第30話 緊急討伐依頼発生
何を言い出すかと思ったらかなり強引な方法だ。だけどあいつがどかないと、セリナも実家に帰れない。仕方ない。
「お? なんだ……ゴーイチ、やっぱりやる気か?」
俺はスネイルの前に立った。スネイルの背後はがら空きだ。一瞬で気絶させられるだろう。
いや、俺は何を考えてんだ。なんでシモーヌの言うことをまじめに聞く必要がある。そもそも俺はパーティーを組もうなんて微塵にも考えていなかった男だ。ちょうどいい機会だ。
「なぁ、スネイル。そこをどかないと、ほかの客も通れないだろ。最悪セリナだけでも通して……」
ジリリリリリリリリリリリリ!!
俺がセリナを指差そうとしたその時、どこからか変な警報音がなった。
「緊急討伐依頼発生! 緊急討伐依頼発生! 南西の『ルセンの村』の村長よりナイトウルフの大群の目撃情報を確認、村に向かって押し寄せているもよう。手の空いた冒険者達はただちに『ルセンの村』に向かってください! 繰り返します……」
「なんだ今の? 緊急討伐?」
「文字通りの意味よ。緊急で今すぐ片付けないといけない依頼が発生した場合に、あんな風に放送で呼びかけるの」
そんなシステムあったのか。いや、二十年前に一度だけ聞いたことあるか。忘れてた。
「ナイトウルフの大群? なんでこんな朝っぱらから? あいつら夜行性だぞ!」
「見間違いじゃないのか。それにしても『ルセンの村』か、けっこう離れてるな」
「……ちっ、シモーヌ。この件はまた後で話しあおう。ローガン行くぞ!」
ひとまずスネイルがどいてくれてよかった。いや、安心するのはまだ早いな。
「ちょっと待ちなさい、スネイル!!」
シモーヌが突然呼びかけた。こんな時に何考えてる。
「ちょうどいい機会よ、スネイル。あなた達二人と、私とゴーイチで勝負よ!」
「はぁ? いきなり何言い出すんだ!?」
「勝負!? 今そんな悠長なことしてる場合じゃないだろ?」
「そういう意味じゃないわ。ナイトウルフの討伐数で競うのよ!」
「……なに?」
シモーヌは続けた。要は、シモーヌと俺のパーティー『竜の狩人』と、スネイルとローガンのパーティー『白銀の王狼』でナイトウルフの討伐数を競って、数の多さで勝負するというものだ。
「私達のパーティーが勝ったら、遠慮なく私の離脱申請を受諾してもらうわよ!」
「……お前、本気か?」
「本気よ。あんたたちが勝ったら、またそっちのパーティーに戻るわ。それでいいでしょ?」
「…………」
まさか討伐数の多さで競い合って、パーティー離脱の件を解決させようとするだなんてな。シモーヌめ、昨日のギルドといいやっぱりかなりのやり手だ。
「あぁ、わかった! 受けてやるよ!」
スネイルはあっさり了承した。
「約束だぞ! 俺達が勝ったら、お前は『白銀の王狼』に戻れ!」
「あなたこそ、私達が勝ったら、私を『白銀の王狼』から離脱させてね」
「言ったな……あぁ、受けてやる!! ローガン、最速の馬を借りに行くぞ!」
「あぁ、ちょっと待て!」
スネイルが全速力で宿を出ていった。あの様子だと絶対に勝ちに行く気だな。ご丁寧に最速の馬を借りに行くとまで言い残して。
「……全く……いい加減思ったことをいきなり口に出すのやめてくれないか……」
「ごめんなさい。でもあれ以外にいい方法思いつかなくて……」
「なんだか、大変な騒ぎになりましたな……」
「ゴーイチさん、あの……」
「セリナ、すまなかったな。緊急討伐依頼とはついてない、本当は一刻も早く戻りたいんだが……」
「いえ、私のことは大丈夫です。それよりも私にもお手伝いができればと……」
「おいおい、セリナは今から実家に帰らないといけないんだろ?」
「で、ですが……万が一けが人が大勢出たら……わたし、治癒魔法は得意です」
「また一昨日みたいにぶっ倒れても知らんぞ。こっちのことは俺達だけで対処する。心配するな」
「……すみません……」
まいったな。セリナは正義感が強すぎる、やっぱ姉譲りの性格か。
「それにけが人が出るとは限らない。奴らが村に到着する前に、全て片付ければいいことだ」
「ちょっと……随分自信満々ね」
「おいおい、あいつらに勝負吹っ掛けておきながら、お前が弱気になってどうすんだ?」
「……そうね。わかった、あなたを信じる! じゃあ村に行きましょう!」
俺とシモーヌは宿を出た。スネイルとローガンの姿は見かけない。恐らくどこかの厩舎で馬を借りているのだ。
『ルセンの村』とは懐かしい地名だ。100年経過した今でも存在していたとは。俺は二十年前、ギルドの依頼関連やトレーニングついでによく訪れていた。
さっきの放送通り、方角はここから南西にある。距離は約30km、スネイルたちが最速の馬を借りたとして、時速60kmくらいと予測できるから約三十分で着ける計算か。
あいつらで三十分かかるのか。でも俺にはとっておきのスキルがある、短時間で遠くまで移動できるとっておきのスキルがな。これは現役時代のトレーニング中に身に着けたスキルで、二十年前の俺には使えなかった。つまりこの世界で試すのは初めてになる。ちょっとドキドキしてきた。
「バッカス、ちょっと頼みがあるんだが……」
「え? その二つですが……」
「ないかな? 実はその二つがあれば、『ルセンの村』まで一瞬で行けるんだ」
「一瞬で?……本当なんですか?」
「まぁ、俺を信じろとしか言えんが。ないなら別にかまわない」
「いえ、確かピッタリな物が倉庫にあったと思います。ちょっとお待ちください」
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