【国民的アニメの小さな謎について】紀輔さんの場合
この小説はフィクションです。
主人公は小太りの凡庸なオジサン
に見えて26歳の東大卒。。
そんな彼を含めて登場人物は
実在のナニガシとは…
一切関係ございません!!
多分…(´・ω・`)
東京の下町。。
ここに井園家という平凡な家庭があったという。
家長の浪兵衛はサラリーマンで厳格な父。
妻の舩はやさしい良妻賢母。
そんな二人の間に設けられた長男。
名を紀一郎といったらしい。。
紀一郎はすくすくと育ち、
カゴメ第三小学校では一番の成績を残した。
浪兵衛は彼を跡取りとして期待し、
愛情を以て育てたという。
そして二歳年下の妹の佐々江。
兄の紀一郎と一緒に草野球を楽しむなど、
元気で明るくおっちょこちょいに育つ。
こうして一家は平穏な日々を過ごしていた。
…が…Σ('◉⌓◉’)
紀一郎が中学に上がってしばらくのある日…
あってはならない事件が起きた。
きっかけは些細なことだ。。
隣に住む稲坂家がお出かけすることになり、
三歳になる女の子を預かっただけ。。
その面倒を見る予定だった佐々江が勝手に
どこかに遊びに行っちゃっただけ。
それで一人で女の子の面倒を見ることに
なった紀一郎が…
あってはならない間違いを犯した…だけ。。
なぜそんなことになったのかは
紀一郎自身にもわからないと言う。。
…思春期ならでは惑い??
…極度のまでの中二病??
もはや…魔が刺した以外の言葉がない。
もちろん赦されることではない。
だがこんなこと…
正直に隣家に報告するには重すぎる。
ことが大きくなればお互いに得はない。
幼子の将来に影を落としかねない。。
…それだけは避けねばならない…
幸いにして女の子はまだ三歳…
宇希恵は何が起きたのか理解していない。
このまま黙っていれば…
いや…その方がいいのだろう。。
…では何もしなくていいのか??
…道を外れた紀一郎への咎は不要か??
そんなことはない。(:_;)
ことを大きくしないのなら…
公に裁きを委ねないならばなおさら…
厳しい処分を課すのは当然の責務。
浪兵衛は三日三晩考えて紀一郎を…
中学一年生の跡取り息子を…
…勘当した。。
今後一切、井園家の敷居を跨がせないと
宣言してしまった。(;O;)
…妹の佐々江にはだだ、
<お兄ちゃんは他所の家の子になった>
とだけ説明して…
お別れもなしに追放した。。
…こうして紀一郎は…
子供のいなかった浪兵衛の妹夫婦の
養子となって九州に渡った。
…深く反省していたのだろう。。
叔母夫婦の家についても神妙で気丈に
振る舞っていた紀一郎であったが…
苗字が<名蓑>に代わったことには
ショックを受けたらしい。。
<井園>の名前を失ったことで、
井園の跡取りでなくなった現実を
思い知らされた紀一郎は…
…改名を決意。
長男であることを否定するかのように
<一郎>の二文字を捨て…
【紀輔】に改めた。
…そう。これが…
【名蓑紀輔】誕生の経緯であった。。
そんなまだ幼さの残る養子を…
井園家と決別した紀輔を不憫に思った
養父母はとにかく彼を可愛がった。
進学校の私立中学に転入させ、
まだ戦後の貧しい時代に充分すぎる
食事やオヤツを与えた。
おかげで痩せ形だった紀輔の風貌は
すっかり小太りに変わるのだが…
彼自身はそんな養父母に感謝しており、
その期待に応えようと頑張った。
こうして紀一郎あらため紀輔は養親の
自慢の息子へと成長していくが…
…焦ったのは浪兵衛と舩だ。
だって勘当はあくまで表向き。。
ほとぼりが冷めて紀一郎が反省すれば
いずれ呼び戻す予定だったから。
なぜなら…跡取りだから。
こう見えて井園家は結構な名家。
血筋を絶やすなどありえない。
跡取りを設けない愚を知らないなど
あるわけないのだけど…
養母からその本音を聞いた紀輔は…
…紀一郎は激怒した。(/・ω・)/
どこぞの有名小説のパロはともかく、
わすか13歳にして両親に捨てられたと
思った彼は口には出さないけど…
…傷ついていたんだ。。
