第50話 巨大ゴーレム出現
サリアの実力からして、単独で突入しても大丈夫な気はするが、妹を人質にとられかねない。感情に振り回されて突っ走ったりしなければいいが。
「ぴきぃい!?」
「うわっ!? 今度はなんだ!?」
何を思ったのか、ラズリーが急に止まった。気づけばもう目と鼻の先に空飛ぶ島が見える。もう眼下にその陸地の全貌が見渡せる。
間近で見ると、かなりデカい島だ。俺の〈測定〉のスキルだと、面積は200平方キロメートル以上と出た。
200平方キロメートルはデカいな。シーズンオフのキャンプで訪れた沖縄の離島が、だいたいそれくらいの大きさだった。
どうしてこんな巨大な島が空に浮かぶのか。その疑問はさておいて、今はセリナ救出が最優先だ。
島の周りを高い山脈に囲まれているが、唯一前方に巨大な門が立っている箇所だけ空いているな。あそこが入口のようだ、ご丁寧に着陸しやすいようちゃんと地面も整備されているようだ。
「ラズリー、あそこに着陸してくれ」
「……ぴ、ぴきぃ……」
「おい、どうしたんだ? さっき魔力伝導で体力は回復したはずだろ?」
「……ぴきぃ……」
一体どうしたんだ。もしかして魔力伝導も完璧じゃないのか、それにしては体力が尽きるのは早すぎるような。
いや、違うな。これは体力低下じゃない。ラズリーが震えている。明らかに何か恐怖を感じているんだ。その源はなんだ。
俺もすぐに察した。巨大な魔力を帯びた何かが、島のどこかでうごめいているのを感じる。
「これは……まずい! ラズリー、後退を!!」
ドォオオオオオオオオオオン!!
巨大な轟音がさく裂したかと思うと、突風と粉塵が待った。島の入口付近の地面から、何かが噴出したんだ。
何が出てきた。粉塵が待って見づらいが、かすかに不気味な赤い光が二つ見えた。あの光の感じ、見覚えがある。魔物だ。
「あれは……ゴーレム!?」
「グガァアアアアアア!!」
全身が岩でできた巨大な魔物、ぱっと見ると巨大なロボットのように見えるが、あんなロボットは地球にもいない。
そして顔の部分には赤く光る二つの目。間違いない、ゴーレムだ。ただゴーレムにしては明らかにデカすぎる。
おそらくこの島を守護するガーディアン的な存在か。とんでもない奴を配備させたな。
でもどんな奴が出てこようと、瞬殺してやる。鉄球を〈フルスイング〉で直撃させてやる。
いや、駄目だ。しまった、さっき落としたんだ。なんてタイミングの悪さ。
さすがに鉄球なしであのゴーレムを相手にするのはきついぞ。見た感じ、耐久力も高そうだし。どうすればいい。
*
「まずい……ゴーイチが!!」
セリナを見つけ、島の最奥部にあった神殿内部に入ろうとしたその瞬間、地響きとともに出現した巨大ゴーレムにサリアも気づいた。
ちょうどその時、入り口付近の上空にはラズリーに乗ったゴーイチが接近していた。あのゴーイチでも苦戦しかねない相手だ、サリアはすぐに駆け付けようとした。
しかしすぐに殺気を感じて振り向いた。すでに数名規模の教団魔道士達が背後についていた。
「邪魔をしないでもらえるかしら?」
こんな奴らなど敵ではない。だがサリアが恐れていたことが起きた。
「セリナ!? あなた達……」
「さすがのエルフ最強の魔道士とあっても、これでは出だしできまい」
魔道士達は眠っていたセリナをすでに人質にとり、胸元にナイフを突きつけていた。
バアアアアアアン!!
巨大な衝突音が響いた。巨大なゴーレムが腕を振り回し、地形を変えていた。その衝突で飛び散った土砂や岩石で、ラズリーが右往左往している。
「どうやらお前の仲間のようだな。言っておくが、手助けしようものならこの娘の命はないと思え」
「あなた達の目的は何なの? 身代金なら、代わりに私を人質にしなさい」
「身代金? 愚かな。そんなくだらんもののために誘拐したわけではない」
「なら……一体何が?」
「……新しい神……誕生の儀式」
「なんですって!?」
魔道士達はそれだけ言い残すと、セリナと一緒に姿を消した。
新しい神の誕生の儀式。その言葉を聞いて、サリアは恐ろしい予感がした。でもそんなことが本当に可能なのか。だとしたら、事態はいよいよもって最悪きわまる。
一刻も早くセリナを助け、この島から抜け出さないと。
(サリア……聞こえるか? そっちはどうだ?)
ゴーイチが話しかけてきた。
「……ゴーイチ、ごめんなさい。セリナが人質にされて……」
(やっぱりそうか。言っておくが、俺のことはかまうなよ。妹の救出を最優先にしろ)
「わかったわ。でも無茶しないで、いざとなったらあなただけでも逃げてね」
(おいおい、俺がそんなこと聞くと思うか?)
「……えぇ、そうね……」
ゴーイチの自信に満ちた声を聞いてサリアは一安心した。彼は不可能を可能にする男、妹のセリナに何度も言い聞かせたことを思い出した。
今は自分のやるべきことをやるだけ、サリアはそう言い聞かせて神殿の内部へ突入した。
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