第33話 群れの主
飛んできたと言っても信じないだろう。だけど一人だけで探し回るのは大変だ。
「念のため聞くが、村長以外は全員この村にいないと?」
「はい、そのはずですが……なにぶん高齢者や子供が多いので、避難ができなかった者がいる可能性もあります。ですので、私がまだ去るわけには……」
「よし。シモーヌ、村長と協力して捜索に回ってくれ! 俺がナイトウルフどもを片付けてくる」
「え? そんな……一人だけじゃさすがに無茶よ! あの数を見たでしょ!?」
「数が多かろうと関係ない。それとも、俺には無理だと?」
「いや、それは……」
「避難したものの中にも精鋭たちがいます。応援に向かわせましょう」
「必要ない。それよりこの村の警護の方が優先だろ! 万が一侵入した場合に誰が迎え撃つ?」
「……確かにそうね」
備えあれば憂いなしってやつだ。シモーヌも渋々頷いた。
「……わかった、でも念には念を入れるわ。〈スーパーエンハンス〉!」
なんとシモーヌが俺に強化魔法をかけた。必要ないのにな。
「……ありがとう……」
「無茶しないでね!」
俺は〈俊足〉で一気にダッシュし北の山へ向かった。強化魔法のおかげで体が軽い。
シモーヌの好意は大事に受け止めておこう。相手の好意やプレゼント、ギフトを拒むのは失礼だ。それはスポーツの世界で嫌というほど経験したな。毎年バレンタインやクリスマスの時期になると、ファンから嫌というほどのプレゼントが送られる。それをどう処理するか迷っていたが、マネージャーの川田は言っていた。ありがたくもらっておきましょうって。
川田は元気に暮らしているかな。俺の預貯金をほぼあげたから、何不自由ない暮らしをしてくれたらそれで十分だ。幸せになってくれ。
と、考え事をしていたらいつの間にか山中まで来た。すっかり群れの中に入ったな。ナイトウルフどもが俺を捕捉したようだ。
「がるるるるるる!!」
「ぐぅおおおおおお!!」
「わおおおおおおん!!」
威嚇したり遠吠えしたりと、うるさい狼どもだ。さっさと片付けよう。
群れをなした魔物どもは、魔道士なら大範囲の攻撃魔法で一気に殲滅できる。でも俺は魔道士でもなければ、魔法も使えない。
俺ができる範囲攻撃は投球、もしくは打球の衝突による衝撃波だ。これで魔物も群れはまとめて倒せる。
ナイトウルフ程度なら、手ごろな大きさの石を群れの中心部に上から全力で投球すれば一気に片付くだろう。
でもここは山のど真ん中、俺が昔作り出した巨大クレーターがこの周辺にも出来てしまう。それはさすがにまずい。
「久々に投球練習だ!」
ここであのスキルが役に立つ。これまでかき集めた大量の小石を、右手の平の上にありったけ乗せた。
「がるるるぉおおお!!」
百頭近くの群れが一気に俺に襲い掛かり始めた。こいつら、自分同士が衝突する恐れを一切考慮しないのか、捨て身もいいとこだ。
でもそんな捨て身な攻撃も俺には通用しない。現役時代、大量の魔物に襲われた際の対処法もトレーニングで身に着けた、その成果を見せてやろう。
「スキル〈大量投石〉&〈変化球〉!!」
右手に乗せた三十近くある小石を全力で投球した。普通野球は一度の投球で一つの球しか投げれないが、俺は自己流のトレーニングで大量の球を一度に投じれる〈スキル〉を身に着けた。
それが〈大量投石〉、このスキルさえあれば五十近くの魔物の群れには対処できる。
最初に投げた小石は全てナイトウルフたちに命中、でもやっぱり敵の数が多すぎる。三十程度じゃ足りない。残りの奴らは果敢に襲い掛かり続けるが、俺のスキルの本領はこれからだ。
最初に命中した三十近くの小石は軌道を変え、後続のナイトウルフの群れに当たりだす。これがスキル〈変化球〉、文字通り投げた小石の軌道を変化させるスキルだ。
変化球と言えば、野球の投手の得意分野、俺はそれを大量の小石でも可能になった。改めて現役時代の猛トレーニングがここまで生かせるとは、驚きだ。
三十近くの小石で、だいたいその三倍ほどの数はこの変化球でも倒せる。しかし投げた小石は、ナイトウルフに衝突するたびに速度と威力が落ちていくから、これで倒せるのは百頭近くが限界だ。
「第二セットいくか!」
もう一度大量の小石を投げた。やはりさっきと同じように〈大量投石〉と〈変化球〉の重ねがけスキルで、またも百頭近く殲滅できた。
だけど、これでようやく半分と言ったところか。かなり数を減らしたが、それでもまだ百メートル先に群れが見える。
こうなったら全滅させるまで付き合ってやろう。しかしさすがに手持ちの石が減り始めたな。
俺は最初に投げた小石を拾い集めようとした。
「なんだ?」
突然群れの動きに変化が見られた。なんと先頭にいたナイトウルフが後退し始めた。後ろの奴らもそれに続いた。
どういうことだ、さっきまで果敢に攻めてきたのに。もしかして恐れをなしたというのか。
それならそれでかまわない。これで終わりか、と思ったらその直後に異様な気配を感じた。
「でかい!? ナイトウルフ……じゃないな」
巨大で不気味な魔物の気配を群れの向こうから感じた。先頭にいたナイトウルフが向かっている先から感じる。
そうか。やっとわかった、どうして夜行性のナイトウルフがこんな朝早くから動き出したのか。
「すべての元凶は……その魔物だ」
おそらくこの巨大な気の持ち主が、ナイトウルフの群れを率いている主なんだ。
妙に統率が取れていたのは、そのせいか。これは誘い込もうとしているんだな、奴らは俺を群れの主のもとへ案内しているようだ。
上等だ。その群れの主とやら、俺が倒してやる。
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