デカ珍が大勢の前で晒された件
小説書くのって楽しいですね。
白い光に包まれた和也が気がついた時、目の前に広がっていたのは石造りの建物と、何百人はいようかという女性たちの姿だった。
真っ白な太い何本もの柱で支えられているこの神殿のような建物は、体育館を二つくっつけたものをさらに縦に三つ並べたくらいの広さがあり、天井は暗くてよく見えないが、かなり高いことだけはわかった。陽の光はまったく入っておらず、入り口から等間隔で並べられた蝋燭の蒼白い炎だけが視界を奪わずにいてくれている。
和也が呆然と立っているのは、大勢の女性のほとんどがひざまずいている場所から階段で十段ほど高い位置にある。ふと後ろを振り返ると、木目の美しい主祭壇があり、羽をはやした女性の石像や木像、銅像が多数祀られている。
石独特のひんやりとした空気もあいまって、そこはとても荘厳で、なおかつ神秘的な空気を漂わせていた。
そんな、いつもの普段着でも場違いだろうこの場所で、罰当たりな姿で立ち尽くしている男がいる。
――和也だ。
彼はあろうことか神様が祀られているのだろうこの場所に、素っ裸で下半身丸出し、しかもそれが天高くそそり立っている状態で呼び出されたのだ。
でもこれは仕方のないことだ。
だって彼はレッツ自家発電の真っ最中だったのだ。
マッパ発電派の彼は、今日も当然何も身に着けずにいそしんでいた。
しかも部屋の中の幽霊を探すのに、いちいちパンツを履くわけもない。
さらに付け加えるならば、彼はついさっきまで妄想していたのだ。これからどんなブスと出会い、どんな初体験をするのか。
童貞特有のめくるめく妄想暴走機関車と化していたのだ。
その瞬間、血液をこれでもかと集中させた彼の珍子は、過去最長サイズを更新したに違いない。
「……あ、あの……救世主さ――きゃっ!?」
何百の集団の中で、三人だけ階段の上にいる。その三人のうち真ん中の女の子が緊張気味にそれまで下げていた顔を上げ、そして和也の巨珍とご対面。刹那、ものすごい勢いで真っ赤にした顔をそむける。
年は十五、六といったところだろうか?
顔を伏せているときからわかっていたが、彼女はそれまで見たこともないほどの美しさを誇っていた。
少し赤みを帯びて腰まで伸びている長髪は、触らなくてもそのサラサラ感は伝わってくる。そして真っ白なきめ細かい肌に映える、ぷっくりとしたピンク色のくちびる。なにより一番和也の目に焼き付いたのは、彼のエクスカリバーに驚き見開かれた、大きなルビーを彷彿とさせる真っ赤な瞳だった。
まだひざまずいた姿勢のため全身を確認できたわけではないが、そのシルクのような薄布で簡素に包まれた体も、どこかの芸術作品のように奇麗なのだろうと確信できた。
和也はブス専だが、決して美的感覚が世間一般の人々とずれているわけではない。
美しいものは美しいと感じる。そのうえでブスのほうに欲情してしまうのだ。
(……終わった。)
大きすぎるせいで、隠すことなどとうてい叶わなかった大事な息子。
その息子越しに絶世の美少女をぼんやりと眺めながら、和也はこれからどうなってしまうのかを考えていた。
この建物が宗教的に最高峰に神聖な場所であることは、一目見れば誰にでもわかる。
そしてそんな場所で祭事的なことがおこなわれ、救世主としてなぜか自分が呼び出されてしまった。
夢か現実かも、ましてここが日本の存在する世界のどこかなのか、日本なんて存在しないまったく知らない世界なのかもわからないが、とにかく召喚されてしまった。
その救世主として呼ばれた俺は、全裸で全勃起というもっともこういう場所に似つかわしくないふざけた格好をしている。
和也のイメージでは、何度計算しても宗教+神を侮辱=一つの答えしかたどり着かない。
「……死」
その一言を呟いたと同時に、足で全身を支えられなくなりへたり込んでしまう。
かってに相手が呼び出したのだ。ちゃんと事情を説明して謝れば、さすがに殺されることはない気もしないでもない。
でも、どんなに軽く見積もっても長期の拘束と尋問。もしくは、牢獄生活などは免れない気しかしない。
(逃げるか……?)
いや、無理だ。後ろには主祭壇しかないようだし、普通に考えてこういう場所に裏口があるとは思えない。隠し通路みたいなのはあるかもしれないが、ぱっと見でわかるようにしているわけがない。
正面突破はほぼ不可能だ。和也は多少ジムで鍛えてはいるが、この人数にいっせいに飛びかかられてはひとたまりもない。たとえ、和也の見立て通り、ここにいる自分以外の全員が女性だとしてもだ。
万が一……いや兆が一奇跡的にこの場を切り抜けられたとしても、ここが日本なんて国のない世界だとしたら完全に詰む。
もしも和也の想像通り、これがアニメでよく見た異世界召喚なんだとしたら、逃げ込む大使館なんてものは存在しないのだ。
(……やっぱりここは、素直に謝るのが一番生存確率高そうだ)
命の危機だというのに、いまだに萎える様子のないどころかさらにいきり立つ我が股間。
節操なしでどうしようもないなと呆れつつ、あることを思い出す。
(そういえば、動物って身の危険感じ状況に追い込まれると、性衝動がはげしくなるんだっけ)
あれは本当の話だったのかと思いつつ、土下座スタイルに体勢を整えようとしたとき、
「――だったのですね」
「……はい?」
先ほどは目をそらしていた赤髪の美少女が、今度は意を決したように怒張を続けるマイサンをじっと見つめながら何かを呟いた。
「やはり、救世主様は勇者様だったのですね!!」
「いや、だから何を言って――」
「勇者様、バンザイ!!」
意味不明なことを口走ったそのルビーのような瞳の女性に聞き返そうとした瞬間、彼女はいきなり立ち上がるとそう叫んだ。
「いや、だから――」
「「「勇者様、バンザイ!!」」」
今度は赤髪の美少女の左右でひざまずいていた、これも絶世の美少女と呼んで誇張ない二人が立ち上がり続く。
「……あの――」
「「「「「勇者様、バンザイ!!」」」」」
それに続いたのは、階段下で控えていた何百人の美女、美少女軍団。
和也は、この光景をそそり立つ下半身を丸出しのまま、正座の格好で眺めていた。
その大合唱は三十分近く続き、終わったころ和也は足がしびれて立ち上がれなくなっていたが、その股間が治まることはなかった。
こうして剛力和也は命を奪われることも牢獄にぶち込まれることもなく、なぜか珍子を見られたことで、呼称が救世主様から勇者様にジョブチェンジしたのだった。
でもさすがに眠いので寝ます。