〜 追い風に乗って・・・ 〜
私、職員室というのがどうも苦手でございまして。
多数の教師がたむろしている部屋へ入ると、別に何か悪い事をしたわけでもないのに
何ともいえない窮屈な空気に押し潰されそうになり、
何故か後ろめたいような不思議な感覚に包まれるのでございます。
ですので澤地先生の呼び出しも出来れば回避したいところでございましたが、
そういう訳にもいかず、私は6時限目の授業が終わると渋々職員室へ馳せ参じることに。
職員室へ入ると、澤地先生は私に部屋の隅の応接用のソファへ座るように促し
先生自身も私と向かい合って腰をかけました。
「どうだ、最近調子は?」
澤地先生は、私の様子を探るように話し始めました。
職員室アレルギーの私としては話が長引くのはごめんでございます。
「先生、話は早めに済ませましょうよ。何か変な噂が広まってるんでしょ?」
「・・・ん? ああ、まぁな。」
他の先生たちも、気にしていないフリをしながら聞き耳を立てているのは
明らかでございました。
「あのね、俺が監督のことを殴って
野球部を辞めるなんてバカなことすることないでしょう。」
「うん、それは分かってるんだが。
どうも、お前が権藤先生とうまくいってないっていう話を聞いたもんでな。
実際のところどうなんだ?」
「・・・うまくいっていないというか・・・どうなんでしょうねぇ。」
私は返答に困りました。
「畑中、何でお前は大会のベンチ入りメンバーにも入ってなかったんだ?」
「何でって言われても、俺には分からないですよ。
俺には実力がないって監督が判断したからじゃないんですか。」
「お前なぁ、俺は元監督だぞ。
新チームになった時に、お前には主力としてやっていってもらわなきゃ困ると思って
コンバートしてまでお前をレギュラーにしたのは俺じゃないか。」
「・・・。」
「確かに俺は野球の専門家ではないけど、お前の実力は分かっているつもりだし、
今のチームでお前が補欠になるっていうのは、信じがたいんだがなぁ。
何かあったんじゃないのか?」
気がつくと、他の先生たちもいつのまにか
聞き耳をたてるどころか、澤地先生と私の会話に注目されておられました。
この時、私は何となく自分に追い風が吹き始めているような気がいたしました。
そして、その風に乗ることにしたのでございます。
(つづく)