〜 追い風の予兆 〜
ジャイの理不尽な扱いに耐えかね、とうとう山上と松崎が退部。
そんな事実を受けても、ジャイはその原因が自分にあることなど思いもよらぬといった様子。
それどころか、どちらかというと横暴振りはパワーアップした感がございまして。
どうパワーアップしたかと申しますと、
「今までは、お前らが決めたレギュラーいうのを尊重してオーダーを組んどったが、
それでは中々勝てんから、新戦力を見つけなしゃあないのぉ。」
という、自分のノープランな采配ぶりを気持ちいいくらい棚に上げた発言と共に、
“新戦力の発掘”というキャッチフレーズの下、
練習内容において3年生と2年生の部員を虐げ、
1年生部員を優遇するという行動に出たのでございます。
その理由は単純明快。
結果的に二人の部員を退部に追い込んだ、大会での無茶苦茶な采配を受けて、
3年生と2年生の部員の大半が
ジャイの指導に素直に従えないという態度を示し始めたからに他ありません。
自分に従えない者は切り捨てるという方針を一貫するジャイの姿勢は
ここまでくるとお見事でございます。
我が野球部にはますます暗雲が立ち込め、
どこまで行けば光明を見出せるのか検討もつかないという日々。
そんな中、私の周りではある環境の変化が起こっておりました。
どういうことかと言いますと
昼間、授業の合間の休み時間などに私は色々な先生方から
話しかけられることが多くなってきておりまして。
その内容というのが、
「 畑中、なんか大変らしいけど大丈夫か?」
とか、
「悪いことばかりは続かないから、前向きにな。」
とか、
「お前、野球好きなんだろう? その気持ちがあれば何とかなるから。」
などなど、どうやら野球部の現状を知っているような様子で
私の行く末を心配していただいている様な言葉ばかり。
この時点では、何故急に先生方がそんな言葉を私にかけて下さるようになったのか
その理由は定かではございませんでしたが、
それが明らかになるのにそう時間はかかりませんでした。
いずれにせよ、これは私にとって追い風が吹く予兆だったのでございます。
(つづく)