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001.アップデート

 狭い道。

 大人一人が通るのがやっとといったそんな通路の正面からは、まるで壁が迫ってきているのでは? と見間違うほどの矢が迫りくる。


 刹那。

 構える間もなく体中を矢で貫かれ、それまで立っていた男の姿は光の粒となり雲散霧消うんさんむしょうした。


 男がそれまで必死に集めた魔法の装備は【全て】その場に落ち、一つのアイテムを残して光の玉となり壁を無視して四方へと散っていった。


 ポフッ、とそれまでの空気とは異なり無機質な部屋の中に尻もちをつき帰還すると、頭をかきながら正面に開く扉をジッと見つめていた。


 RL(ローグライフ)という名のVRRLGバーチャルローグライクゲームが一般家庭用に販売されて一週間という時が過ぎ、オンライン上の反応はある意味盛り上がっていた。


『あのゲーム、無理ゲーすぎるわ』

『そもそも、バランス調整間違ってね?』

『心臓に悪すぎる』


 などなど。


 最初の扉を潜ると、最初に居た部屋はスッと消え地下ダンジョンのど真ん中に一人放り出される。

 そこから、下へ下へと潜っていくのがこのゲームの遊び方である。


 ステータスも至ってシンプルで、攻撃力・防御力・魔力・そして体力の四つだけなのだが、ローグライクというだけあって、身に着けるアイテムで全てが左右されるシステムを楽しむものである。


 例えば、拾った松明たいまつがあれば暗い場所の探索が出来たり、炎の剣があれば同様に暗い場所を照らしたり攻撃力が大幅に上がったりする事がある。


 半面、火に耐性を持つモンスターと遭遇してしまうと攻撃力がいくら高くても体力を減らすことができなかったり、先ほど男が体験した矢の雨を全て防ぎきる事が出来ず成す術無くヤラレルしかない等、理不尽極まりない状況が多々発生する。


 そして体力がゼロになると拾ったアイテムは全てその場に落として、一つを残し全て何処かへ飛んで行ってしまう。そんな遺品ドロップは大体他のプレイヤーが偶然拾う事となり、運よく同じダンジョンに巡り合う事があればその場所にメイン武器だったアイテムが地面に突き刺さった状態で残っていたり。


 ダンジョンの数は現在WIKIなどの情報サイトを見ても同じダンジョンに巡り合ったという情報は3件しかあがっておらず、そもそも本当に同じダンジョンに入れる事があるのかといった審議も行われていた。


 ただ、プレイヤーの何名かが地面に突き刺さった武器のSSを収集して、元の持ち主が装備していた装備品のSSを照合した結果、間違いなくダンジョンは固定されているという結論に至っていた。


 自動生成じゃないとわかったプレイヤー達だったが、同時接続プレイ人数が数十万もあるにも関わらず、未だダンジョンの数が全て把握されていない実情から、無限にも思える程のダンジョンが用意されていると考えられていた。

 そんな中、えげつない地形をしているダンジョンを総称して地獄ヘルと呼ぶようになっていた。


 プレイヤーの皆様、初のアップデートが決定致しました。

 今回のアップデートで実装されるのは以下となります。


 1.持ち帰り機能の実装

 下へ降りる階段の隣に、自室へ戻る階段が実装されます。

 こちらの階段を登れば即自室へと帰還出来ます。

 また、手に持っている物全てを自室に飾る事が出来ます。

 ※手に持ち、再びダンジョンへ挑む事が可能ですが、ダンジョン内のペナルティは同様に働きます。


 つまり、一度持ち帰ったアイテムも次に持ち込み可能だが、体力がゼロになると持ち込んだアイテムも全て落としてしまうという事になる。


 2.他プレイヤーとの協力プレイの実装

 二人でダンジョンを攻略する、協力プレイが実装されます。

 フレンド登録した相手と共にダンジョンをプレイする事ができます。

 ※個人プレイヤーIDでフレンド登録が可能となります。


 プレイヤー同士の会話は、音声入力による吹き出し会話にて意思疎通が取れます。

 今後、疎通手段の拡張も予定されています。


 この記事を読んだプレイヤー達は皆、静かに闘志を燃え上がらせていた。

 この一週間、ソロで挑んだプレイヤー達がもうダメだと嘆いていたが、二人攻略ふたりぷれいならば……。

 という、淡い期待を抱いたからである。


 現在の記録は三階層突破が限界という実情である。

 プロゲーマーだけでなく、折角買ったゲームを遊びつくしたいと思うプレイヤー達もこの難易度に四苦八苦していたところだったのだ。


 至る所でパートナー探しが行われる事となった。


 3.超闘技場の実装

 プレイヤー同士でのPvPが出来る超闘技場が実装されます。

 自室の中の大鍋に入ると、超闘技場へとワープする大鍋が実装されます。

 大鍋に入ると、200秒間無敵状態となり超闘技場のランダムポイントへと転移されます。

 大空の元、接続人数無制限の空間で生き残るよう頑張りましょう。

 ※アイテムの持ち込みは不可能です。又、アイテムやモンスターもランダムポップとなります。

  ログアウト、もしくは体力がゼロになるとダンジョン同様アイテムを全てドロップします。


 これがもう一つの売りとなるハズである超闘技場だ。

 皆、俺強い! がしたくてたまらないのである。

 それがダンジョンでは無様に地面に這いつくばるばかりで、俺強いなんて思いが全く出来なかったのである。それがプレイヤー相手となれば別である。

 いくらでも初心者狩りを楽しめ……。


 4.難易度ヘルを実装

 始まりの扉の横にヘルダンジョンのみへと続く滑り台が実装されます。

 ヘルダンジョンは十階層の構成となります。

 十階層を突破して下さい。お願いいたします。


 地獄ヘルのみで構成されているダンジョンの実装とか、運営は一体何を考えているのだろうか。

 プレイヤーが定めている地獄ヘルの数は数百を超えている。

 だが、未確認ダンジョンが多い今、運営自らが名言する地獄ヘルとは一体どんなものなのか? 興味がわかない訳がない。

 そして、挑みたくないという気持ちも強い。

 あくまでVRの世界故に、強烈な恐怖や殺され方をしてしまう事があるのだ。

 体力管理で実際に痛みなどが無いとはいえ、心へのダメージが半端ないのだ。


 だが、突破して下さいとお願いする煽りに、プレイヤー達は今から本気出す! といわんばかりに盛り上がっていた。

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