第18話 ハヴィエール卿の計らい
セリナにスネイル達のことについて話した。
「そういうことでしたらお任せください。それよりも、その……なんというかそんなことがあったなんて……」
「あぁ、お前の言う通りやっぱり鍾乳洞はかなり危険な場所になっていたようだ」
「でも、ゴーイチったら凄いのよ。あの鎧の魔物、いとも簡単に倒したんだから」
「え? あの鎧の魔物を倒したんですか!?」
「まぁ手ごわかったが、俺のバットの敵じゃないな」
「バット?」
「いや、なんでもない」
いかん、うっかり野球用語を出してしまった。この異世界にはバットどころか野球すら存在しないんだ、まだ現役時代の感覚は抜けないな。
「それよりもさ、あなたセリナって名前? ということは……まさか?」
「あの……私は……」
何やらシモーヌが真剣なまなざしでセリナを見ている。
「本名は……セリナ・フォン・ハヴィエール……?」
「……はい……」
やはりシモーヌも知っていたか。かしこまって頭を下げた。気づくのが遅いんじゃないか。
「今まで大変ご無礼な態度で接してしまい、大変申し訳ございません!」
「そんな。とんでもない、頭を上げてください」
「……その……お気分を害されてはいませんでしょうか? 本来なら私の仲間の治療を頼むなど、公爵家の方にお頼みするのはお心苦しいかと思いまして……」
「いいえ、人助けは私の専門分野ですから大丈夫ですよ。それより、あなたの仲間が泊っている宿まで案内してもらえませんか?」
「あ……ありがとうございます!」
セリナもだいぶ心が広いようで助かった。それから二人は部屋を後にした。
「なにはともあれ、これで特効薬が作れますな。ゴーイチ殿、あなたにはなんとお礼を言ったらよいか……」
「気にするな、当然のことをしたまでだ」
「あの……セリナ様に代わって、私からお礼をさせてください」
「これは……いいのかよ?」
なんと亭主のバッカスが五十枚相当の金貨を差し出した。五十枚の金貨、一枚当たりの金貨で俺の世界でいう十万円近くの価値がある。つまり五百万円か。
「よせよ。俺と彼女の姉のサリアとは旧友の仲なんだ。その知人の肉親を助けるために一仕事しただけで……」
「いえいえ、それでは私の気がおさまりませぬ。実はここだけの話なんですが、私が経営する宿がここまで長続きしているのも、ひとえにハヴィエール卿の支えがあってこその話であります」
バッカスから意外な話しが出てきた。でもそれには理由がある。
二十年前、俺がよく利用していた宿がこの『花鳥の集会所』だ。そして俺と唯一のパーティーを組んだのが、ほかでもないサリアだった。
本来なら由緒あるハヴィエール公爵家の人間が、下界の民の町の宿に泊まるなどもってのほからしい。でもこの宿だけは違った。サリアが利用できたのは、ほかならぬ初代亭主のビッグスのおかげだ。
ビッグスはハヴィエール卿と面識があったのだ。正確には、ビッグスがハヴィエール邸宅の執事として働いていたらしい。その計らいがあってこそ経営がうまくいっていたのだろう。ビッグス自身はその話をしなかったが、のちにハヴィエール邸宅に赴いた際にその話を聞いた。
「気持ちはありがたいけどよ、まだ特効薬を作ったわけじゃないし、ましてやハヴィエール卿が完治したわけでもない。お礼を渡すのは早すぎるんじゃないか」
「ですが……ヤドゥークリ草を持って帰ったのは事実ですし……」
「じゃあこうしよう。前金で半分受け取っておく。残りはあとだ」
「……わかりました」
俺はバッカスからいただいた金貨の半分だけもらった。
よく考えたら俺はこの世界に来たばかりで金がないんだった。ありがたく受け取っておこう。
「ゴーイチ殿はこれからどうされるおつもりで?」
「……そうだな。俺は……いったんセリナが戻るのを待つか」
俺が次に行く場所は決まっている。サリアがいる場所だ。といっても、正確にはハヴィエール邸宅になるのだが、この町にはない。
かなり離れた場所にある。見当はついているが、さすがにここから飛んで行ける距離じゃない。俺の〈ハイジャンプ〉でも限界がある。
二十年という月日で、地理については忘れている部分もある。途中までセリナに案内してもらおう。
「もしよろしければ、一度ギルドに行かれてはいかがでしょうか?」
「ギルド? いや、依頼とかは……必要ないかな」
「実はさきほどもらったヤドゥークリ草ですが、かなりの量がありまして……」
「そんなに多いか? ありったけ採取してもってきたつもりだ。というか、特効薬作るのにどれくらいの量が必要になるか知らないからな」
「実はその……葉一枚だけで十分でございます」
「なに? そんな……もっと早く言ってくれれば」
「いえいえ、もちろん多くあるのに越したことはありません。ですが、さすがにこの量は多すぎるかなと思いまして、ギルドにはヤドゥークリ草採取の依頼もあるようですから、少しだけなら持って行ってもいいだろうと思いましてね」
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