第34話 再会
「なかなかやるじゃないの、あなた……」
一人の女戦士が森の中で、巨大な狼の獣と対峙していた。狼の身の丈は、女戦士の身長を遥かに凌駕する。
五メートルは下らないその巨体は、女戦士の攻撃魔法をいともかんたんにかわした。その身軽さ、俊敏さ、判断力の高さ、女戦士は通常の個体より明らかに強化されているとさとる。
「あなたも呪われたようね。ならば!」
しばらく狼の攻撃をかわす一方だった女戦士は距離を取り、大岩の上で止まった。精神を統一し、狙いを狼の頭部に集中させ、杖から念の波動を送った。
狼は金縛りにあったかのように硬直した。女戦士は目を閉じて、さらに強力な波動を送る。
(やはりこの狼が群れの主、それにしても強力な呪縛魂。一体誰の仕業よ……)
「ぐぎゃあああ!?」
突然狼の悲鳴が聞こえた。目を開けると、狼は消えていた。
「……なにが起きたの?」
狼は二十メートル近く後方にある岩壁に叩きつけられていた。何か強力な魔法で吹き飛ばされたのか、でも魔力はまるで感じなかった。
「おい、大丈夫か!?」
今度は男の声が聞こえた。九時の方向からだ。屈強な男の戦士が一人だけ立派な棍棒を持って近づいてきた。
「……あなたは?」
一瞬、見覚えのある顔だと思った。いや、人違いではない。身長はかなり伸びていたが、かつて出会った少年だと確信した。
そして男のほうも、女戦士の正体がわかった。
「サリア!?」
*
なんてことだよ。間違いない。あの外見はまさにそうだ。
最初遠目で見たときは、ちょっと背の高い魔道士かと思っていた。でも違った。
尖った耳でエルフだとわかる。灰色の瞳、色白の肌、そして腰まで伸びている長い金髪、白いドレスに白いロングスカート、身の丈ほどもあり先端に豪華な羽飾りをつけた長い錫杖。
頭にも緑の髪飾りをつけている。あの髪飾り、俺が精いっぱいこの世界で貯金して買ったものだ、まだつけていたなんてな。
間違いなく、サリアだ。まさかこんな場所で出会うとは、ちょっと早すぎるかな。まだ心の準備ができてない。
「……サリア……その……久しぶりだな……元気にしてたか?」
サリアはしばらく岩の上から俺を見下ろした。なんて背が高いんだ、見下ろされているから余計そう感じる。
妹のセリナも高いけど、サリアはもっと背が高い。二十年前、俺がまだ子供だったせいもあるけど、その背の高さに圧倒されて最初は怖かったけど、今でも高く感じる。
「また背が……伸びたかな?」
「…………」
じっと見つめているだけだ。なんで返事をしない。
「……誰?」
「え!?」
なんてことだ。おいおい、やめてくれよ。聞きたくもない言葉が出てきた。
「ちょっと待てよ! 誰、はないだろ!? 俺だよ、森田剛一だ! あれからこっちの世界では百年経過したってことは知ってるさ、俺の外見が変わってるのもわかる。俺の世界でも二十年は経った、この通り背が伸びた。なんなら、俺の野球術見せてやろうか?」
近くに落ちていた大き目の石を棍棒で叩きつけ、上空に放物線を描かせた。でもサリアは見ていない。なんか様子が変だな。
「……ふふ……」
「……おい、なんだよ? なんで笑って……」
「あははは!!」
突然笑い出したサリアは岩の上からジャンプして、俺の前に降り立った。やっぱり背が高い、そんなにかかとの高いサンダルを履いていなくても俺の身長より10センチくらいは高いな。
「あははは……はぁ……全然変わってないじゃん。あなたったら……」
「……からかったな……」
「一目でわかっていたわよ、ゴーイチだってね」
勘弁してくれ、せっかく再会できたってのに心臓に悪いじゃないか。でも、よかった。ちゃんと覚えてくれていたな。
「二十年ぶり……いや、百年ぶり……かな」
「……そうね……私達の世界では百年よ。長かった……」
「お前も全然変わってないじゃないか」
「……ありがとう……」
めちゃくちゃきれいな笑顔だ。またこの目で見られるだなんて、戻って来てよかった。
「……ぐ……がぁあああ!!」
「あいつか!?」
遠くからうめき声が聞こえた。この声はさっきのデカい狼の魔物だ。
案の定起き上がっている。ふらふらとだが、俺達のもとへ近づき始めた。
しぶとい奴め。せっかくの再会でいい気分に浸ってたのに、台無しだ。
「仕留め損ねたな。片付けてくる」
「ちょっと待って!」
サリアが俺の前に出てきた。
「倒しちゃダメ。この狼はフォレストガーディアン、この山のヌシよ」
「フォレストガーディアン?」
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