115.240リミットの脅威(8)
シンと静まり返った中、格闘ゲームのキャラコスプレをしたCCCが声を上げた。
「マイティ、ニヒャクヨンジュウ リミット ノ キョーイ? ッテナニ? チューニビョー ナ ボクカライワセテモラエバ、ゼンゼンカッコヨクナイヒビキダヨ!」
まぁ、確かに認めよう。
240リミットの脅威というネーミングはううん、と唸りたくなるが的を得ているので我慢してもらうしかない。
「ネーミングセンスについての文句は受け付けないよ」
「脅威って事は何だ、俺達プロゲーマにとって何かあるのか? 240リミットが何を指すのかも意味が解らん」
続けて格闘ゲームのプロ、2位のマッポンが突っ込みを入れた。
「マッポン、なかなか鋭いね。それじゃ簡単に説明しよう」
マイクの音量を上げてもらい、私は説明する。
「240リミットというのは、240時間、つまり10日を指している訳。そして脅威というのは、人類が滅亡する可能性があるって事を指している訳」
「ハァ!?」
ところどころから何言っているんだコイツ、という疑問の声が上がる。
「マイティ、何世迷言いってるんですか?」
「梅ちゃん」
今は私が説明するターンだ、とシィと人差し指を口元にあてる。
「恐らく240時間、いや既にそんな時間も残っていない訳だが……新しい惑星の話は知っているかな? あれが10日後、恐らく地球に衝突する」
「NoNoNo,マイティ映画ミスギジャン?」
LESSがありえないとばかりに、鼻で笑って見せる。だが。
「マイティ、私達は貴重な時間をさいてここに来たのよ? そんな冗談言うために呼んだんなら、私帰るわよ?」
強い口調で言うのはジェ・ジェン。
「冗談か。ふふ、冗談ならどれだけ良かったことか」
「菜茶さん、本当に本当、なんですか?」
「紅、私がわざわざ姿を現して君たちを呼ぶと思うかい? それにな」
腕を組みながら私は力説する。
「私達ゲーマーがこの絶望的な危機から脱するための可能性を唯一秘めている」
ニィ、と笑みを見せ言い含めるとしよう。
「私達が現実の主役になったって、たまには良いだろう? 会場内にRLのデバイスを用意している、時間は限られている。この災厄な最悪を回避する為に、私に力を貸してくれる奴は今すぐ没入しな! 人工知能デバイス、ハウルの複製を組み込んだ特性だ、君たちなら難易度ヘルだろうと、1日あれば余裕だろう?」
「ま、待って下さい! RLのヘルは理不尽過ぎて!」
「Emma、説明はハウルに攻略しながら確認してほしい。そして奇跡の力をもって、あの脅威を打ち砕くとする」
ざわめく会場内。
プロ達はいきなり呼び出され、突然滅亡の危機やら、RLをプレイしろなど言われて混乱どころか、意味も無く茶化されているように思え沸々と怒りの感情が優先して爆発しかけている。
「ああ、そうだ。君たちに与える猶予は24時間だ、その時間一杯ヘルに挑んで欲しい。攻略者にはそうだな、私への無限挑戦権を約束しよう」
突然、会場内の皆が鎮まる。
「本当に、何度でも挑戦権を得られるのか?」
桜井一成が震える声で確認をとる。
「勿論、本気だ。死ぬほどしごいてやるよ」
瞬間、誰一人駆けることなくRLのデバイスへと向かっていく。
最強と好きなだけ戦えるというのは、プロゲーマーが更なる高みへのぼる近道である。
「本当にみんなやる気だしちゃいましたね、菜茶さん」
「AI君も急がなくて良いのかい?」
「私は四階層脱落組みですから……いや、今ならワンチャンありそうだけど私だけじゃ同じ場所にしか行けないし、誰かのルームに呼んでもらってから行こうと思います」
ヘルダンジョンは現在、一度潜ると同じダンジョンに固定されるようになっていた。
その為、私もAI君も銃之支配から得る力は既に無い状態だ。
ならば他の祈願の力を手に入れ、その中からアレを何とかするしかないだろう。
「さて、私は今から現実の馬鹿どもに私の馬鹿らしい理論を展開しにいくとしますか」
まだ今の状態では誰もこの脅威を信じることは無いだろう。
だが、理解してからでは圧倒的に襲い。
時間は既に足りないレベルなのだ、それに地球の技術ではアレはどうしようもできないだろう。
世の中が混乱しないように、立ち回る必要があるのだ。
逃れられない死を目前に、暴走する者が世の中に溢れかえっては守る意味もないからな。
「マネージャー! ここは任せたぞ!」
「無茶ぶり半端ないですよ……カニ、絶対カニ奢ってくださいよ!」
「はいはい、死ぬほどくわせてやるよ」
こうしてプロゲーマーのたった24時間という持ち時間での本気攻略が一斉に開始された。