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123.奇跡艦隊(1)

 二度目の一日目。


 懐かしい顔ぶれに、愛しい人たちに、涙を流しながら抱き着いたら気持ち悪いと頬をはたかれた。

 俺の知っている距離感は既にここには存在せず接し方がわからない。


 ただ、のんびりしている訳にもいかずまずは世界滅亡を回避するために出来る事が無いか話し合った。


 ララは一応は悩んでくれているようだが、返答は以下のようなものだった。


「それって、私達が動く必要があるのかしら?」


 援護射撃とばかりに、マルムも持論を返してくる。


「せやな、うちらのこの場所は宇宙から隔離されているし、もしその惑星が降って来たとしてもこの宙域に入ったら動きが停止すると思うで? まぁなんや、無理に動かなきゃ私たちは安全ってわけやで?」


 紅茶を飲みながら、危機感などまるで感じていない雰囲気の元、まったりとしていた。

 二人とも、思いのほか協力的では無かった事に、少し感情がへこんでしまう。


「無駄って言ったかしら。主様はもうこの時間軸で思い描くように行動出来ないのかしら」

「ちょっと黙っててくれないかな? 俺は二人とお話しているのっ!」

「んー、ひめちゃんって何者なん? 私以上にイイと仲良く見えるんやけど? それに何かの祈願者やよね?」

「主様は私の解放者で間違いないわよ。まぁあなた達に馴染みが深い、時の支配者ってのは何を隠そう私の事だけどね」

「冗談! まぁええわ、それでイイはどない動くつもりなんよ?」


 華麗にスルーしてマルムは俺の意見を求めた。

 地球に戻っても俺はあのデバイスから外に出る事は出来ない。

 かといって、マルムのラヴリィイイィートの力での移動を行っても地球上への干渉が出来ないせいか暗闇の中で動けなくなるだけで、数秒したらその空間に耐えきれなくなり舞い戻ってくるしか出来ない。


 それも体力を使うのか、全身がきしむように痛むので何度もトライしたくない。

 だが。


「ラブリィイイィートの力で師匠の元に飛んでみようと、思う」

「主様はそんなヘンテコな奇跡も得ているのかしら? そのヘンテコな奇跡が邪魔なら私がポイッちょしてあげるのよ」

「待って! おいマルムもそんな目で見ないで! 姫様が勝手に言ってるだけだからね?」

「ぶー、何の奇跡か本気でわかんないけど、姫ちゃんとはいずれ戦をする必要があるみたいやね」

「ふっふ、時の支配者だと言っているのに、物分かりの悪い小娘かしら」


 笑いながら、姫様は俺に耳打ちで一つの案を提示してきた。


『主様、この娘の力と私の力で師匠という人物の意識に介入できるかもしれないかしら』

『なっ、そんな事が出来るのか?』


「まぁ良いかしら。物は試し、今すぐ主様はその師匠という人物に会ってくるかしら」

「そう、だな。時間がとにかく足りてない今、出来る事は片っ端から試すか」


 マルム、ララの二人との温度差が気になるところではあるが、さっそく俺はWY(ウィズユー)を使い闇の世界へと飛び立った。


「ああ、やっぱりだめだ。何も見えないし、立っている感覚すらない」

「やっぱりなのかしら。ここは意識の世界、つまるところ移動途中で世界ちきゅうに拒まれているかしら。でもこの領域は意識が転移する際に必ず経由する共通世界なのかしら」

「ん、どういう事だ? ああ、体が軋む、意識が霞んでいく」

「我慢するかしら。超時間低迷フレームバースト状態(小)にしたから、一瞬でこの意識の世界を通過していく人物を捉える事が出来るかしら」

「ど、どれだけ耐えれば良いんだよコレ」

「そうね……1時間も待てば捕まるかしら? 地球時間でいうところの24時間をカバー出来るから、気長に待つかしら」


 うげぇ、1時間もか……。

 しかし師匠と会えるかもしれないんだ、ここで耐えなきゃ何も進まない。


 結局10分待ったところで、その機会は訪れる。

 この感じ、この圧力プレッシャー!? 間違いない、師匠の意識だ!


『……しょう、……、し、しょ……師匠!』

『ん、この声の聞こえ方はハウル? いつの間にそんな声質になったの?』

『違いますっ、ハウルって人は知りませんが、僕です、『イイ』です』

『ん、聞こえない、誰だ君は?』

『師匠、僕は待っています。貴女の力が、僕たちには必要です』

『ん、何故か君からはティーの良い香りがする。はて、私はティーはあまり好かないのに何故こんなにも懐かしくて良い香りだと感じるのだろうか』

『えっ、し、師匠? えっ、ティーが好きだったんじゃ……ぁ、しまっ……』


「み、短すぎるぞ姫様!?」

「残念ながら師匠という人物は主様に興味がさほどなかったのかしら。それにしても、私の奇跡を素通りしてしまうなんて、何かしているかしら」


 本来ならば意識を捉えればしばらくはその状態で硬直させれるらしいが、どうも何かが師匠の意識に介入していてそれを妨げたらしい。

 流石というべきか、少しくらい弟子の俺の成長をみてくれても良かったのに。


「とにかく接触する手段は得れたかしら? でも、思い切って一度どのように動くのか見るのも良いかしら」

「見るだけ、って、滅亡していくのをただただ見守れってか!?」

「ええ、そう言ったかしら。でも正直に言うと、主様の精神は既に崩壊寸前なのかしら。後一度リタイムを使えばもう修正は効かないかしら」

「いいや、ならなおさら全力で今回も動くべきだろう?」

「……好きにするかしら」


 こうして再び消滅時間クロックロストへ戻った俺は対策案を練るのだった。

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