〜新監督ついに動く!〜
得体の知れない大男が新監督に就任し、新スタートをきった我が野球部。
就任初日は軽い挨拶程度で私たちの前から去っていった大男は、
翌日から部員の誰よりも早くグランドに現れるようになりました。
我が野球部の練習は、部員たちが考えてメニューを組むというのが
前監督時代の形でございまして、
1 ランニング、ストレッチなどウォーミングアップ
2 ダッシュ、中距離走
3 キャッチボール
4 トスバッティング
5 フリーバッティング、バント練習
※平行して、交代でウェイトトレーニング・ティーバッティング
6 ノックなど守備練習
7 ウェイトトレーニング
8 ダッシュ、中距離走
9 ランニング、ストレッチなどクールダウン
ポジションや日によって流動的ではあるものの、
基本的にはこんな感じの内容でございました。
何せ、公立の進学校のナイター設備も整っていないグランドで、
時間も放課後の午後4時頃から午後8時頃までという限られた環境の下での練習です。
自分らなりに効率を考えてメニューを組んでおりました。
これだけでは中々伝わりにくいかもしれませんが、
それなりにキツイ練習内容をこなしていたと思いますですよ。
弱小野球部ゆえ、
甲子園なんぞ夢のまた夢だということは全部員の共通認識でございましたが。
不思議なもので、
だからといって決して楽な練習で済まそうということにはならんのですな。
弱小とはいえ試合に負ければそれなりに悔しいし、たとえ甲子園には行けずとも、
出来る限りを尽くして試合に勝ちたいという思いで自分らなりの目標を立て、
それに打ち勝つべく厳しい練習に耐える日々を送るのでございます。
で、新監督の大男は初めのうちは、そんな私たちの練習に特に口出しすることもなく、
グランドの隅にあったバーベルやダンベルなどのトレーニング器具で
自らの筋力アップに勤しんでおりました。
そして、めでたく新入生の中から10名の新入部員を迎え、
大男も新監督就任から1週間程経ったある日のことです。
いつも通りに練習をこなし、私たちはフリーバッティングを開始しておりました。
フリーバッティングの流れは、3年生のレギュラー組から始まり、
2年生のレギュラー組、3年生の控え組、そして2年生の控え組という順番で、
1人15本から20本ずつ打って交代。
その間に、交代でティーバッティングやウェイトトレーニングを
平行して行うといった感じでございました。
その日も3年生のレギュラー組からフリーバッティングを開始し、
ちょうど2年生のレギュラー組、つまり私と古木に順番がまわってきた時でした。
それまでバーベルが設置されたベンチに腰掛けてバッティング練習を見ていた大男が
「おーい、全員集合ぉ!」
と、号令一発。
予想していなかったタイミングでの号令に皆一瞬反応できず、
ちょっと間をおいて、キャプテン・沼田さんの
「集合!!」
という号令で、全部員が大男の前にダッシュで集まり整列。
ここから、大男の破天荒な指導ぶりが始まったのでございます。
(つづく)