だから紀輔は実父母…
浪兵衛と舩に宣言したらしい。
<自分はもう名蓑紀輔である。
だから井園を継げる身分ではない。
ボクは…名蓑の跡取りだ。>…と。。
この発言で義両親は安堵した。
これで名蓑家は安泰。
紀一郎…改め紀輔が跡を継いで、
家を繁栄させてくれる。。
それはいいのだけど…
実両親は思わぬ形で跡取りを。。
そして…
もう取り返しはつかない。。
二人は顔を見合わせることになる。
この時…
浪兵衛42歳。舩は40歳。
…まだ間に合う。(・_・;)
意を決した二人はこれまでとんと
ご無沙汰であった営みを再開…
こうして舩は41歳の高齢にして、
第三子…男児を出産する。
…無謀とも言える挑戦への勝利。。
…高揚した二人は息子に…
勝男と名付けた。。
…しかも驚愕は続く。。
この高齢夫婦は、
夫45歳…妻43歳にして、
さらにもう一人を出産。。
超高齢にして第四子を得た。
その女の子が…若芽。。
さすがに次は続かなかったモノの、
そんな執念は紀一郎…
改め紀輔の耳にも伝わる。。
両親の苦悩。
歪んでしまった人生。
負担の大きい高齢出産と育児。
思えばその発端は…自らの不徳。。
痛悔する…まだ高校生の紀輔には、
<もう一度あの家に戻りたい>との
思いが去来することになる。。
だがその思い…
義両親に伝えることはできない。
罪深い自分を慈しんでくれた
養父母にはとても言いだせない。
地元・九州の大学に入り、
地元で就職して骨をうずめると
公言していた彼が、
その前言を翻すためには…
…志望大学を変えるしかない。
それも地元で代替できる
平凡な大学ではダメ。。
東京にしかない学校に行くと
宣言する以外に方法はない。
しかし音楽や体育などの特殊な
大学を希望しない彼にとって…
金のかかる私立大を志望できない
養子の立場の紀輔にとって、
言いだせる大学名は一つしかない。
そう…東京大学だ。
だから…紀輔は猛勉強をした。
正当な理由を以て東京に帰るため。
そんな養子の心根を知ってか知らずか、
義両親は彼を応援した。
やがて別れが来ることは解っている。
けど紀輔はもう我が子同然。
そして…名蓑の跡取りだから。。
紀輔もまたその期待に応えんと奮起。
人一倍の努力を重ね成績を上げ…
…東大への現役合格を果たす。(^O^)/
こうして晴れて東京に錦を飾り、
五年ぶりに両親と妹に再会。
細身の少年だった姿はすでになく
小太りの青年のいでたちではあったが、
まるで昨日のことのように親子は
蟠りなく打ち解けたが…
井園家に戻ることはしなかった。
いや…紀輔自身が断った。
その理由は間違いを犯した隣家への
贖罪もあったけどその第一は…
…今の井園家には幼子がいるから。
二歳の勝男と一歳にも満たない若芽。
まだ見ぬ弟妹と同居しては
悪影響を与えかねないと考えたから。
だって紀輔はまだ…
自分を赦してはいなかったから。。
妹の佐々江は泣いて同居を願ったが…
紀輔の意思は変わらなかった。。
こうして紀輔は学生寮に入った。
寮といっても安アパート。
質素に暮らすつもりではあるが…
それでも一人暮らしとなると、
義両親の仕送りだけでは足りない。
もちろん彼自身もアルバイトするなど
自助努力はしていたが…
たまに浪兵衛や舩と会っては
小遣いを貰うという甘い習慣がついて
しまったらしい。。(^-^;)
もちろん紀輔が自立した苦学生で
あることに変わりはないが。。
やがて大学の卒業を控えた紀輔は
東京の出版社への就職を決める。
東大出身の彼のこと。
もちろん幹部候補生である。
井園家からは改めて同居を誘われたが、
紀輔はもう戻る意思はなかった。
もうこの家に自分の居場所はない。
だから一人暮らしを選択した。
だが…そんな紀輔に、
状況を少し変える一件が起きる。。
それは…妹の佐々江の結婚。
まだ19歳の若さであった。
そして妹は近所にアパートを借りて
独立することになったんだ。
では佐々江がなぜこれほど早く
結婚を決めて家を出たか??
