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史上最強のメジャーリーガーは引退後は二度目の異世界で自由なスローライフを送りたい  作者: 葵彗星


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第43話 知りたくなかった事実

 せっかく百年ぶりに再会できたって言うのに、なんて塩対応なんだ。俺の名前を聞いた時のあの反応、ジュスランは俺のことを覚えているはずだ。


「安心しろ、お前達の行為は無駄にしない。特効薬の作り方も熟知している使用人がいるからな。すぐに容体はよくなるだろう。遠路はるばるご苦労だった」

「ちょっと待てよ! 用はこれだけじゃないんだ、もっと重大な、緊急の用件があってきた!」

「その通りです。実は……セリナ様が誘拐されたのです!」

「セリナが!?」


 バッカスの言葉を聞いて、兵士達もざわついた。ジュスランは固まった。もう少し情報を提供するか。


「誘拐したのは、邪竜教団の奴らの可能性が高い。バッカスが目撃したんだ、赤紫色のローブを着た魔道士が『キースラーの町』でセリナをさらったと」

「……邪竜教団?」

「ばかばかしい! 邪竜教団など、とうの昔に壊滅した組織だぞ」

「若様……やはりこの者たちは……」

「おい、なんだよ!? まさか俺達がそいつらの仲間だというのか? わざわざ誘拐したなんて報告する犯人はいないだろ」

「そうですぞ! お願いですから信じてください、そしてなんとか巨鳥ラズリーに会わせてください」


 これだけ言っても信じてもらえないのか。だけど難しいかもしれない、そもそもセリナが誘拐された場面を見ていないから。


「……バッカスよ、その報告は間違いないんだな?」

「はい、間違いありません!」

「……そうか。わかった、情報提供ありがとう」

「おぉ、ということは?」

「すぐに衛兵達に伝えろ。大至急『キースラーの町』に向かい、セリナを捜索するんだ! もちろんハヴィエール卿には伏せておけ」

「了解しました」


 兵士の一人が走っていった。当然の対応だが、問題もある。


「ちょっと待てよ! 捜索隊を向かわせるのはいいが、ここから『キースラーの町』まで、どんなに早く移動しても一日はかかるぞ」

「安心しろ、町まで一瞬で行ける転移魔法陣があるのでな。すぐにセリナも見つけられるだろう」

「いや、そういう問題じゃなくて……奴らのアジトの場所を知っているのか?」

「アジト? いや、知らないが……心当たりあるのか?」

「天空竜の跡地だよ」

「……なに?」


 ジュスランは怪訝な顔で聞き返した。さすがのエルフの貴族様でも、邪竜教団のアジトまでは知らないんだな。さっきも存在自体を否定していたし。


「聞き間違いかな? 天空竜の跡地がどこにあるのか知っているのか?」

「空の上だろ。だからそこに行くためにラズリーの力が必要なんだ。頼む、乗せてくれ」

「……論外だ。あの鳥はサリア以外にはなつかない。諦めろ」

「そんなことは知っているとも。でも、俺はかつて乗ったことがある。嘘だと思うなら、会わせてくれ」

「……百年経ってお前のことをあの鳥が覚えているとでも?」

「お前が……ジュスランが俺を覚えているなら、ラズリーだってきっと……」

「駄目なものは駄目だ!」


 強引に話を遮りやがった。さっきよりも敵意がにじみ出ている。


「ゴーイチ、悪いことは言わん。これ以上我々に関与するな、お前は……かつてのような少年じゃない。立派な大人になった。そうなれば、もう百年前のように特別扱いはできない」

「特別扱いだと? 俺を迎え入れたのは、ほかでもないサリアだ。ちなみについさっき会ったばかりだ。彼女は俺のことを覚えていてくれたし、暖かく向けてくれた!」

「そうか……ならばもう気が済んだだろ?」


 ついさっき会ったが、少し雑談してまた別れた。それで気が済んだから帰れだと。


「お前がそんなにサリアに会いたければ、いつでも会わせてやる。ただし、この町の外でだ」

「……それがお前達の答えかよ?」

「ゴーイチ、わかってくれ。百年前、お前と交流したことで、サリアは……差別された」

「差別!?」


 馬鹿な。いくら人間には冷たい種族だからって、俺と親睦を深めたことがそんな事態にまで発展したのか。


「もうあんな思いを……サリアに味わってほしくないんだ」

「……そんな経験を味わった女性が、百年でSランク魔道士にまで成長するのか?」

「サリアは精神力が強いからな。ある程度の差別的言動を受けても動じはしない。むしろそれをバネにして成長に弾みをつけた。だが妹はどうだ?」


 そこまで聞かれてハッとした。


「セリナにはすでに会っただろう? 彼女が姉と同じような差別を受けたとき、お前は責任を取れるのか?」

「……それは……」


 まずい。そこまでは考えていなかった。確かにセリナはまだ幼い。エルフ達の間の差別的言動は果たしてどこまで心にくるものなのか。そしてセリナは、耐えられるのか。


 俺はもしかしたら、すごく身勝手な行動をとっていたのか。


「……ゴーイチ殿」

「バッカスよ、お前の意見を聞かせてもらおうか」

「……わたしは……セリナ様にはそのような思いは味わってほしくありません」

「聞いての通りだ。ゴーイチ、人間であるバッカスも私達と同意見のようだからな。もはやこれ以上議論する必要はあるまい」

「で、ですが……ゴーイチ殿の言うように、奴らの本拠地はおそらく天空竜の跡地にあります」

「その件は我々に任せてもらおうか」

「いえ、その……協力できればと」

「人間の協力など必要ない。お前達、天空竜の跡地へ捜索隊を送れ」

「しかし……そこは浮遊島で、高度もかなりあります。容易に行ける場所ではありません」

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