100.銃之支配を奪い取れ(16)
「それじゃ、私は罠の分析するからルバー、宜しく!」
「ちゃ、ちゃんと助けてくれるんだろうなぁ?」
どんだけ私への信頼が無いのか。
そんな怯えた声で尋ねなくても良いだろう?
顎でクイッと指示すると、口をヘの字にして肩をすくめながらルバーは歩き出した。
そうそう、物分かりの良い事は良い事だ。
「うおあぁ」
部屋に入って三歩目だった。
罠を踏み抜いたルバーの体が一瞬発光すると、エリア内に居たAI君の体も同時に発光した。
「えっ、ええええキャアアア」
二つの悲鳴の距離は徐々に近づいていく。
ペタンと座り込んでいたAI君は強制的に体を私たちに背を向けるように反転させられたようで、背を向けたままこちら側へ見えない力に引きずられてきているようだ。
ルバーはというと、たった三歩進んだだけで突然こちら側に向き変えると、引き返すのかと思いきや悲鳴をあげつつ後ろ歩きを開始していた。
そして二人は距離をゼロにしてようやく止まった。
「ふむ」
「「な、なんじゃこりゃぁぁ!?」」
何故二人して同じ台詞を決めたのかはさておき、厄介な罠を踏み抜いたようだ。
「うぇぇ、背中がヌメヌ温かくて気持ちわりぃ」
「や、やだっ! アフロ触んないでよ!」
「なんだぁ!? アフロカッコいいだろう? 喧嘩売ってるのか!?」
「やだ何この人きも」
「AI君、君をダンジョンまで運んでくれたのは背に居るルバーだから、礼こそすれど悪く言うもんじゃないよ?」
「……いや、だからって女子高生の背中に引っ付いてくるって信じられます!?」
「ッカァー、言いたい放題言いやがって! 背中がこちとら気持ち悪くてしょうがないぜ!」
「なっ、気持ち悪いって何よ! 女子高生の背中のヌルヌルとかご褒美じゃないの!」
「なぁ、それ本気で言ってたら頭のネジがとんだ宇宙船からやって来たってのも納得できるぜ」
何だろうか、あの二人は仲が悪いのか良いのか。
それよりもハウル、罠のタイプはやはりアレか?
『分析、感圧式の罠がメインのようだ』
そうよね。
残念ながら空を飛ぶ事も出来ない私達には、感圧式を回避する術は無い。
と、なるとルバーが引きずられた道を通って、AI君が罠にかかったであろう部屋の入口まで直角に移動してしまえば、ほぼ問題無いだろう。
「二人とも、AI君が通ってきた部屋に進むよ。ほら、立ち上がって歩いた歩いた」
二人は立ち上がると、背丈の差からAI君の体が宙に浮いていた。
「ちょっと、アフロ! 足が付かないじゃない! 私に合わせなさいよ!」
「だぁ、重いのに我慢してんのがわからんかなぁ? ほら、おんぶして運んであげましょうねぇ」
「キィィ、私コイツ嫌い!」
「おまっ、暴れるなよ! 変な汁が飛び散る、気持ち悪い!」
「変態っ!」
「うえぇ、髪の毛が俺のアフロに絡まった! やめろ、やめてくれぇぇ」
「変態変態変態っ!」
部屋の中を抜けると、引っ付いていた二人は無事離れた訳だけど。
「イーッダ」
「お子様は困るねぇ、でも」
と、二人はいがみ合っている。
「でも、ここってもうすぐ五階層手前じゃねぇか。凄いんだな、嬢ちゃんも」
「えっ? え、ええ」
「クリア者を除けば、私達が最初の第五階層侵入となりそうだね」
「クリア者?」
「ああ、こちらの話だ」
「うん? まぁ良いや、攻略不能部屋でこんなにも早く潜れたんだなぁ。でも、これでやっと王様を連れ戻せるな。早く連れ戻して、舵を」
そこまで言ったところで、ダンジョン全体だろうか? 強い揺れを感じた。
「最悪だ……」
いつものテンションとは違い、額に手を当て項垂れるルバー。
「王子が祈願に呑み込まれた」