第36話 弟子入り志願
まずいな。迂闊にサリアとなれなれしく喋ったのはまずかった。なんとか誤魔化さないと。
「その……俺がセリナのボディガードってのは知ってるだろ? だからその関係で……たまたま知り合っただけだ」
「…………ふぅん……」
なんだよ。シモーヌは何か勘ぐっているような表情を見せた。
百年以上も前に知り合ったなんて、言っても信じないだろうが、もしかしたらシモーヌは俺とサリアは普通の仲じゃないと探りを入れているのか。
「まぁ、いいわ! それじゃ、あなたが代わりに私の相談を聞いて!」
「はぁ? まさか……俺を伝言役にするつもりか?」
「えぇ、そうよ! 一生のお願いよ、あなたならできるでしょ!?」
「勘弁してくれ。どんな願いか知らないが、言いたいのなら、直接自分の口から言えよ!」
「弟子にしてほしいの!」
そのシモーヌの言葉を聞いて、思わず固まってしまった。
「……なんだって?」
「……だから……サリア様に、私の弟子入りを認めてもらいたいの!」
俺は呆れてしばらく何も言えなかった。シモーヌの身の程知らずもここまでとはな。
「……お前なぁ、そんなことサリアが認めるわけないだろ」
「身の程知らずな頼みだってことは百も承知! でも、今の私は……このまま努力しても、実力は絶対に伸びない」
シモーヌはさらに話を続けた。自分の実力を伸ばすには、より強力な魔道士のもとで修行に励むしかないと。
「……その魔道士がサリアだと?」
「そうよ。あの人の実力は知っている、エルフきっての大魔道士ではなく……Sランク魔道士であることも……」
「Sランク?」
思わずその言葉に反応してしまった。サリアがSランク魔道士だと。
「どうしたの? まさか知らないわけじゃないでしょ?」
「……あぁ、そうだったな……」
知らなかった。まさかサリアがいつの間にかSランクにまで成長していたなんて。俺と初めて出会ったのが百年前なのに、その百年の月日でついにSランク魔道士にまで成長したのか。
どうりでシモーヌが憧れるわけだ。しかしサリアの性格は俺も知っている、難しい注文だな。
「ねぇ、お願いよ! あなたの協力がないと多分こんな願い簡単に却下される。だから……」
シモーヌはさらに頭を下げた。仕方ない、ここで断っても面倒だ。
「わかったよ。やるだけやってみる、だが……あまり期待するな」
「ありがとう!!」
また小難しい仕事を増やされたな。まぁサリアのことだ、あっさり断るだろう。俺は言われたことをするだけだ。
*
ナイトウルフの群れを退けた俺達は無事に『ルセンの村』まで戻って来た。避難してきた村民達も少しずつ戻ってきている、負傷者がいなかったのはよかった。
「本当にありがとうございます。これは報酬となります、ぜひお受け取りください」
村長の自宅に招かれた俺は、ありったけのお礼をいただいた。金貨百枚か。また大金持ちになったな。
「こんなにいいのか? 村の財政に影響しないか?」
「お気になさらずに。実はこの村、緊急事態発生の際は、今朝のように冒険者に緊急召集をかけることはザラにあります」
シモーヌが言うには、過去にも『ルセンの村』は魔物の大群が押し寄せたことがある。決して珍しいことではなく、村の防衛対策として、ギルドに登録した冒険者をいつでも招集できるよう、予め多額の報酬を金庫の中に用意してあるんだという。こうしておけば、討伐した冒険者達にすぐにお礼を出せる。
「なるほど。どうりで避難が早いはずだ……」
「あぁ、そういえば……あなた方を探している冒険者が来てましたよ。斧使いと剣士の男二人ですが……お知り合いですか?」
ローガンとスネイルか。あの二人もやはり来ていたな。遅すぎだがな。シモーヌも呆れた顔を見せた。
「……どうする?」
「まぁ、ほとんどあなたが倒しちゃったから……議論する必要もないと思うけど、会うだけ会いましょうか」
その時、部屋のドアが開く音がした。振り向くと、奴らがいた。噂をすれば影か。
「あ、あら……あなた達も来てたの?」
「来てたの、じゃねえよ! なんでお前達が俺達より早く到着した!?」
入るなり怒鳴ることもないだろ。村長が思わずビビっているじゃないか。
「……すまねぇ、村長。これは俺達だけの問題でな」
「それはそうと、ナイトウルフの群れはどこに消えたんだ? せっかく駆け付けたってのに、影も形もないじゃないか」
ローガンの言葉に思わず呆れてしまった。シモーヌは思わず笑ってる。
「何言ってんのよ? あなた達が来るのが遅すぎるだけでしょ、とっくにゴーイチが退治したのよ!」
「なんだと!? 確かにお前達が来るのが早かったかもしれないが、それでも報告によればナイトウルフは五百はくだらない数だったそうだ。それを……たった一人で?」
「まぁそうだけど……正確には俺が倒したのは二百くらいかな。そのくらい倒したら、奴ら恐れをなしたのか山奥へ引き返していったんだ」
「…………」
「あの……嘘ではありません。現に村の精鋭たちが、山中で倒れたナイトウルフの死骸の山を発見してまして」
村長もフォローしてくれけど、スネイル達は納得がいかない様子だ。
「あのな。あれだけの数のナイトウルフを一網打尽にするには、何か強力な攻撃魔法でもない限り無理な話だ。お前は魔道士だったのか?」
「いや、俺は狩人だよ。ありったけの小石を投擲して倒した、それだけだ」
もちろん狩人じゃないが、魔法は使えないのは同じだ。やっぱりスネイル達は腑に落ちない顔だ。
「……まぁ、いい。メンバーカードを見せてもらおうか」
「は? なんでメンバーカードを見せないといけない?」
「とぼけるな! 討伐の証拠を見せろってことだよ!」
「討伐の……証拠?」
いつもご覧いただき誠にありがとうございます!毎日ご覧になっている読者様には心から感謝いたします。
この作品が気に入ってくださった方は高評価、ブックマークお願いします。コメントや感想もお待ちしております。またツイッターも開設しています。
https://twitter.com/rodosflyman




