第37話 一難去ってまた一難
言ってることがよくわからない。すると後ろからシモーヌが小突いた。
「ゴーイチ! あなたのメンバーカードに記録されてるはずよ、さぁ見せてあげて!」
「メンバーカードに記録? 何が記録されるんだ?」
シモーヌが思わず口をあんぐり開けた。俺は何かおかしなことを言ったのだろうか。
「……あのね、メンバーカードにはこれまで討伐した魔物が全て記録されるようになってるのよ! それくらい常識でしょ?」
「なに? 魔物が全て記録だと!?」
なんてことだ。討伐した魔物が記録されるだなんて、そんなことは初耳だ。メンバーカードにそんな機能はないはず。
いや、よく考えたらそれは百年前の話だ。俺としたことが、またうっかりしてた。この百年の間に、メンバーカードにそんな機能が追加されただなんて。
「すまない、俺の国のメンバーカードにはそんな機能なくてね……」
「え? そうなの……世界共通だと思ってたわ。でも昨日『キースラーの町』のギルドで更新したから、追加されてるはずよ。早速見てみましょう」
「見ろって言われても……どうやって?」
「メンバーカードの縁が金属加工されてるでしょ。その縁の部分を手に持って、〈レコードオープン〉って言えばいいのよ」
「……〈レコードオープン〉!」
さっそくシモーヌの言われた通りやってみた。すると次の瞬間、俺の新メンバーカードが光りだした。
俺の目の前にでかでかと正方形の画面が宙に浮いて表示された。シモーヌやスネイル達の顔を見ると、どうやら周りにも見える画像か。
なんてハイテクなんだ。俺の世界でも立体映像が声だけで表示してくれる機械はそうそうないのにな。いや、これは魔法による仕掛けなのか。
まぁ、そんなことはどうでもいいか。表示された画面に確かに文字がいくつも表示されている。中央部分にこう書かれている。
『ナイトウルフ201匹討伐 王国歴1125年 十の月二十の日 十時台』
王国歴1125年か。俺が以前この世界に来たときは王国歴1025年と言っていたから、ちょうど百年か。さっきのナイトウルフの討伐数も時間帯もほぼ間違いないようだ。
「……どう? これでもまだ信用できないって言うの!?」
「……うっ!」
「し、信じられねぇ。201匹だと? たった一人で……」
「念のため、あなた達のメンバーカードも見せてもらえる?」
「……いや、その必要はねぇよ」
どうやらスネイル達もこれで納得したみたいだな。さっきまでの闘争心がすっかり消えて、完全に負けを認めたような顔になった。
「……あんた、立派な冒険者になれるぜ」
「ありがとう」
「私のパーティー離脱、認めてもらえるんでしょ?」
「あぁ、俺が代わりにギルドに申請しておくよ。じゃあな」
それだけ言い残してスネイルは部屋を後にした。ローガンも少し遅れて部屋を出ようとした。ドアの前で立ち止まって俺達の方を見た。
「……なぁ、あんた。それだけの強さがあるなら、誰かとパーティー組む必要ないと思うけど……」
「ちょ! 何言い出すのよ!?」
ローガンが思わぬことを口走った。正直俺もその考えに異論はない。
「シモーヌは癖の強い女だ。気をつけなよ」
ローガンが部屋を出た。まるで負け惜しみにみたいに聞こえるな、シモーヌは見るからに苛立っている。
「なによ! 最後の最後で……あんなこと……ゴーイチ、気にしなくていいから!」
「あぁ……わかったよ」
気にしなくていいも何も、このシモーヌの表情を見たら完全に図星だとわかる。癖の強い女か、確かにそうだな。
「それにしても便利だな、討伐履歴が簡単に見れるだなんて……」
「何感動してるんだか。あら、外が騒がしいみたい……」
俺は討伐履歴が表示された画面をあちこち触った。まるでスマートフォンのタッチパネル操作だ。
右下に下へ続く矢印があり、そこを触るとした方向にスクロールした。すると昨日までに討伐した魔物の一覧もあった。
『謎の魔物』とある。これは鍾乳洞で倒した鎧の魔物か。でも適性試験で倒したフレイムザウルスはなかった。
それは当然か。あれは魔法で生成された疑似魔物、記録される方がおかしい。
その前日に倒したキングオーク、そしてオークの群れも表示された。数も日付もピッタリ合ってる、本当にすごい技術の進化だ。
だけど俺はそこではたと気づいた。
「待て……この下は……」
表示されるはずがない。なぜなら、二度目の異世界で最初に倒したのはオーク三体、ここから下はもう百年前になるはずだ。
でも違った。さらに下へ続く矢印がある、おそるおそるそこを触ると、とんでもない魔物の表記があった。
「……嘘だろ」
なんてこと、嫌な予感は的中した。やっぱりどこまでも正確に記録してやがるんだな、しかも百年前の魔物まで。
一体この討伐履歴とかいう仕組みがいつ実装されたかは知らない、でもどうやら遡って記録されるのは確かなようだ。俺はそっと画面を閉じた。
「見て、ゴーイチ!」
「どうしたんだ?」
シモーヌが何かに気付いて窓の外を指差した。俺も近寄ってみたが、なぜか村民が集まって騒いでいる。
「……ゴーイチ殿ー!!」
「今の声は?」
遠くから聞き覚えのある男の声が聞こえた。だんだん近づいているようだ。
「あれはバッカス!?」
馬に乗ってここまで走ってくるのが見えた。かなり急いでいるな、一体どうしたんだ。
「ゴーイチ殿ー!! ゴーイチ殿ー!!」
「一体どうしたのかしら、外に出ましょう!」
シモーヌと一緒に急いで村長の家の外に出た。バッカスも俺達を見つけ、一目散に駆け付ける。
「ゴーイチ殿ー!! ここでしたか!!」
「一体どうしたんだよ? わざわざ馬に乗ってそんなに急ぐだなんて」
「どうしたもこうしたも、一大事でございます! セリナ様が……セリナ様が……」
「セリナが……どうしたって……?」
そこからバッカスが告げたのは、信じたくもない衝撃の言葉だ。
「誘拐だと!?」
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