第3話 最強メジャーリーガーのステータスは?
俺は黙って頷いて入口のドアを開けた。
ドアを開けて外の空気を吸い込んだ。元いた世界より数段、澄んだ綺麗な空気が肺に入ってくる。
シーズンオフにキャンプで過ごす以外はずっと都会暮らしだった俺の心身を、一瞬で癒してくれる。やっぱり俺にはこっちの世界の空気が似合う。
思えば二十年前の十歳の時に俺は初めてこの世界を訪れた。当時の俺にはいつの間にか異世界に転移され、わけがわからず途方にくれたものだ。
その時に現れたさっきの女神に、いろいろとアドバイスをもらってこの異世界を旅することにした。初めての異世界の旅は楽しかった。
でも俺は戻らなければいけなくなった。一年もいなくなったことで、家族や友人が心配している。
それだけじゃない、地球には俺を必要としている人間がたくさんいた。俺は子供の頃から野球一筋で頑張って来た。
今でこそ史上最強のメジャーリーガーと言われるようになったが、実は子供の頃からその活躍はエース級だった。
大昔に大活躍したという二刀流のメジャーリーガーの再来とも言われ、投打ともに目覚ましいほどの活躍を見せ、小学生だというのにプロのスカウトが訪れるくらいだった。
そして異世界生活を楽しんでいた俺は正直野球が好きだったから、少しだけ地球が恋しくなって戻ることにした。
それから二十年、野球の世界で日本、アメリカとわたり目覚ましいほどの活躍と成績を残した。
もう思い残すことはなくなった俺は、残りの人生をこの異世界で過ごすことに決めた。大好きなサリアのために。
「サリア……俺が初めて出会ったこの世界での女性」
彼女はまだ俺のことを覚えているはずだ。地球では二十年、こっちの世界ではもう百年も経ったのか。今いる場所は森の中、歩いているが確かに二十年前と変わらない風景だ。
いや、こっちの世界では百年だな。だけど今のところ、以前と大きく変わった様子はない。
すると、俺は突然あるものが目に入り止まった。
「あのクレーターは!?」
左前方の木々の向こうに、何やら巨大なクレーターらしきものが見えた。走って近づいてみたが、やっぱり間違いない。
直径百メートル以上はあるな。なんて巨大なクレーターだ、隕石でも落下したのか。
「いや……違うな。俺が残したんだっけ……」
思い出した。この地形は見覚えある。クレーターの向こうにある小さい湖があるのが目印だ。
このクレーターは俺が二十年前に残したものだ。確か初めて異世界を訪れ途方に暮れている最中に凶悪な魔物が出てきて、パニックになった俺が全力で投げたボールで出来たんだ。
その威力はすさまじく、魔物を倒すだけじゃなく、森の地形を大きく変えてしまうほどだった。
「……懐かしいな。確か付き添いの冒険者から、お前は異常者だって言われたっけ」
野球一筋だった俺の最強の対抗手段が、投球だ。野球道具はあったから、構わず手にしていた硬球をその魔物全力で投じたんだ。
だけどあそこまでの威力になるだなんて。女神が言うには、こっちの世界では俺の能力は10倍以上にまで跳ね上がるらしい。
僅か十歳で150キロ近い速球を投げていた俺だ。150キロの速球、こっちの世界では、それが10倍以上の威力と速さになる。
どういう原理かわからないけれど、とにかく俺は野球で培った技術とパワーで、異世界の魔物にも対抗できた。だからこそ、十歳の時でも異世界を楽しく冒険できた。
俺の今の強さ、どのくらいなんだろうか。それを調べる方法はアレしかない。
「久しぶりに見るか、ステータスオープン!」
異世界転生だとこの言葉はお決まりの定型句らしい。二十年前に女神から「ステータスオープン」を教えてもらった。
これまたどういう原理かわからないけど、俺のあらゆる能力が数値化された便利な画面が見られる。あれから二十年たったが、どういう数値になっているかな。
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森田剛一
レベル:測定不能
攻撃力:S
体力:S
防御:S
素早さ:S
回避:S
器用さ:S
魔力:S
魔法防御力:S
状態異常耐性:S
スキル:一覧表示▼
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そういえば思い出した。この世界のステータスは数値じゃなかった、レベル以外はFからSまでのアルファベットでランク分けされるんだった。
俺の全ステータスはS、二十年前最後に見た時も、確かこんな感じだった。
そして気になるレベルだが、これはよく覚えている。百年前見た時と同じだ。
一番最初に見たときは、俺のレベルは年齢と同じで10だった。だけど10だった数値は、一年という猛特訓のおかげで飛躍的に伸びてあっという間に上限を超えたんだっけ。
この話を周りの冒険者にしても、誰も信じてもらえなかった。当然だ。この世界でレベルが『測定不能』なんて表示されるのは、俺だけなんだから。
これだけのステータスなら、二度目の異世界も余裕で生活できそうだ。だけどこれはあくまで数値上の話、本当に下がっていないかどうか、やっぱり実際に確かめないとな
「ちょっと試してみるか、この小石で」
その場に転がっていた小石を拾って、遠くにあった岩壁に向けて投げた。
ドォオオオオオオン!!
凄まじい衝撃音だ。そして砂埃が舞って何も見えなくなった。
「ステータスの低下具合を見たかったんだけど、相変わらず加減がムズイな……」
俺が心配するほどじゃなかったかも。岩壁には巨大な窪みが出来ていた。また地形を変えてしまったのか。
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