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Episode|転生

女の子が頑張る姿、美しいですよね。

「ウルティミーナ公爵令嬢、ネクシア。悪いが、貴方との婚約は破棄させてもらう。ウルティミーナ公からの了承は既に得ている」


 彼女の元婚約者である皇太子は、冷徹な声で彼女を突き放した。


「では、私が彼女を拾いますわ」


 声を張って告げると、パーティー会場は一瞬にして静まり返り、すぐにざわめきへと変わった。


「参りましょう?」


 彼女に手を差し伸べると、戸惑いながらも、その細い指先が私の掌に重ねられた。


 この世界に閉じ込められる前の私は、平凡な女子高生だった。それがどういうわけか、現在(いま)の私は、RPG『聖女と厄災の魔女』のヒロイン、聖女『アナスタシア・レディトゥス』に転生した。

 最初はもちろん混乱した。ここがどこか分からなくて、ただ泣いて、怯えて、そんなことばかりを繰り返していた。やがて涙が枯れ、鏡に目をやったとき、そこに映っていたのは、見慣れた姿ではなく、聖女『アナスタシア』の姿そのものだった。


「私、ほんとにアナスタシアになっちゃったんだ」


 聖女『アナスタシア』、帝国において千年に一人の聖女と謳われた存在で、元はただの平民だった。純度の高い緑色の瞳は、彼女が高い神聖力の持ち主である何よりの証拠。その神聖力の高さゆえに、九歳という若さで、『アナスタシア』は家族から引き離される。十一歳になる頃には、その献身的な姿勢と数々の功績から『レディトゥス』という姓を授かった。

 それが、資料集に書かれていた彼女の過去だ。悲劇のヒロインとしては、いささか手垢のついた身の上話である。


 成すべきことは、決まっていた。


 このゲームのラスボス、悪役令嬢『ネクシア・ウルティミーナ』を救うこと。何故、救わなければならないのか。理由は二つ、彼女は魔法の能力値がカンストしている。つまり、彼女が本気を出せば帝国どころか、世界が滅びかねない。……そして何より、私の最推しだから!

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