〜 言えません 〜
我が野球部の練習の締めくくりは、部員全員が学年ごとに横一列
つまり3列を作って並び、監督とグランドに
「ありがとうございましたぁ!!」
という感謝の声とともに一礼して解散。
1、2年生は手分けしてグランド整備と後片付けという段取りでございました。
まぁ、どこの野球部も似たような感じだとは思うのですが、
小学生の頃に野球を始めてからずっと教えられ続けてきた
仲間や監督はもちろん、グランドや道具にも感謝するべしという精神は、
スポーツを通じて学ぶ最もすばらしいものだと思います。
とはいえ、この時期の私には
監督に対しての感謝の気持ちなんぞ微塵たりともなかったのですが・・・。
で、ジャイの監督就任から2週間ほどが過ぎようとしていた
土曜日の練習後のことでございます。
いつものように、ジャイとグランドに一礼をして部員が解散しようとしたとき、
「あ、言うのを忘れとったわ。」
と、部員を引き止めるジャイ。
整列しなおす部員たち。
「明日は練習試合じゃあ。
10時に△△農業がここに来るから、お前らは9時に集合して準備しとけぃ。」
・・・そりゃまた、突然なことですな。
ていうか、もっと前もって言っときゃいいものでしょうが。
という感じで、おおいに戸惑う部員たち。
何せ、ジャイの就任以来
練習時間の大半を占めていたのは、
すっかり悪球打ちが身についたバッティング練習と、その懲罰の片足跳び。
そして守備練習の懲罰のウサギ跳びでございます。
試合を想定した実践的な練習などほとんどやっていないのですから、
急に試合と言われて、部員たちが戸惑うのも当然のことでございましょう。
でも、その時私が考えていたのは全く別の事でございました。
何かと申しますと、親父の事。
というのも、私の親父は結構な野球好きでございまして、
息子である私が小学生の頃に野球を始めてからは
練習試合であれ大会であれ、ほとんどの試合に観戦に訪れていたのです。
(まぁ、それは私の親父だけではなく他にも毎試合見に来る保護者はいましたが。)
そんな親父ですので、
「明日は練習試合がある。」
などと言えば、張り切って観戦に来るのは目に見えております。
しかし、高校に入ってからも熱心にほぼ全試合の観戦に訪れていた親父だけに
ちょっとややこしいかなと・・・。
つまり、親父は私が1年生の秋からレギュラーで試合に出ている姿を見ていたわけで・・・、
で、私が話していないので当然ですが、
親父はまだ自分の息子が現在の野球部で置かれている状況は知らないわけで・・・、
ただ、練習試合を見れば全てが分かるわけで・・・。
息子の現状を知った親父がどう出るかというところまでは
私には想像しかねるものでございましたが・・・。
とりあえず、私は練習試合のことは親父に知らせないことにいたしました。
(つづく)