第39話 邪竜教団
まさかと思い聞いてみたが、どうもシモーヌには確証があるようだ。
「赤紫色のローブと言ったわね。しかも精霊のフォレストガーディアンを操っていた……」
「あぁ、そうだが……何か心当たりあるのか?」
「あるわよ。多分そいつら……邪竜教団の魔道士よ」
「……邪竜教?」
聞きなれない言葉がでた。だが邪竜という言葉に引っかかる。
「邪竜ってまさか……あの邪竜?」
「えぇ、邪竜ディンフォース。百年前、勇者レイに滅ぼされたんだけど、その邪竜を崇拝している宗教団体はまだ存在しているって話よ」
邪竜を崇拝している宗教団体だと。なんて怪しげな話だ。ディンフォース自体はもういないのに、いまだに崇拝している奴らがいるってのか。
「多分あなたの国じゃ聞いたことないかもしれない。でもね、邪竜の存在というか力は、百年前の人々にはとっては脅威以外のなにものでもなかったわ。それこそ……世界を滅ぼすとも言われた」
シモーヌはさらに話を続けた。ディンフォースはあまりにもその力が絶大で神聖視されており、その討伐自体を受け入れない、あるいは信じようとしない連中も多かった。
ディンフォース討伐後、その宗教団体は国家規模で弾圧されたようだが、まだ存続しているらしい。信者は増えているとも言われていて、秘密裏に活動をしているらしい。
団体を構成しているのは魔道士が大半で、赤紫色のローブを身にまとっているのが特徴だ。Aランク以上の魔道士も多く、中には精霊を操るほどの実力者もいるらしい。
「し、知りませんでした……未だに邪竜教団が存在していたとは。シモーヌ殿、その話を一体どこで?」
「それは……話せば長くなるんだけど……」
渋い表情を見せた。これは本当に話が長くなりそうだ。
「細かいことはいい。要はその邪竜教団のアジトにセリナは連れていかれた可能性が高いってことだ、そうだろ?」
「えぇ、でもあくまで私の推測よ。それに……そのアジトって言っても、簡単に行ける場所じゃないのよ」
「知っているのか? なら話は早い! それはどこなんだ!?」
シモーヌは黙って指を上に指した。
「……空の上よ。正確に言えば……天空竜の跡地」
「て、天空竜の跡地ですと!?」
バッカスが叫んだ。天空竜、その名前、久しぶりに聞いた気がする。確か正式名称は天空竜イルシオン。
かつて天空の世界を牛耳る神だったが、邪竜ディンフォースとの激闘の末敗れ、その居城が今も天空のどこかで浮上しているという話は知っているが、まさか本当にあったとは。
「あり得ません、邪竜教のアジトが天空竜の跡地にあるなど……天空竜はかつて邪竜の宿敵だったはず!」
「だからなのよ。邪竜教の信者たちは自分たちのアジトの絶好の隠れ家としては、天空竜の跡地以外にないと考えたわけ。まさか自身が崇める神の宿敵がいた居城をアジトにするだなんて、誰も思わないでしょ」
「なるほど。確かに一理あるが……問題なのは……」
「そこまでどうやって行くかでしょ? それがわかれば苦労はしない」
さすがのシモーヌでも天空竜の跡地の正確な場所はわからないらしく、頭を抱えた。天空竜の跡地は空中に浮いている島で常に空高くを移動している。つまり定位置にないのだ。
でもその問題は簡単に解決しそうだ。
「空を飛んでいけば……見つかるな」
「いや、簡単に言うけど……そんなこといくらあなたでも……まさかさっきのアレで!?」
「まぁ、さすがに〈場外ホームラン〉でも無理があるかもしれない。でも大丈夫だ、エルフの町『ティアランピア』に行ければ……」
「おぉ、そうか! あの鳥がいましたな!」
「あの鳥って……?」
あの鳥のことはさすがのシモーヌでも知らないか。
「巨鳥ラズリー、サリアのペットさ」
「ペット? サリア様に巨鳥のペットがいたの?」
俺も二十年前に一度だけ乗ったことがある。デカい図体をしていた鳥だが、遥か上空を飛んで旅したな。地球で飛行機に乗って地上を眺めるのが馬鹿らしく思えるほどの素晴らしい景観が拝めた。
「それに乗って空を飛んでいけば、おのずと見つかるはずだ」
「待って! その巨鳥がいるのは『ティアランピア』でしょ? ここからだとかなり離れてるわ。だいたい今から向かっても二日はかかるはず」
「大丈夫だ。俺の〈場外ホームラン〉でギリギリ届く距離だ」
「届くの!? いや、でも……仮に届いたとしても、エルフの町でしょ? 私達人間が入れたりしないわ」
「私を連れて行ってください!」
「バッカス、どうしてお前が?」
「実は私、何度か『ティアランピア』に足を運んだことがありまして……」
「え? 人間のあなたがどうして!?」
「あぁ、その話はあとでいい。バッカス、要するにお前を連れていけば入れてもらえるんだな」
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