〜 嫌な予感 〜
さて、監督のジャイにとことん嫌われて落ちるとこまで落ちた私。
まずは復権へ向けてどう動くか、言わば生きる道を模索しなければなりません。
この時点では、
「自分で何とかするから放っといてくれ。」
と親父にも言った手前、自力で何とかしなければという思いでございました。
その手段として考えたのは大きく分けると2つ。
ひとつめは、私がジャイに全面降伏し飼い犬のように服従を誓うこと。
ふたつめは、いくらジャイでも理不尽な補欠扱いが出来ないよう
これでもかと言わんばかりに実力を見せつけること。
意外と頑固な性格の私。
ジャイに服従するというのは到底出来るわけがありません。
と、なると残された道は
実力を見せつけてレギュラーを勝ち取るという、言ってみれば当たり前の方法しかないわけで。
しかし、次の大会でベンチ入りすら出来ない私は練習でも完全に補欠扱いということで
それまでにも増して蚊帳の外感が増し、
実力をアピールする事など不可能に近くなっていたわけで。
とりあえず好機が訪れるのを待つしかないという、悶々とした日々が続いておりました。
そうこうしている内に、あっという間に大会が三日後に迫った日の事でございます。
我々部員は、ジャイに確認しないといけない事がございまして。
それは、試合当日の移動手段。
なんせ私が住んでいたのは、学校から最寄の駅まで徒歩で30分という地方の片田舎。
学校から試合が行われる球場までは、車で移動するしかないのでございます。
ということで、試合がある日は予定のつく保護者が車を出しあって
全部員を球場まで連れて行くのが通例となっておりました。
試合が行われるのが休日の場合はそれ程問題はないのですが
高校野球の大会というのは平日に試合が行われる事もあるもので、
その場合、保護者の方も都合を合わせるのが大変なのでございます。
で、三日後に迫った試合の日は平日。
ここらへんで、保護者の予定をすり合わせてもらって車の台数を確保する必要があるわけで。
いつも車を出していた私の親父も、
私がベンチ入りしないにも関わらず観戦には来るつもりのようで、
「何時頃学校を出発するのか確認しといてくれ。」
と、言われていたところでございました。
で、キャプテンの沼田さんが練習後にジャイにその旨を伝えたのですが、
ジャイの返事は、
「ああ、次の試合は保護者の車は必要ないわ。
平日で台数そろえるのも大変じゃろうからな。」
えっ?
また、何かが起こりそうな雰囲気・・・。
キャプテンの沼田さんがジャイに確認をとります。
「じゃあ、球場まではどうやって移動するんですか?」
「大丈夫じゃぁ。20人乗りのマイクロバスを借りれることになっとるから、
ワシが球場まで運転していくわ。」
マイクロバスですか・・・。
・・・
・・・
・・・
・・・ん?
・・・20人乗り?
何か嫌な予感でございます・・・。
(つづく)