「あっ、菜茶さん? 攻略組が出ましたよ! TODONATION(トウドウネイション)桜井一成さくらいいっせい箱点はこてんのコンビです! リーダーの桜井さんが、菜茶さんと早く会いたいと言ってます」

「ん、わかった。すぐに向かうから操縦コンソールにちゃんと目を通すように言っておいて」

「了解」


 24時間ジャストで攻略してくるあたり、流石TODONATION(トウドウネイション)といったところか。逆に他の攻略組は未だクリアならずとは。


菜茶なちゃ、続いて通信が入っている』

『はぁ、少しは涙流す時間くらい頂戴よ全く』


「ゴッメーン! 夕方には参戦出来そうだから、まだ間に合うよね?」

「あんたねぇ……うん、感謝するわよ」

「またまたー! あいつらの説得も腕づくで引っ張って来たから、またあとでね!」


 何とも頼もしいものだ。

 電話越しから聞こえる女性の声はレースゲームの世界ランク1位、アメリカ代表のカタリナ・ホワイトだ。


「ちょっと、俺にも喋らせろよ! 菜茶様、遅れてすいませんでした、おれ、いや私たちもスグに参戦致しますので」

「ええ、期待しているよ」


 更に追加で聞こえてくる声はRTSリアルタイムストラテジーの第一人者、これまたアメリカ代表のドクタータクトだ。高い声から女性に間違われがちだが、れっきとした男だ。

 第一人者というのは、RTSのプロゲーマーではなくその戦略や操作テクを編み出し、指南する側という事である。

 つまり、日本でいうところの廃人ゲーマーといったところか。


「本当に、感謝しているわ」


 首相達げんじつしゅぎしゃより、よっぽど話のわかるプロゲーマー達に感謝だ。

 いつまでもナヨナヨしてられないわね。


 私は拠点ビックサイトへ戻ると、操縦コンソールの調査をしている桜井の居る場所へ向かう為RLのデバイスに身を纏った。


 意識が闇に溶け込むような、そんな時だった。


 ぼんやりと覚えている男性の声が脳裏に響く。何とかその声を捉えようと、意識をその場に留める。

 体も思考も全てひき剥がされそうになるのを抑え、優雅に見えるように座って足を組んで見せる。

 相手の姿形は理解できないけど、私にウッタエカケテクル内容は私の目的と合致していた。


『師匠、俺のプランは『あの星』を無かったことにしようと思うんです』

『そんな事が可能なのかな? いや、奇跡の力で消滅させる術があると?』

『はい。ただし消滅の方法は『時間逆行リタイム』をひたすら打ち込む必要があります。存在する前まで時間を戻しきれば、ソレは存在として抹消されます』

『そんな事が出来るのならば、さっさとやってほしいものだけど?』

『魔力の概念と、奇跡の効果範囲が邪魔なんです。魔力回復系で回復しても1秒で倍化していくアレには対応できません。ならば数で勝負という訳です』

『本当に1秒ごとに倍化、してるのかアレは……』


 この男の話が何処まで本当なのか真偽は定かではないが、ログの情報と合致していることからも、嫌な事実ことだという可能性が高いのだろう。


『まぁ平たく言えば、ひたすら時間逆行リタイムを打ち込めば何とかなると、そう考えています』

『単純明快な回答ね。でも、どうやればそれが実現すると?』

『そこでお願いがあります。俺は大量に時間逆行リタイムのスクロールを準備しますので、それを『全て』打ち込めるだけの宇宙艦隊を用意してほしいんです』


 あぁ、なるほど。

 要するに私のプランAにあたる惑星破壊に、奇跡の力をかぶせていくというあたりか。

 確かに、私もどれか対策出来る奇跡が手に入ればと思っていたが既に対抗策はあるということか。


『俺達はこの宇宙域を出る事が出来ないんです、師匠、お願いいたします。スクロールの受け取りと分配、そして宇宙艦隊の総指揮を、皆を守ってやってください』


 何だいこの男は? 私を買いかぶり過ぎじゃないか?

 でもまぁ……シナリオはバッドエンドだけじゃないって事だね。


『ふふ、私もこのイベントが終わったら引退かね』

『もぅ! いつもそうやって言いますけど……あっっ』


 男との距離が離れていく。

 ああ、この時間は限界を迎えたという事だろうか。


『俺からの贈り物です。受け取ってください』

『ああ、大切にするよ』


『…………DL中…………』

『…………マップデータと、テキストデータを受信しました…………』


 消滅時間クロックロスト.txtという名のデータと、240リミットの脅威までの宇宙域のデータが記された3Dマップが、私のデータフォルダに入っていた。


 中を覗くと、消滅時間クロックロストの全体図や宇宙域の座標、スクロールの取り扱いについて書かれていた。

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