〜 誤審 〜
ストライクを見逃せば、その時点でバッティング練習終了!
さらに、もれなく片足跳びでグランド一蹴という懲罰の特典つき!
という状況で、バッターボックスの私に与えられたのは
ジャイが設定した、独創的ともいえるとてつもなく広いストライクゾーン。
どれくらい独創的かと申しますと・・・、
私に対してバッティングピッチャーから低めのコースへ投じられた投球、
これは低い!と判断した私は自信を持って見送ります。
すると、白いボールはキャッチャー手前でワンバウンドしてキャッチャーミットへ。
明らかにボール球でございます。
ところが、後方からジャイの怒号が・・・。
「おい、今のは際どいコースじゃないか!
ストライクやいわれても文句言えん様な球を簡単に見逃すな!」
え・・・?
際どい?
ワンバウンドしたのに?
とりあえず、ワンバウンドした球はストライクとは言いづらくとも
こんな感じで何かしらイチャモンがつくのでございます。
で、こうなると気を使うのはバッティングピッチャーの方でして。
ワンバウンドでも際どいという判定ならば次も低めに投げるとヤバイ・・・
ということで、じゃあもう少し高く投げようと思うのが心情でございましょう。
しかし、そういう時は往々にして裏目に出ることが多いもので、
バッティングピッチャーが次に投じた球は
一般的なストライクゾーンのはるか上、私の目線の上を通過するのでございます。
もちろん、
高めに大きく外れたと判断した私は見送るのですが、
そのとたん・・・
「今のはストライクじゃろうがぁ!ケンケンしてこぉい!!」
と、なるのでございます。
どうやら私がバッターボックスに入ると、ストライクゾーンは
上は頭のてっぺんから下はつま先にいたるまでに広がるらしく、
「いや、今の球は目線より高かったんですけど・・・。」
などと異論を申し立てようものなら。
「お前は試合中に、そうやって審判に文句言うんか?」
いや、そんな高い球をストライクと判定する審判なんかいないと思いますが・・・。
と、思いながらも
それ以上反抗しても無駄ということで、
不服ながらも片足跳びの懲罰を受けることになるのでございます。
多くの部員たちは、懲罰を嫌い
多少のボール球でも強引に打ちに行くという
異常なバッティング練習の光景が続く日々。
それでも、頑固な私は
そんな練習が何のためになるのか!
と、頑なにボール球は見逃し、その度に懲罰の片足跳びを課せられ続け・・・。
また、この頑なな私の態度が
ますますジャイの反感を買うことになったわけで。
もう、ジャイと私の関係は険悪になるばかりでございました。
(つづく)