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110.240リミットの脅威(寄道)

 俺は撃たれてしまった。

 情けない事に撃たれた衝撃でぶっ飛んで、地面に転がってやっと撃たれたという事実に気が付いた。

 視界が霞、そのまま意識を手放した。


『このまま寝ちゃダメだ、あいつは王を……それにあそこにゃまだ若いお嬢ちゃん二人が残っているのに、男の俺だけが眠っていちゃダメだ! 動け、動け動け動け! 動け俺の体ァァァ!』


 ピクリ、と指が動かせた。意識も徐々に戻ってきた。

 体の感覚も戻ってきたが、嫌だな、と背中の温もりに嫌悪感。


『やべぇな、背中が生あたたけぇ、こりゃ出血多量ってか?』


 瞳を開けても、暗闇に支配された視野から視力も既に無いほどにギリギリな状態だと判断する。


 それでも。


 指は動くのだ、重い腕を動かし周囲をペタペタと触れて回る。

 いよいよヤバい、硬い地面が柔らかく感じる。


 これまた情けない事に、撃たれた衝撃で銃を手放してしまった訳だが。

 周囲に落ちているだろう銃を必死に探す。


『何もねぇ、何もねぇが……これは?』


 手が触れた曖昧な情報が、何かのスイッチを探り当てる。

 起爆式の爆弾を持ってきた記憶は無いが、もしかすると嬢ちゃん達が仕掛けたのかもしれない。

 では何故俺の手元付近にスイッチがあるのか?


『まさか全滅したって可能性は……あるよなぁ、ああ、いくら嬢ちゃん達が強かろうが相手が悪い。ッカァー、何もしてやれなかった。何の力にもなれなかった。だけどなぁ』


 右手、左手それぞれにスイッチを見つけていた俺は確信する。


『これで自爆してでも倒せって事だろ? ああ、いいぜ。もしかしたら嬢ちゃん達も近くに居るのかもしれないが、俺はコレを起爆す事しか出来ねぇ。巻き込んでゴメンな、アバヨ嬢ちゃん達』


「食らいやがれ!」


 静かに声を出すと、俺はスイッチを同時に押し込んだ。


「「アッ……」」


 何だ? 爆発音も何も……いや、単音でアという音が耳に響いたような気がする。

 だがダメだ、両耳もやけに熱い。


 頭からの出血が酷いのかもしれない、起爆は失敗か? 最後の可能性だったかもしれねぇのに、くそっ、動けよ!


「「アッ、フゥ、、、ヤッ……」」


『……』


 ポチッ。


「「ヤンッ」」


 諦めて閉じていた両目を再び開けるも、何も見えない。

 いや、待てと。


 ジッと仰向けのまま瞳を見開いていると、ぼんやりと何かが見えてくる。


「見慣れた天井だ……」


 頭を左右に向けると、そこには寝息を吐く二人の女性。


 俺の手の先は今どこにある?


「ヴァァアアアアアアアアア!」


 一気に覚醒した俺は飛び上がるように起き上がったいた。

 見慣れた天井のはずだ、ここは俺の家の自室だ。

 そして両隣で覆いかぶるように寝ていたのはお嬢ちゃんたち二人である。


「ダァッ、ハァ、ハァ」


 今も両手に残る感触をグーパーグーパーして確認すると、額に手を当て笑いを堪えた。


「クッ、クックッ、何だよオイ。俺達、生きてんじゃねぇかよ!」


 暗闇の中、深く礼をして俺は小さく叫ぶ。


「ルッティア・バーボン。俺はお前さん達に侍従じじゅうする事にした……ありがとうよ」

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