〜 試合結果は・・・ 〜
強烈な“話しかけるな!オーラ”を発し続けたおかげで、
梅木以外の生徒を全く寄せ付けないまま過ごし、すべての授業が終わった放課後。
私が下校しようと教室を出ると廊下の窓の外には、
野球部員の乗った20人乗りのバスが試合を終えてグランドへ帰って来たのが見えました。
特に試合結果が気になるわけでもないし、ジャイと顔を会わせたくもないし、
ということで別にそのまま家へ帰ってもよかったのですが、
私は何となくグランドの方へ行くことにしたのでございます。
グランドへ行くと、部員たちがバスから降りて道具を片付けている最中でございました。
誰も喋ることなく黙々と片付け作業を行っている部員たち。
その暗い表情からは、その日の試合結果が安易に推測できたわけで・・・。
しかし、私はとりあえず古木に確認をいたしました。
「負けたのか?」
私の問いかけに、言葉を発することなく小さくうなずく古木。
そこへ、恐らくトイレにでも行っていたのであろうと思われるジャイが戻って参りまして、
部員たちに向かって一言。
「お前ら何をモタモタやっとるんじゃぁ。
試合に負けたんじゃから、とっとと片付けて全員でグランド10周してこんかぁ!」
また、懲罰ですか・・・。
と思っていると、ジャイがふいにこちらを見て私にも一言。
「お前もおるんなら皆と一緒にグランド10周してこい。」
・・・。
もう、いちいち腹を立てるのも馬鹿らしく思える程になっていたジャイの理不尽な指令に従い
ユニホームに着替えた私は、他の部員たちとグランドを走りながら、
試合の様子を古木から聞いておりました。
「ボロ負けだったのか?」
「・・・いや、2対1。」
対戦校と我が野球部の実力は五分五分。
と言うことは、勝つか負けるかも五分五分。
それは、試合前から全部員が認識しておりました。
その上で、2対1というスコアでの惜敗。
試合に敗れて誰もが悔しいのは分かりますが、
スコアの割にはあまりにも暗すぎる部員たちの表情。
そこからは、悔しさだけではない何やら異様な雰囲気が感じ取られました。
「惜しかったんじゃん。それにしては皆落ち込み過ぎじゃないか?」
「・・・皆怒ってんだよ、多分。」
「・・・何かあったのか?」
「・・・ジャイの奴、またやりやがったんだ・・・。」
そう話す古木も、悔しさと怒りが入り交じった表情でございました。
(つづく)