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〜 話しかけるなっ!! 〜


さて、いよいよ大会の試合当日でございます。


その日に球場へ行くことすらかなわなかった私は、


教室のいつもの席に座っていたわけで。





私はその朝


球場へ行かないことを親父に気づかれないようにするために、


学生カバンは部屋に置いたまま、


ユニホームや野球道具を詰め込んだバッグだけを持って登校いたしました。


まぁ、教科書やノートはほとんど教室の机の中に入れていたので全く支障はないのですが、


何とも気が重い登校でございます。





なぜ気が重いかと申しますと、もちろん


大会の試合当日にもかかわらず球場へ行けないというのが最大の理由でございます。


しかしその理由はもうひとつありました。


それは、キャッチャーでレギュラーである古木と私が同じクラスであるということ。


当然古木は授業を欠席することになりますので


この日が野球部の大会の試合日だということは


クラスメイトの全員が知るところでございまして。





そして、野球部の大会の試合日にも関わらず私が教室にいるとなると、


何となく嫌な展開が予想されるわけで、


そして、それは私が席に座った瞬間に予想通りになったわけで。





クラスメイトの中でも、


野球部と同じグランドで練習をしているサッカー部やラグビー部の連中は


ある程度は現在の野球部、


そして私が置かれている状況というのを知っている状態でございました。


ですので、そういう連中は私が教室に姿を見せると、


多少気を使った様子で、それでも普段の朝と同じように接してきてくたのでございます。


しかし何も状況を知らない他の生徒は、なぜ私が教室に現れたのか分からず


遠巻きに不思議そうに私のことを見ておりました。





そんな連中に理由を聞かれていちいち説明するのは苦痛以外の何物でもございませんので、


私は、自分の席に座ると





“俺に話しかけるな!オーラ” 





を強烈に発することにしたのでございます。




異様なオーラを感じとり、ほとんどの生徒は私に近寄っても来なかったのですが・・・





「あれ?今日は野球部って試合じゃねえの?何してんだよお前。」





私の“話しかけるなオーラ”をもろともせずに近寄ってきて、


何の遠慮もなしに話しかけてきたのは、


公立の進学校には数少ない、いわゆるヤンキーなクラスメイトの梅木でございます。


こういうタイプの人間は人の気持ちよりも自分の好奇心の方を優先するものでございまして。





「お前試合に行かなくていいのかよ?


 古木は来てないのに、何でお前ここにいるわけ?」




梅木に私の様子を察する気配は全くございません。


彼とは小学校からの同級生で、決して悪気があって言っている訳ではないというのは


承知しているところではあるのですが・・・。




「なあ、どうしたんだよ。


 あ、あれかお前、もしかして野球部辞めちゃったのか?」




矢継ぎばやな梅木にさすがに、イラッ!!とした私。





「うるさいよお前はっ!どっか行けっ!!」





私の怒鳴り声に、一瞬驚いた様子の梅木。




静まり返った教室の中、クラスメイトでラグビー部員の広田とサッカー部員の三木が


私の席のほうへ慌てて駆け寄ってきて、


梅木を後ろから羽交い絞めするような格好で引きずりながら、


私の目の前から連れ去っていきました。




その後私は、放課後までほとんど自分の席に座ったまま


休み時間も授業中も、より強烈な“話しかけるなオーラ”を発し続け、


誰も寄せつけなかったのでございます。




それはそれはとても長く感じられる一日でございました。




                                            


                                                                        (つづく)


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