それは小学生の時に突然兄を失い、
両親は歳の離れた弟妹の育成に重きを
置くようになったことで、
佐々江も居場所を失くしてたから。
だから佐々江自身…
早く独立したかったのだと言う。。
そして思いがけずこのことで、
佐々江の部屋が空いてしまった。
この都心で空き部屋など勿体ない。
というわけで浪兵衛と舩は、
その部屋に下宿人を迎えようとした。
なにせ浪兵衛はすでに五十路。
小さい子供を二人も抱えての老後には
少しでも小銭を稼ぎたかったから。
とはいえ下宿人なんてそう簡単に
見つかるモノではない。
今年はムリかと諦めかけてたけど…
この時…紀輔は大学卒業目前。
就職先は井園家から電車で一本。
どうせ会社近くにアパートを借りて
一人暮らしをするならいっそ…
だって…既に九年。
紀輔自身にももう禊は済んだという
気持ちがないわけではない。。
ならばもう…
ただ問題がある。。
それはもちろんお隣…
稲坂家にどう説明するかだ。。
…なにせ九年ぶり。
あの時3歳だった女の子も
すでに中学生。
当時のことは覚えていない。
紀輔は名前も代えているし、
痩せ形だった風貌も小太りに。。
もちろん面影はあるけれど…
紀一郎の従兄弟という設定なら
似ていたって不思議はない。
つまり…(・.・;)
黙っていればバレない。。
俺はただの下宿人。
井園家の居候ということにすれば
それ以上の追及はないはず。。
では…それでいいのか??
いつでも会える環境に住みながら
何もなかったことにするのか??
謝罪しなくていいのか??
思い悩んだ紀輔は…
黙っていることにした。
けどいざ引っ越しの準備のために
家に戻ってみると…
九年ぶりに稲坂先生に会って
その顔を見てしまうと…
抑えきれなくて…
「も…申し訳ありませんでした!!」
紀輔…いや、紀一郎は
全てを告白してしまった。。
…やはり赦されるはずはない。
…けど…そうなれば家に戻れない。
九年の月日を経てようやく帰って
きた我が家からまた追われる。
その可能性は知っているのに。。
だけど…
「…よく正直に言ってくれた…
キミもずっと辛かったんだろうね。」
「あの…驚かないんですか??」
「…浪兵衛さんから詳細は聞いてるよ。
急にキミがいなくなった理由を
聞いたら答えてくれた。。
九年も…苦労したんだろう。。」
「…ならば赦してくれるんですか…」
「…さすがに…そうはいかん…」
「…な…なぜですか??(´゜д゜`)」
「ワシだってキミを赦したい…
だがワシは宇希恵の父親だぞ。
娘を傷つけた男を…
そんな過去を娘に知らしめる
恐れのあるキミを…
やはり傍に置いてはおけない。。」
「……(´;c;`)。。」
紀輔は…黙って頭を下げた。。
こうなった以上もう二度と、
自分は井園家の敷居は跨げない。
稲坂先生に会うこともないだろう。。
もう自分にできることは
黙って去ることだけ…だけど…
「…どこに行くつもりかね??」
「…去ります。。
やっぱりボクはここにいては
いけない人間ですから…」
「…なぜキミが??」
「…えっ??」
「…私が言っているのは紀一郎くん。
ではキミは誰かね??
