〜 蚊帳の外 〜
誰かがエラーをすれば、連帯責任ということで
全員ウサギ跳びでグランド一周という懲罰付きのシートノック。
自分の意にそぐわない部員には
エラーをさせるべく力任せの強烈な打球を見舞うジャイ。
そんな中、ありがたい事に誰よりもジャイから目の敵にされていた私は
また違った類の嫌がらせを受けていたのでございます。
ジャイの指令を受けショートにコンバートされた私。
ショートのレギュラーの浅井さんが強烈な打球をさばいた後、
負けじと華麗な守備を見せつけてやろうという意気込みで、
「さあ、こい!!」
と、一応気合いを入れて構えます。
ところが、そんな私にジャイが放った打球は
何とも気合の抜けたスイングで、目をつぶってても取れそうなほどの
力なく正面に転がってくるゴロ。
・・・。
その瞬間、凍りついたように立ち尽くす他の部員たち。
私は、目の前に転がってきた打球を難なくさばいてシートノックは次の選手の順番。
ジャイは、特にレギュラー扱いで意にそぐわない選手には
これでもかと言わんばかりに力任せの打球を放ち、
エラーをしようもんなら
「そんなんも取れんでレギュラー面しとるんかぁ!!
××がエラーしたから、全員でウサギ跳びしてこぉい!!」
という罵声を浴びせ、
部員は全員でウサギ跳びでグランド一周。
そんな感じでシートノックが一巡して、再び私の順番。
「さあ、こい!!」
と、一応気合を入れて構えます。
ところが、ジャイが放つ打球は再び
何とも気合の抜けたスイングで、目をつぶってても取れそうなほどの
力なく正面に転がってくるゴロ。
再び、凍りついたように立ち尽くす他の部員たち。
・・・なるほど、そうきましたか。
シートノックの最中に繰り返されるこの光景。
つまり、私はシートノックの練習中
ひとり蚊帳の外的な扱いを受けていたわけで。
これは、力任せの強烈な打球を見舞われるよりもつらいわけで。
練習で自分の実力を見せつけて
レギュラーを奪い取るチャンスすら与えられないという
非常に厳しい状況なわけで・・・。
毎日の練習後、私は先輩や同級生の部員たちから
「ツライだろうけど、キレるなよ。」
とか、
「こんな無茶苦茶な事、いつまでも続くわけないから!」
とか、
「俺たちもやれる事はやってやるから、辞めるなよ!!」
などという、慰めや激励のありがたい言葉を頂くのが
日課のようになっておりました。
そして、そうこうしているうちに
我が野球部は新監督体制になって初めての
練習試合を行うことになったのでございます。
(つづく)