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神様は気まぐれなのか。  作者: いちごだいふく
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第4話 最善

ふと目が覚めると目の前には知らない天井が広がっていた。ついさっきも目を覚ますと知らない場所にいたので、こんな異世界チックな展開を二度も経験したことになる。とはいえ、さっきは天井ではなかったが。

というか、当たり前だが異世界にツテあるわけではないので、僕たちを住ませてくれる人などいるわけがない。それなのに、僕らは民家?の木で出来た簡素なベッドに寝かされていた。もしかして誘拐されたのかもしれない....。はわわ....。

それにしても不思議な話だ。ここは異世界のはずなのに、この部屋の雰囲気はどことなくよく知るヨーロッパの建物のイメージに似ている。実際に見たことはないが、俺のイメージにかなり近い。

大理石の床に、天井には立派なシャンデリアが吊り下げられている。壁にも派手な装飾を施しているようで、この簡素なベッドだけがこの部屋から隔離されているような錯覚を感じるくらいにミスマッチであった。異世界の建物はオシャレなヨーロッパ的というのもそういえばお約束であるが、家具に関してはどうもセンスがないのか、それともこれが普通なのだろうか。

そして極めつけは、部屋の広さ。自慢ではないが僕はマンションに住んでるので部屋はお世辞にも広いとはいえない。そんな部屋で育ってきた僕からすればこの部屋はおかしなぐらいに広いのだ。

来客用の可能性もあるが、それでも僕のリビングの広さなど比ではなかった。来客用の部屋に負けるウチの家族のリビングよ....。

これだけの違和感を感じる状況では落ち着くこともできず、未だに目が覚めないレンカを置いてこの部屋を出ることにした。

ドアを静かに開け部屋を出ると別世界に飛ばされたかのような錯覚を覚えた。

というのも、静まり返っていた空間が急に喧騒に包み込まれたのだ。だが、音が発生している場所はどこにも見当たらない。

そう、ここはただの廊下だった。一つ一つの部屋が広いので、当然だが廊下もかなり長かった。床や壁はさっき居た部屋と似たような印象であった。

右手には壁があり、左手にはあと5つほどの来客用と思われる部屋への扉があった。さらにその奥には、別の建物へと移る渡り廊下らしきものがあった。おそらく、その先にこの喧騒の正体がいる。好奇心と不安を胸に渡り廊下を歩いていくと、こちらに来る人影が見えた。

その人物は、鎧だった。全身が鎧に包まれているのだ。身長はかなり高い。推測だが、190cm近くありそうなのだ。

そして、次の瞬間僕は度胆を抜かれた。鎧が僕に勢いよく手を振りおろしてきたのだ。異世界で覚醒していた時間およそ15分で僕は死んでしまうのか。モブキャラルート一直線じゃないか。


そう覚悟したそのとき、鎧は俺の肩に軽くてを置いた。

「へ?」

その拍子に、間抜けな声が出てしまった。

すると鎧はケタケタと音を上げ笑い出した。

「アーッハッハッハッハ、まさか殺されると思ったのか?悪いな、こんな怪しい見た目でよ」

鎧は自身の不気味すぎる見た目をわかった上で、話しかけてきたのか。タチの悪い奴だ。だが、鎧からは見た目に合わず気さくなオッサンという印象を受けた。

「あ、あの....。あなたは?」

この人物が、鎧ということ以外何も情報が明かされていないのは此方としては不安になる。それに、どういう目的で僕たちをここに泊めているのかも知りたい。

「俺はこのギルドでマスター、つまりは長をやっているんだ。気軽にセインって呼んでくれや。」

セインと名乗るこの人物はギルドのマスターと言った。俺の知る限りでは、ギルドとは様々な人からの依頼を解決する組織のようなものだ。大げさに言えばヒーローってことになる。そうなると、俺たちをここに泊めてくれたのも慈善活動の言ってくれれば納得できる。

「あなた聞きたいことが山ほどあります。どこかで話をしたいんですが....」

すると、セインはうんうんと頷いた。どうやら、彼の予想通りに物事は進んでいるようだった。そんなことより鎧同士がぶつかる音が非常に不快だった。だが、仮にも寝室を提供してくれた恩人に鎧を脱げなどとはいえず黙っておくことにした。

「そうだろうな、俺も君の立場なら百ほどの質問をすると思うぜ。そんなにたくさんの質問は思いつかないがな、アーッハッハッハッハ」

この人はよく笑うらしく、自分で言ったことに対して笑っていた。僕が黙ってみていると、セインは我に帰ったように静かになった。

「こういう冗談は嫌いだったかな?俺は好きなんだけどなー。それより話がしたいんだっけか?」

「えぇ」

「それなら俺が貸したあの部屋で話そうじゃねぇか。彼女抜きで話をしたいわけでもないだろう?」

無論レンカにも話には加わってもらう、いや、レンカに話を進めてもらおうと考えている俺には予想外の返答だった。

「そ、そりゃそうでしょう。じゃ、行きましょうか」

そうして俺たちは、俺たちの知りたいことを知っているであろう人間、いや、鎧のセインという人物との対談に持ち込んだ。

そういえば喧騒の正体は掴めなかったが、今はそんなことはどうでもよくなっていた。

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