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史上最強のメジャーリーガーは引退後は二度目の異世界で自由なスローライフを送りたい  作者: 葵彗星


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第7話 剛速球でキングオーク粉砕!

 シモーヌが呼びかけても遅かった。ローガンはそのままキングオークの棍棒で吹っ飛ばされた。

 スネイル、ローガン、ともに木の幹にぶつかってそのまま倒れこんだ。二人とも戦闘不能だな。


「そんな……支援魔法もかけたのに」

「ぐるうううううううう!」

「ゴーイチさん、早くあの人達を助けて!」

「さっきも言っただろ、あいつらの自業自得だ。無理せず逃げればいいものを……」

「確かにあなたの言う通りかもしれません。でも私は、目の前で殺されそうになっている人を放っておけないんです!」

「……おい、セリナ!」


 なんとセリナが前へ飛び出した。シモーヌよりも前に出て、敢然とキングオークの前に姿を現した。


「ちょっと何やってんの!?」

「私があいつを引きつけます! その隙にあの二人を治療してください」

「……無茶言わないで! あなたに何ができるって言うの?」

「できます。安心してください!」

「ぐがぁあああああ!!」


 まずい。キングオークがセリナを標的に捉えたようだ。


「……私だって!」

「セリナ!」


 俺は咄嗟に彼女の後ろから肩を掴んだ。


「ゴーイチさん?」

「全くお前という奴は。サリアに似てるな……」


 さすがに彼女を危険な目にあわせるわけにはいかない。やるしかないな。


「私の姉さんを知ってるんですか?」

「姉さんだと!?」

「……やっぱりあなたは……」

「ぶるああああああ!!」

「その話はこいつを片づけてからな。下がっていろ」


 俺がセリナの前に飛び出した。キングオークは俺を見下ろす。間近で見ると、さらにデカいな。


「ちょっと、あなた!」

「さっさとあの二人を助けろ、今ならまだ間に合うぞ!」

「いや、あなた一人では……支援魔法を」

「必要ない。いいから、さっさと助けろ!」

「無茶よ! スネイルとローガンも一撃でやられたのよ。自殺行為だわ」


 全く心配性な魔道士だな。俺の実力も低く見られたものだ。


「シモーヌさん、あの人を信じて。大丈夫ですから」

「あなたまでそんなことを!」

「ぶるああああああ!!」


 キングオークはお構いなしに突進してきた。巨大な棍棒を俺の頭上に振り下ろしてきた。


「ゴーイチ!!」

「……よっと。随分いい棍棒だな」

「ぐぅ!? ぐお……?」


 俺は左手で棍棒を支えた。触ってみた感じ、なかなかいい武器だ。重量感といい硬さといい、申し分ない。

 この手の棍棒は俺にピッタリな武器だ。だけど少しデカすぎるな。こいつを片づけたら、ピッタリな大きさにカットしよう。


「……え? そんな……」

「ね? 言った通りでしょ?」

「お前なら的当てにちょうどいいな」


 こいつの巨大さと頑丈さなら、さっきの小石の投球がちょうどいい。無防備となったどてっ腹に、小石を全力で投じた。

 小石が腹に直撃した瞬間、大きな爆発が起き、オークはそのまま後ろへ吹き飛ばされた。


「ごわぁああああああああ!!」


 巨大な図体が地面に投げ飛ばされる。オークは倒れ込んで、動かなくなった。

 ダメージの深さが気になるから、近づいてみた。


 さすがはAランク魔物だけあって、さっきのオークみたいに跡形もなく吹き飛ぶことはないな。

 しかし腹部の鎧は完全に粉々になり、内臓やら骨も外に飛び出して滅茶苦茶な光景だ。これはセリナには見せられないな。


「倒したぞ。早くあの二人を助けろ」

「あ……私がやります」

「お前、治癒魔法使えたのか?」

「はい、一応は」


 セリナが倒れていたスネイルに駆け寄り、しゃがみ込んで魔法を唱えた。

 両手から淡い光が漏れだし、見る見るうちに傷が癒えていく。

 これで安心だ。100年以上は経過しているみたいだが、治癒魔法使いは健在のようでよかった。


「シモーヌ、もう片付けたから安心しろ」


 シモーヌを見ると、口を開けたまま固まっていた。


「シモーヌ!」

「……あなた……今のは……一体何をしたの?」

「小石を投げただけだよ。それよりお前はローガンを治療しろ、少女にだけ負担掛けさせるなよ」

「こ、小石……?」


 シモーヌは未だに何を言っているのかわかっていない様子だ。でも、ついに考えるのをやめたのか、頭を振ってローガンのもとへ駆け寄った。


「……まぁ、俺のスキル、いや俺だけのスキルだからな。理解できなくても仕方ない」


 さてキングオークも討伐したことだし町に行くか。でもその前にセリナに話しておかないといけないことがあるな。


「セリナ、さっきの話の続きだが……」

「おい、こいつは!?」


 突然大声が聞こえた。何事かと思ったら、回復していたスネイルがキングオークの体を見下ろしたまま固まっていた。


「そいつはもう俺が倒したから安心しろ」

「まさか……お前が!?」

「そんな……この傷は……」


 ローガンとシモーヌも駆け付けてキングオークの体を見下ろす。あまりのひどさに言葉を失っているようだ。


「セリナは見るなよ。かなりひどい」

「は、はい……」

「お前、一体何をしたんだ?」

「何って……小石を投げただけだよ」

「嘘つかないで! 小石なんかでこんな大きな傷ができるわけないでしょ!」

「俺もかすかだが聞いたぜ。あの爆発は凄かった。何か強烈な魔法か、スキルでもないと説明がつかない」


 スキルか。確かに言われてみれば、そうだな。


「スキル〈剛速球〉だ」

「なんだって!?」


 俺がこの異世界に転生した当初から使えていたスキルだ。

 どんな小さな物体だろうと、例え小石だろうと、超高速で投げることができて、その破壊力は全力で投じれば巨大なクレーターが生じるほどだ。さっき森で見た巨大クレーターも、このスキルが原因だ。


 野球一筋だった俺にとって、相応しいスキルと言える。スキルなしでも、最速で170km近い球速は簡単に出せるが、〈剛速球〉スキルを用いれば、最大でその十倍の球速を繰り出せる。


 時速170kmが時速1700km以上に膨れ上がる。衝突のエネルギーは速度の二乗に比例すると言われている。だからどんな小さな石だろうと、速度さえ最大限に上げれば、頑丈な鎧だって粉々だ。


「……ということなんだけど、理解できたかな?」

「…………」


 全員に簡単にスキル〈剛速球〉の効果と威力を説明したが、目が点になっている。エネルギーと速度の関係は物理の基礎知識だが、やはりこの異世界じゃ通用しないな。


「剛速球、そんなスキル聞いたことないぞ」

「もしかして、職業は狩人なの?」

「か、狩人!?」

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