第22話 シモーヌの提案
「こ、これは……!?」
ゴーイチからもらったメンバーカードを特殊な装置に入れたエンリケは、液晶の画面に表示された内容を見て驚愕した。
彼が操作しているのは、メンバーカードの更新装置、そのメンバーカードが有効なものであるかどうかを示す。犯罪歴や過去に討伐された魔物の討伐履歴も表示される。
魔物の討伐履歴は、その冒険者がその魔物を討伐した時点で自動で記録される仕組みになっている。今エンリケが見ているのは、ゴーイチの過去の討伐履歴だ。
「邪竜……ディンフォース……だと?」
エンリケが目の錯覚ではないかと思ったが、そうではない。あるいは機械の故障ではないかと思って、何度かカードを抜き差ししたが表示される内容は変わらない。一番最新の討伐履歴が一番上に表示されるが、何度見ても一番上にはこう表示される。
『邪竜ディンフォース討伐 王国歴1025年 七の月』
「……こいつは……とんでもないことになったな」
しばらく熟考したエンリケは、ゴーイチのメンバーカードを装置から抜いて部屋の奥へ進んだ。そこにある自分の事務机の下に置かれていた金庫の扉を開け、メンバーカードをしまった。
*
お、どうやら終わったようだな。
ファティマも奥の部屋から出てきたのを見て、俺はカウンターへ足を運んだ。
「ゴーイチ様、お待たせしました。こちらゴーイチ様がお持ちになったヤドゥークリ草の鑑定額になります。お確かめください」
「こ、これは……!?」
ファティマが持っていた一辺二十センチの木箱の中に金貨がどっさり積まれている。
一束が五十枚、それが三束ある。つまり合計で百五十枚。
金貨百五十枚、なんて量だ。さっきバッカスからもらった五十枚と合わせてもう金持ち状態だ。これならしばらく異世界での生活も困らないな。
「おい……なんだよあの量は!?」
「すげえ……あんな量見たことねえ」
後ろから冒険者の反応が聞こえる。まずい、これじゃ目立つな。
「すまない、蓋はないか?」
「えぇ、ありますよ。これでどうです?」
「……どうも」
俺は即座に木箱の蓋をしめた。これで中身は見られない、というか最初に渡す時点で蓋をしめてくれる配慮とかしてくれればいいのに。
「あの……ところでメンバーカードは?」
「あぁ、それなら大丈夫。さっきエンリケに渡した。もうすぐ更新が終わるはずだ」
「更新? 即日発行してもらったんですか?」
「そうだけどエンリケはギルドマスターなんだろ? そのくらい可能……あ?」
エンリケがもう片方の奥の部屋から出てきた。でもどういうことだ。カードを持っていない。
「……おい、どういうことだ? 更新したんじゃないのか?」
「すまない、ゴーイチ。それなんだが、問題が起きた」
「問題たと?」
一体ここで何を言い出すんだ。なぜだか嫌な予感がした。
「更新が……今はできない」
「は? 何を言い出すんだ。さっき金貨一枚渡しただろ?」
「もちろん金貨は返すよ。ただ……別のトラブルが起きてね」
「別のトラブル?」
「機械の故障だ」
機械の故障だと。わけがわからないな。
ファティマが代わりに説明してくれた。メンバーカードは特殊な装置で行うようになっている。そしてその装置が故障した際には、専門の技師が行うようになっている。
しかし今その技師が不在とのこと。となると、どうすればいいんだ。
「……ということだ。残念だが、最低あと二日は待ってくれないと」
「二日? さっき一日かかるって言ったじゃないか?」
「実は専門の技師が今休暇中なんでな。戻るのが二日後なんだ」
「……代わりの奴とかいないのか?」
「別のギルドからよこすわけにもいかない。どこのギルドも人手不足なんだ」
ここにきて、俺はなんて運が悪い男だ。せっかく異世界に二十年ぶりに訪れたのに。
だけど、たかがメンバーカードの更新が遅れるくらいだ。ここは我慢するか。
「ちょっとお待ちを!」
後ろから女性の声が聞こえた。まさかと思い振り返るとやっぱり彼女だ。
「シモーヌか。一体何のつもりだ?」
「聞きましたよ。なんでも機械のトラブルでメンバーカードの更新ができないんですって?」
この女、盗み聞きしていたのか。いや、魔道士だから聴覚強化のスキル系を使ったのかもしれないな。
シモーヌはにっこり微笑んだ。私に任せてと顔で言っている。
「さっきも言いましたが、私は彼を……」
「ちょ、ちょっと待て!」
俺はシモーヌの言葉を慌てて制止した。
「何度も言わせるな。俺はパーティーを組まないって」
「あら? せっかく私が助け舟を出してあげるってのに、拒否するの?」
「助け舟だと?」
意味わからないことを言い出す。シモーヌは不敵な笑みを浮かべた。
「あなたはヤドゥークリ草の報酬が欲しいんでしょ? でもメンバーカードが更新できず、それが受け取れない」
「……そうだが……お前がどう助けるって言うんだ?」
「わからない? あのね……」
ここでシモーヌがこそこそと俺に耳打ちした。耳を疑う内容が聞こえた。この女、何考えてやがる。
「ね? これならうまくいくでしょ?」
「ふざけんなよ。第一、それじゃ俺の取り分はどうなる?」
「安心して、取り分は全部あなたにあげるから。約束は守るわ」
「そんなこと、お前の一存で決めていいのか?」
「言っておくけど、この提案は私が言い出したんじゃないの。リーダーのスネイルなんだから」
なんだと。俺はてっきりシモーヌが勝手に話進めてるかと思っていた。
どうするべきか。ここはほかに方法もないが、簡単に決めるのも気がひける。俺は一つ条件を出した。
「……条件が一つだけある。俺を新パーティーのリーダーにしてくれ」
「え? あなたを……」
さて、この言葉でどう転ぶか。普通ならあっさり了承するとは思えない、第一本当のリーダー不在で、ホイホイ決めていい案件じゃない。
「……いいわ。その条件飲む」
「……え!?」
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