第23話 ギルドマスターの権限
耳を疑った。なんであっさり了承する。
「正気か、お前? リーダーの交代だぞ! スネイルの了承とらなくていいのか?」
「スネイルにはあとで私が説得しておくわ。だからいいの!」
滅茶苦茶な女だ、何考えてるんだ。こんなのスネイルが了承するとは思えない。
「いいから、私を信じて。じゃあ、エンリケと話付けてくる。待ってて」
「……一体どうしたんだ? 何か打ち合わせでもしていたようだが……」
「ご心配なく、マスター。今後は私が彼の代理人として、話を進めさせてもらいます」
「シモーヌが? ゴーイチの代理人とはどういうことだね?」
「さっきも言いましたが、私は今日付けでゴーイチとパーティーを組ませてもらいます」
「なに? いや、でも……本人は反対していたが……」
「気が変わったんだ。今日付けで、彼女とパーティーを組ませてもらう」
俺のあっさりした答えにエンリケも呆気にとられたようだ。そりゃそうなるか。
さて、問題はここからだが。果たしてうまくいくのか。
「彼とパーティーを組んだので、代わりに私のメンバーカードをご提示します。これなら問題ないでしょう?」
「……ははは! そういうことか、シモーヌ! 君はなんてやり手だ!」
エンリケもシモーヌの意図に気付いたようだ。
シモーヌの作戦というのは、俺と一緒にパーティーを組めば、代わりにシモーヌのメンバーカードで提示して報酬を受け取れるということだ。
冒険者同士はパーティーを組んで依頼を片付け、ギルドで報告し報酬をもらうというのが通例だ。この時メンバーカードを提示するのは、パーティー内の誰か一人でいい。
だけどパーティーを組んでない俺は、ほかに誰かに委任することはできない。俺だけのメンバーカードでないと当然無理だ。
そこでシモーヌの出番だ。シモーヌが俺とパーティーを組めば、彼女が代表としてメンバーカードを提示すればいい。
無理矢理な作戦だけど、現状はこうするしかないようだ。
「だめだ!」
「……え?」
エンリケがばっさり断った。まさかの失敗か。
「シモーヌ、お前のメンバーカードをよく見ろ」
「これは新式ですよ! 更新もこの前やったばかりじゃないですか!」
「そういう意味じゃない。パーティーメンバーのリストが裏面に記載されているだろ」
「…………」
メンバーカードの裏面には、自分とパーティーを組んでいるほかのメンバーの名簿リストが載っている。
しまった。俺とシモーヌはさっき口約束で組むって言っただけ。当然俺の名前なんて載っていない。
「ゴーイチの名前が記載されていれば当然受けよう。しかしないだろ?」
「……はい……」
呆れた。まさかそんなこと想定してないわけじゃないだろ。
「でも、今から加入申請をすれば問題ないはずでは?」
先にそれを言えよ。しかしエンリケはなぜか神妙な面持ちだ。
「あの……それにはゴーイチさんが有効なメンバーカードを持っていることが条件です。旧式のカードでは恐らくダメかと……マスター」
「そ、そんな……」
代わりにファティマが説明してくれた。雲行きが怪しいな。さすがにシモーヌでも、お手上げか。
「……いや、いいだろう」
「……え?」
「ファティマ、ギルドのルールガイドブックを開いてくれ」
エンリケは何が言いたいんだ。ファティマがカウンターの隅に置いてあった本を開いて確認した。
「第三十九条にこう書いてあるな。『ルールガイドブックに記載のない例外的な事象が発生した場合、ギルドマスターの独断で判決する』
「はい、そうありますが……」
「要するに今回の場合、メンバーの加入申請に関しての例外的な事象だ。本来、加入させたいメンバーは有効なメンバーカードを持っていることが条件だ」
「えぇ、でもゴーイチさんのカードは旧式で使えないんでしょう?」
「それが今回の例外的な事象に該当する。つまり……」
「あ? ということは……」
「俺の独断で決める、ということだ」
「えぇ? そんなのアリなんですか?」
なんか凄いことになったな。受付嬢ですら目を丸くしている。ということは、本当にこんな事象は滅多にないってことだ。
「安心しろ。ゴーイチの加入申請は許可してやる」
「ほ、本当ですか!?」
よかった。見た目はけっこう頭の固そうなジジイなのに、意外とふところが深い人間なんだな。
「ただし、一つだけ条件がある!」
「じょ、条件……?」
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