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1/1

俺じゃない、社会が悪い

1

薬局チェーンの物流倉庫で働いて15年。

主な仕事は薬局の店頭に並ぶ薬を保管し各店舗から注文された品をそろえて送り出す。

月給16万で毎日残業、過酷なだけでやりがいもないクソみたいな仕事だ。

血涙を流しながら稼いだスズメの涙ほどの給料はさらに税金で抜かれ。

その金は暗殺された総理大臣の国葬や効果のない少子化対策や

ロシア兵を殺す銃弾の費用に変わる。クソくらえ、死ね。


「お前、倉庫に何年いるんだよ。何ひとつまともにできねえな」

そんな中課長は、俺が出した棚卸表を机に叩きつけた。

「数が合ってないんです。入庫の伝票と現物が」

「お前が数えたんだろ。自分のミスを会社のせいにすんな」

「すみません」

「謝り方気持ち悪い。もっとまともにしゃべれないのか」

 隣で、事務の女が笑った。


「飯塚さんって、本当みんなに嫌われてますよね

生きてて楽しいんですか?恋愛とかしたことあります?ないですよねw」


余計なお世話だ

「ミス全部直すまで帰るなよ。徹夜で残業しろ、ほんと使えねえな」

課長のあざけりの声が脳内でエコーする。

視界もゆがむ。あれ?なんでだ、そういえば昨日も寝てない。

最後にゆっくり寝たのっていつだっけ。

パワハラと希望のない未来におびえもうずっと寝てないや。

ばたっ、と音がして俺は薬品倉庫で倒れた。


「おい、どうしたんだ?」

「えー?マジきもいんだけど」

半笑いの部長と事務の女の顔。いやだ、人生最後に目にしたものがなんて

こうして俺はクソみたいな人生を終えた。終えるはずだった。


2

次に目を開けたとき、俺はトー横の地面に倒れていた。

酒の臭い。煙草の臭い。吐瀉物の酸っぱい臭い。

「ハウル、起きた?」

トー横キッズの女が三人、俺の顔をのぞき込んでいる。

「あれ?俺はなにを」

「やだどうしたの?ハウル」

「ハウル? 俺の名前?」

「やだ?記憶喪失ごっこ?ウケるんだけど」

「記憶喪失?そんなんじゃなくて、え?」

ふと鏡に映った自分の顔が目に入った。

そこにうつってるのはいつもの気持ち悪い俺ではないあきらかなイケメンだった。

もしかしてこれがうわさの異世界転生か。

「ごめん、ちょっと頭がボケてて」

俺は正直に言った


女はナオ、レイ、ユイと名乗った。

3人とも袖口からリストカットの痕が見える。

どーやら俺はトー横のチャラ男ハウルに転生したらしい。

女たちの振る舞いから見るにハウルはトー横でカーストが高いようだ。


「起きてよかった」

「水、買ってくるね」

「何食べたい? 私、なんでも買うよ」

3人とも優しかった。

きっと俺、いやこの男ハウルに心底惚れてるのだろう


「もうハウルったら、まだシャブ抜けてないの?

GIGOのトイレでしゃぶってあげようか?スッキリできるよ」

「え?しゃぶるって」

「やだ、いつもやってるじゃない」

なんてことだ、前世で薄給だった俺は半年に一回の大塚のピンサロが

なにより楽しみだった。

イケメンはずるい。こんな若い子にロハでヌイてもらえるなんて

やっぱり親ガチャは確実に存在する。


「シャブで思い出したけど、今日の分ないからどっかで稼いでこないと

 金持ってるオヤジどっかいるかな」

慣れた手つきでスマホをいじるレイ。

きっとコンビニ感覚で売春をしているのだろう。

「覚せい剤はよくないよ。犯罪だし」

「なに言ってんの、いつもキメセクしてるくせにw」

「ウチら人生終わってるから、捕まっても平気だし」

「ただシャブって高いから、おっさんのちんぽしゃぶらないといけないのがきついよね」

そんなトー横女子たちを後目にふと俺は名案を思い付いた。


「ついてきて」

「なに?」

「いいから。シャブはやっぱコスパ悪いよ」

女子たちは俺、いやハウルのいうことに服従だ。黙ってついてきた。


3

俺は3人をつれて前世で働いていた薬局の倉庫にやってきた。

建物を見た瞬間、昔のクソみたいな記憶が戻ってきた。

「なにここ」

「ここの薬局、警備がザルだからブロンが好きなだけ盗める」

「え?マジ!?」

「だからシャブはやめるんだ、お前らが大事だから傷ついてほしくない」

「ハウル……」

3人がうっとりしている。

愛された経験の少ないトーヨコ女子はちょっと甘い言葉をつぶやけば

なんでもしてくれるって生前ネットで読んだけど本当らしい。


「じゃあほらすきなだけ盗んできて」

「ハウルはこないの?」

「俺は見張ってるから」

万が一捕まったらシャレにならない。

「じゃあ待ってて盗んでくるから」

そういって3人は薬局の倉庫に忍び込んだ。


4 

しばらくして三人が薬の箱を抱え戻ってきた。

「取れたよ、ハウル」

「これでしばらく困らないね、帰ったらキメセクしよう」

嬉しそうに3人が微笑む。

広場へ戻ると、薬を見てほかの女たちも集まってきた。

「ハウルが場所を知ってたの」

「ハウルが連れてってくれた」

「ハウルのおかげ」


ナオが、俺の隣に座った。

「もうクスリのために売春しなくていいんだ」

嬉しそうに言うナオ

「だったらさ」

自分でも驚くくらい、すぐに言葉が出た。


「覚醒剤じゃなくて、俺のために売春してよ」

「いいよ。ハウルのためなら」

「私も」

ナオもレイも、うらやましそうにユイを見た。

「ハラ減ったな、シャブの前にメシ作ってやるよ。うまいもん食わせてやるからな!」

「本当!?」

「最高!ハウル大好き!!」

喜ぶ女たち

今まで俺はずっと人に使われてきた。

でも今度からは俺がこいつらを使って成り上がってやる。





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