116.プロゲーマー達の挑戦(1)
私は日本代表チームのHotGirlsのリーダー、紅。
本名はツイッターなどのプロフィールを参照して欲しい。
チームで東北で行われていた小さなFPSの大会にゲストとして呼ばれていた私達は、少しでもお金を稼ぐために出稼ぎに出ていた。
だけど、その仕事は突然キャンセルされ一方的に違う仕事を割り振られた。
思わずハァ!? とキンと高い金切り声をあげてしまい、思わず叫んでしまっていた。
だけどその内容を聞くや否や、震える手で電話口に手を当てチームメイトに相談をした。
「ねぇ、ビックサイトで一儲けと行かない?」
それは阿賀沙蛇菜茶からの直接依頼だった。
私たちのスケジュールに割り込んだのも、マイティからの要請のせいだった。
「何故そんな大物が私達に声を?」
「リーダーって知り合いだったっけ?」
LiLyさんと、とろろ昆布さんが質問をするも私も顔を横に振った。
「何でも、クリアしてほしいゲームがあるんだとか?」
「なんやろ? でも、マイティと一緒にプレイできるだけでも大きいよね」
そうだ。マイティは常に忙しく、大会にもほぼシードで最終戦でしか参加しなかったり、助っ人で突如現れたりする程度なので手合わせが滅多に出来ない。
最も、手合わせしようにもFPSというゲームの性質上技量が上の相手には成すすべなく訳も分からずKILLされてしまうが。
「それでも、何でそんな震え声なんだ? ポンポンでも痛むのか? ハッハッ」
升緒さんが何の面白味も無いジョークを飛ばすも、実はめちゃくちゃお腹が痛い。
「私達が今向かってる仕事先、報酬額覚えてる?」
確認だ。
「百万。交通費等は出ないから車で向かっているし、六人で山分けだから実質十万程度」
魔王咲さんが眼鏡の位置を調整しながら答えてくれる。
そうだ、私たちは大会を盛り上げる女性のみで構成された日本代表チームだ。
一人頭十万貰えるのだから、少ないとは思いつつもギリギリ許容範囲である。
でも。
「落ち着いて、聞いてね……私たちへのオファーは、呼び出しのある場所へ明日中に到着で五万が出るって書いてあるの」
「五万? 六人で割ったら微々たるもんやん……」
「魔王咲さん、この報酬には続きがあるの。飲食費・宿泊代は全てマイティ持ち、更に一日の拘束で百万、出されたゲームクリアで追加報酬の一千万が出るみたい」
「「「「「ハッ?」」」」」
「ま、待ってやリーダー、ろ、六人で割ると」
「一人につき、よ」
運転をしていた儚夢さんが、下道へ降りるコースへと車を誘導していた。
「やるしかないっしょ?」
私たちは頷き東京ビックサイト、第七ホールへと向かった。
と、いうのが数時間前の私達。
まさかVRゲームをさせられるとは想像もしていなかったけど、少し楽しそうなので良しとしよう。
「お待たせ、体動かすって慣れないね」
「本当に、ね」
ふふ、と笑って見せる。
私は今、紅と魔王咲の二人でマイルームに来ている。
『準備は出来たか、二人とも』
「あなたがハウルさんね、宜しく」
「何かえらいチャラい声でやな感じ」
『……アッ、アァー、ァァァ。ふんふん、こんな声ならどうでしょうか?』
透き通るようなソプラノボイスに早変わりしたハウルは、さすが人工知能というべきか。
「いいじゃん! 私はその方が好きよ」
はしゃいでみせる魔王咲さんだけど、動きがギコチナイ。
『紅、問題は無いわ。ヘルダンジョンに没入後、すぐに義体を動かすコツはつかめるはずよ。それじゃあ、入りながら説明しましょうか』
何故か私の思考を読み取って先に説明してくれるハウルさんは、とてつもなく優秀そうです。
「じゃ、行こリーダー!」
「ええ」
クリアすれば1105万が個人に入ってくるのだ、ここで良いところ見せないでいつプロゲーマーを名乗れっていうんだ。
『…………DL中…………』
目の前に浮かぶDL中の質素なフォントが、グルングルンと体の周りを浮遊する。
何だか、本当にSFの世界の一場面に降り立った、そんな気がした。
『では、今の間に説明しよう。
そうね、まずは奇跡と呪いのお話から。
そして、私たちが今どのような状況で、どんな打開策があるのかをお話しします』
祈願者の話、ヘルのクリアで受け取れる報酬の話、そして240リミットの脅威が本当にやばいと人工知能が100%正しい計算だと弾き出したという事。
『全く、マイティは一体何と戦っているんだか』
思わず苦笑してしまう、そんな顔のまま私と魔王咲の二人はヘルダンジョンへと降り立った。