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史上最強のメジャーリーガーは引退後は二度目の異世界で自由なスローライフを送りたい  作者: 葵彗星


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第51話 ケンティマヌスの猛攻

「ぐがぁああああああ!!」


 さっきから、あたり一面腕を振り回すだけで滅茶苦茶な攻撃だ。でもその滅茶苦茶な攻撃で、勢いよく岩石が飛び散ってしまう。

 その岩石を〈フルスイング〉で弾き返すことは簡単だ。でも飛び散った岩石、異様にもろい。俺が棍棒を直撃させた瞬間、粉々になる。


 あの島の岩石、かなり湿り気があるな。なにぶん空に浮かんでいる島だ、相当長い間雨水を蓄えていたんだろう。そのせいでかなり脆くなってるんだ。


 単なる土や泥の語りじゃ、ミスリル製の棍棒ぶつけたら粉々になるのも当然だ。もっと固い金属のような塊があれば。さっきの鉄球はもう海に落ちちまった。


「……仕方ない。アレを試すか」


 まだとっておきのスキルがある。何も投げる物体がなくなったときに使おうと決めたあの〈スキル〉が。さいわいここは空の上、空気には困らない。右手を高々と持ち上げた。


「〈大気超圧縮〉!」


 この〈大気超圧縮〉で周辺にある大気を集め、圧縮して疑似的に弾丸を作り出す。右手にすっぽり入るサイズまで集め、その弾丸を全力投球をした。


 スキル〈剛速球〉との重ね合わせれば、空気弾とて威力は上がる。さぁ、どうなる。


「グガァアアア!!」


 だめか。しょせんは空気弾、並の魔物ならまだしも、あのゴーレム相手じゃ雀に涙か。

 だとしたら、もう少し集めてサイズを大きくすれば。


「ぴきぃい!!」

「うっ! ラズリー、大丈夫か!?」


 のんびりしていたら、ゴーレムの巨大な右腕が襲ってきた。ラズリーが避けてくれたが、あのゴーレムの腕の大きさもけた違いだ。ここまで届くとはな。


 かと思ったら、今度は左腕で攻撃してきた。これじゃ迂闊に近づけない、こっちは攻撃手段が限られているんだ。

 仕方ない。一旦距離を取って、空気弾のサイズを調整する時間を稼ぐ。ラズリー、頼むぞ。


「ぐがぁああああああ!!」

「ん? あれは……なんだ?」


 今度はゴーレムの様子が変わる。腹部の部分が正方形状に開いて、その中から真っ赤な球体が出ていた。

 一瞬瞳かと思ったけど、よく見たら内部でメラメラと炎が燃えているのが見える。嫌な予感がする。


「まずい! ラズリー、避けろ!」


 俺の予感は的中した。一瞬だけピカッと光って、燃え盛るような熱い光線がここまで届いた。

 ラズリーの動きが早くて、なんとか避けられたが、あの速さじゃ連発されるとヤバイ。


 再び球体の内部がメラメラと燃え出した。第二波が来るか、ラズリーだけが頼りだ。


「ぴきぃあ!?」

「しまった! 当たったか!?」


 第二波の光線の一部分が尻尾の部分をかすめたみたいだ。煙が上がっている。さっきよりも若干反応速度が鈍っているように感じる、ずっと飛び続けていたら無理もない。


 このままじゃラズリーの体力が持たないな。


「ラズリー! 奴の背後へ回り込め!」


 うまい具合に距離を取ってゴーレムの背後に回り込めた。後ろはがら空きで隙だらけだ、しかも俺達を見失っているらしい。これなら攻撃し放題だ。


 と思ったけど、俺は重大なことに気付いてしまった。


「待てよ……別に倒さなくていいんじゃないか?」


 そうだ。よく考えたら、俺はセリナを救出するためにこの島まで来たんだ。なんでこんなゴーレムを相手にしないといけないんだ。

 奴が俺達を見失っている今が絶好のチャンスだ。この隙に島に上陸しよう。


「悪いが……お前の相手はまた今度だ」



 ゴーイチとラズリーが島の入口付近に上陸した様子を、遠くから魔道士達が目撃していた。


「……あの男、うまい具合にケンティマヌスを振り切ったな」

「ふふ、馬鹿め。そうはさせるか!」


 魔道士の一人がすぐ近くに会ったオーブに手をかざす。その直後、入り口の巨大な門が赤い光で照らされた。


「……これで完璧だ。何人たりとも通さん!」

「だがその仕掛けも、倒されるまでの間だ。もしそうなれば……」

「そんなことはない、あのケンティマヌスはこの島の最終防衛兵器だ。よもやこんなタイミングで呼び起こすことになるとは思わなかったが」

「あのゴーイチとやらを甘く見ない方がいいぞ」

「お前は……随分あの人間の男を買い被るんだな」

「あの嵐の雲を突破できたんだ。我々の想定外の力を、まだ秘めているかもしれん」

「運が良かっただけだ。だがその悪運もここで尽きる」

「それより、儀式の方は?」

「順調だ。サリアも罠にはめられ、のこのこやって来たことだし」

「最初から、妹は餌だったのか」

「そうだ。新しい神の復活の儀式、サリアの魔力こそ生贄としてふさわしい。きっとうまくいく」


 このままでは本当に復活してしまう。まさに恐れていたことが起きようとしている、自分はスパイとしてこの教団に乗り込んでいたが、隙を見計らいなんとか報告をせねば。


「さっきから浮かない顔をしてるが気分でも悪いのか? 神が復活されようとしている喜ばしい日になるんだぞ。もっと……」


 ドサッ!


「どうした!?」


 隣の魔道士が急に倒れた。どうやら侵入者はサリアだけではなかった。女の魔道士はいつの間にか自分に杖を突きつけていた。

 人間の女だ。サリアを尾行していたのか。


「あのバリア、消してもらえるかしら?」

「……無駄だ。バリアの魔力源はケンティマヌスだ。あれはこの島の最終防衛兵器であり守護神。一度起動してしまえば、破壊されるまで消えない」

「そう。聞くだけ無駄だったわね」

「ま、待ってくれ。私は敵ではない。これを見ろ!」


 そう言って魔道士は女にある物を見せた。


「それは!? あなたは……一体?」

「私のことよりも、今はあの男を助けることだけを考えろ! さっきも言ったが、ケンティマヌスを破壊しない限りはこの島へ入れん」

「……弱点を教えて」

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