120.プロゲーマー達の挑戦(5)
「あっちに何か居るねぇ」
突然、背後からする声に体をビクつかせ振り返るも暗闇の中ではAI様の姿を確認する事は叶わなかった。
「なぁ、私には何もわからないんだけど?」
言葉足らずだが、それしか確認の問いかけ方がわからなかった。
こういう時、母国語ならばPourquoiと気軽に聞けるのに。
「あーうん、若干卑怯な方法なんだけども」
少し言葉を詰まらせながらAI様は続けた。
「あえていうなら音、かな? 視覚に頼り過ぎだって菜茶さんに突っ込まれてからかな、音を聞くようにしたの」
「音? それなら私も意識して聞いているけども」
周囲の気配には警戒しつつ、勿論音頼りに行動しているが声をかけられるまでAI様の気配すら感じ取れなかった。
それほどに深い闇の中で、どうしろと?
「私も音って聞いてたつもりで、意識して聞けてなかった口だわ。そうね、私の呼吸音や心臓の鼓動音、髪の毛が擦れる音までも聞き逃さなくなれば、こんな暗いだけのダンジョンは余裕になるんじゃないかしら?」
んん? 日本語って難しい。AI様の言っていることが半分くらい理解出来なかった。
そも、心臓の鼓動音って胸に耳をあててやっと聞こえるような、そんな音だよ、な?
「音速って毎秒340mもあるんだよ。相手が10m離れていれば29.4ミリ秒。FPSの向こう側を察知出来るから、真剣に音を意識して体とリンクさせれば菜茶さんに一歩は近づけるかな、って感じ?」
AI様が言っている事がいよいよわからなくなってきた。
格闘ゲームでよくせめぎあうフレーム間の攻防だけど、そのフレーム間での論争は既に通り過ぎたかのように、音察知をしろと言っているかのような。
「何だか現実でやると入力前の音で反応するようになっちゃって、卑怯なきがするなぁ、とか最近は思う訳ですよ。でも、そんな事よりまだ死にたくないじゃん?」
あの話はどこまでが本当なのだろうか。
『全部本当やでぇ』
いきなり思考に割り込んでくる声を無視しつつ、私は悩む。
「そう、だな。私も全力で挑んでみるとしよう」
こうしてCCCとAIのコンビは進みだす。