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〜 突然のコンバート 〜

シートノックの順番を後回しにされ、


控えの大田さんの後にサードの守備位置についた私。


大男からの冷遇で、テンションは下がりまくりでございましたが、





「さあこい!!」





と一応、高校球児らしく大声で気合を入れて構えます。





それに対して大男は、ノックをする構えも見せず私に一言。





「お前、今日からしばらくショートで練習せぃ。」





・・・は?





いきなりのコンバート指令でございます。


あまりの突然のことに私は





「はい?」





と聞きなおしてしまいました。





「サードには3人もおるのに、ショートには1人しか守っとらんじゃないか。


 バランスが悪いから、お前はショートにまわれぃ。」





確かに大男の言うとおり


全部員がこれまでのポジション(1年生は希望のポジション)につき、


各ポジションとも2人から4人ずつという感じに分かれたものの、


何故か1年生にはショート希望の者はおらず


守っているのはレギュラーの浅井さんだけ。


サードには大田さんと私、そして1年生の高田の3人。





それで大男いわくバランスが悪いという事なのですが、


それを言うなら、3人以上守ってるのはセカンドもそうだし、


外野なんかそれぞれ4人以上いるし、


ほんでもって、しつこいようですが私はサードのレギュラーです・・・だったし!


数のバランスをとるだけのために誰かを動かすなら


まだポジションが確定していない1年生を動かのが自然な話。


納得するのにはそれなりの材料が必要でございます。





ですが私はすでに諦めムードで、その後の展望を推測しておりました。









私の推測は、まず半年ほど前に私がレギュラーに昇格したときの


振り返りから始まりました。





そもそも私は中学生の頃はショートを守っていたわけで。


高校に入ってからも当初はショートで1年上の浅井さんと


レギュラーを争うべく練習しておりました。



しかし、当時の3年生が抜けて新チームになったある日の練習後の事です。


私は、新キャプテンの沼田さんと当時の監督の澤地先生に部室に呼ばれました。



そこで話されたのは、


部員全員のレベルを考えた場合、私をレギュラーに昇格させたいということ。





しかし、私と実力が均衡しているショートの浅井さんを控えにまわすのは


戦力的にもったいないので避けたいということ。



で、サードの大田さんは実力的に私と浅井さんより劣るので


大田さん本人にも納得してもらった上で控えにまわってもらい、


私にサードを守らせるということ。





そういう話し合いがもたれた上で、私はサードに移り


その後レギュラーとして試合にも出場していたわけで。











で、現在のチーム事情に戻ります。





客観的に見ても、私と浅井さんの実力は均衡したまま、


大田さんが少々遅れをとっているというのも変わらず・・・。





そして、私がショートに移った場合ですが、





大田さんはめでたくレギュラー獲得ということになりますわね。




で、私が先輩の浅井さんからショートのレギュラーを奪い取るには


誰もが納得できるくらいの、


浅井さんを上回る実力と実績を見せつけなければならないわけで。





5月末に行われる次の大会までは約1ヶ月、


夏の甲子園大会の県予選までは約3ヶ月、


半年もの間サードを守っていた私が、


その間ずっとショートでレギュラーを張っていた浅井さんを相手に


ショートのポジションをかけて張り合うには


あまりにもハンディが大きく、時間も無さ過ぎる・・・。





つまり、この状況では、


3年生の浅井さんが2年生の私の控えにまわることは考えにくいわけで・・・。








あれ・・・?




ということは、このままいけば私は補欠ですか!?








それはまずいっ!!!!














などと思いながらも、


その場で大男の指令を無視して波風を立てるのはとりあえず避けようと、


私は、他の部員たちの気の毒そうに見つめる視線を感じながら


重い足取りでショートのポジションへ向かったのでございます。




















                                                                 (つづく)










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