113.240リミットの脅威(6)
絶対不可避。
仮に祈願という名の奇跡に頼りあの巨大な隕石を消してほしいと願ったとしよう。
『菜茶、目に見えるアレは米粒のように見えて、全体の一部分すら視認出来てないぞ』
渡りの独り言を勝手に拾いハウルは答える。
それはともかく、そこなのだ。
『見えているアレを除外したところで、それ以外の部分に押しつぶされると思うべき。氷山の一角って、こういう時に使うのかしらね?』
死なないように、とか不老不死の類の祈願は禁止の扱いとされている事も既に判明している。
『不老不死を選択した人類は絶望しか残さなかった。
住む場所が、地に足がつかず、行きたい場所へも行けず。
最終到達地点は宇宙の最果てで孤独に苦しみ、全てから取り残される。
人の心はそのような事象に耐えれる程強くは無く、生きたまま死ぬ事になる。
人類が思いつく限り一番辛い結果を辿るそうだ。
銃之支配、情報群より』
説明ご苦労様、ハウル。
禁止種は他にも時間や時空、記憶や心読などがあるそうだ。
時間は扱いが難しく、スローを使えば何億倍にも引き延ばされた1秒を延々と過ごさなければならず、超加速をすると瞬く間に寿命を迎え、あまつさえ停止などしたら存在の消滅を意味し言葉のまま、世界から取り残されてしまう。
時空は好きな場所に繋いでしまうが故に、片道切符。
想像の世界へつないだ日には岐路を理解出来る訳も無く、知っている場所への移動などしたらプライベートがあったものでもなく。ついでに言えば、他人をどこかへ飛ばしてしまえば簡単に永遠のさよならが出来てしまう。
私達が使うこのローグライフへのデバイスは、この時空の祈願が使われている可能性が高いが、それについては今は思考放棄だ。
記憶は言わずもがな、心読は書いて字の如く全ての心を読めてしまうとか。
人の心の領域に渦巻く想いなど、知ってしまえば簡単に気が狂うだろう。
ほかにも様々な祈願の力についての情報群があったが、240リミットの脅威にぶつけれる祈願なんて見当たらない。
例えば時空でどこかに飛ばそうとも、その転移先から容赦なく破壊に来るだろう。
例えば時空で巨大隕石を停止させ存在の消滅をはかっても、隕石の全貌を理解出来なければその全ては停止出来ないだろう。
思い切って死ぬその時まで記憶をいじり、異常事態に気づかず死んでいくという逃げという案もあるが、人類が無抵抗を受け入れる程甘い種族ではないだろう。
『いけないね、全く何も思いつかないわ』
『菜茶、電話だ。
マネージャーから3時間後、集結するとの事だ』
「ルバー、一度私は戻る。アレを見張っていてくれ」
「了解だ、嬢ちゃん」
私はログアウトすると集結の地、国際会議場東第七ホールへと向かう事にした。