名蓑紀輔くんではないのかね??」
「……そ…それは…」
「…キミが紀輔くんである限り…
その過去を宇希恵に話さないと
約束できる限り…
ワシに赦さない理由はない。。」
「……はい。。(´;c;`)」
「…よく帰ってきた。
これが…また新たな出会いだよ。」
「……。。(´;v;`)」
…こうして…
紀一郎は井園家に帰ってきた。
浪兵衛も舩も大喜びではあったが、
息子に笑顔はなかった。
…だって自分は息子ではない。
…あくまで居候。
名蓑紀輔であると…
それから彼は…態度を徹底した。。
両親には敬語を使い、
伯父さん、伯母さんと呼んだ。
妹の佐々江夫婦にも敬語を使い、
'さん'付けで呼んだ。
また妹にも兄とは呼ばせなかった。
それ全て…正体を隠すため。。
宇希恵を含む自分の正体を知らない
世代に内情を隠すため。
ただ心を痛めるのが…
弟の勝男と妹の若芽に対して。。
紀輔にとってこれが初対面となる
弟妹はすでに6歳と4歳。
対して紀輔は22歳の独身。
彼らから見れば姉夫婦と同世代。
当然ながら<兄さん>とか
≪お兄ちゃん≫とか呼ばれる。
でも兄とは名乗れない。。
兄と呼ばれてはいけない。。
だから彼は自らを…
【オジさん】と称した。
胸は痛むが仕方がない。
頑なに…兄とは呼ばせなかった。
なお余談ではあるがこの姿勢は
徹底しており…
彼が結婚した際にはまだ20歳だった
新婦の多伊子し対しても
【オバさん】と呼ばせたらしい。
それぐらいの覚悟を持ってのこと
だったんだ。。
だが…それでも彼は幸せだった。
結婚して居候先を出るまでの
僅か二年ほどではあったが、
両親や弟妹と過ごした時間は
掛け替えのないモノだったらしい。
その後に佐々江夫婦が同居して
井園家の形態も変わった。
だが相変わらず井園家は彼にとって
オアシスであったようだ。
そのためか…(;'∀')
「…なぜキミが私の担当に??」
「はは…まぁいいじゃないですか。
稲坂先生の小説を取り上げてるのは
ウチの出版社だけなんですし…」
「…だがキミは東大卒。。
出版社では幹部候補と聞いてるぞ。」
「……投げ打ってきました。。
やはり先生を日本一の作家にするのが
私の償いでもありますから…」
「…そんなこと言って…(^n^
実家を訪れる口実が欲しいだけでは??」
「…ちょ先生…何を言ってるんです!?
娘さんが聞いてますよ。。( ゜Д゜)」
「そ…そうだった。。
だがそれは本音かね、名蓑くん…」
「…本音です。。どっちもね…(*^v^*)」
こうして東大卒のエリート、
名蓑紀輔は、、
幹部候補生の立場を捨てて
売れない作家の編集者となった。
だが…彼に後悔はない。
寄り道はしたけれど再び彼は
居場所を得ることができたから。
家族を…取り戻せたから。
そして今日も彼は…
家族たちとつかず離れずの関係を
保っているらしい。。
「ああっ!!また紀輔オジサンが
冷蔵庫のプリンを食べた!!」
「はは…(´・v・`)
まぁいいじゃないか。。
ボクだって…家族なんだから…」
いかがでしたでしょうか?
普段は全く毛色の違う連載作品を書いてますが
たまにはこういうのも試したいと思います。
感想…および書いてほしい'なぞ'について
あれば何でもお待ちしています。
第二段は…あるのかな??(;'∀')