第12話 鍾乳洞へ
翌日、早朝に目を覚ました俺は軽く朝食を済ませて『キースラーの町』を出た。
『キースラーの町』からまず向かったのは、昨日俺とセリナが遭遇した森だ。
まず俺が欲しいのは新しい武器だ。木の棒程度じゃ心細い。昨夜キングオークが持っていた金属製の巨大な棍棒、アレが欲しい。
キングオークを倒した場所はどこだったろうか。昨夜は暗かったから、目印となるようなものがない。
唯一目印となるのは、俺が作った巨大クレーターくらいか。湖が近くにあるはず。
森に入って十分ほどでその湖に着いた、そしてクレーターも見つけた。デカいからすぐわかる。
昨夜はここにいてセリナの悲鳴を聞いて〈瞬足〉で移動したな。
ここからなら空から確認したほうが早い。スキル〈大ジャンプ〉で空高く浮かび上がって、森全体を見渡した。
「いた、あそこだ」
キングオークの遺体を見つけた。まだ残っていてよかった。そしてお目当ての棍棒もある。
冒険者に見つかってもよさそうだが、おそらくデカすぎる上に重量もあるから持っていけないんだろうな。
だとしたら、俺がいただこう。キングオークの遺体がある場所まで俺は走った。
「相変わらずデカいな、それに重い」
間近で見たが、やはりキングオークの棍棒はデカい。だいたい三メートルくらいある。そして重さも半端ない、かるく1トン以上はあるな。
別に重さは問題ないが、やはりこれだけのサイズとなると目立ちすぎる。手ごろなサイズにカットする必要がある。
しかしこの棍棒の頑丈さじゃ剣程度で斬れないだろう。金属製ということもあるが、この独特な光沢具合、昨夜だとわからなかったがミスリル製か。
ミスリル製の棍棒とは、なかなかいい武器を持っている。さすがキングオークだ。
どうやってカットするか、普通この手の武器の破壊には魔法を併用する必要がある。でも俺には剣や魔法より強力な武器がある。
「この木がいいな。よし、棍棒をここに立てて……」
棍棒の柄の部分を地面に突き刺し、ちょうど先端部分を木の幹に立てかけた。
俺は棍棒から約十メートルほど距離をとり、森の中で拾った拳大の石を握りしめた。
この大きさの石ならいけるだろう。棍棒のサイズは約三メートル、俺にちょうどよいサイズは約一メートルだ。
木の幹がバッターだと仮定するなら、狙いはインローだ。俺は投球モーションに入り、スキル〈剛速球〉と同時に石を棍棒めがけて投じた。
バキィイイイイイイイン!!
巨大な爆発音が響いて、四方八方に棍棒の破片が飛び散った。棍棒を立てかけた木の幹も吹っ飛んだ。
「やりすぎたか? いや……大丈夫か」
不安になって間近で確認したが、どうやらちょうど狙い通りの場所に着弾した。棍棒はほぼ真っ二つに分かれ、俺にとって手ごろなサイズの棍棒として生まれ変わった。
どんなに頑丈な金属だろうと、スキル〈剛速球〉で石を速度十倍で投じれば、この通り粉砕できる。
狙いもばっちり。現役時代、球の速さだけじゃなくその正確無比なコントロールも俺の武器だった。
「さて武器も調達したし鍾乳洞へ……!?」
その時、一瞬だが異様な殺気を遠くから感じた。
四方を見回したが、誰もいない。
誰かがつけているのか。もしかしたらこのキングオークの戦利品を盗もうと企んでいた冒険者か盗賊の一派かもしれない。
「……今はいいか。ひとまず鍾乳洞へ向かおう」
南に100メートルほど移動して、鍾乳洞の入口に着いた。すると、入り口の右側の大きな壁の三メートルほど上部にある円形の窪みが目に入った。
「あの窪みは……まさか……」
二十年前の記憶が脳裏に浮かびあがる。
この鍾乳洞は二十年前に俺が野球の練習のためによく訪れていたんだっけ。あの大きな窪みも俺が作ったやつだ。
懐かしいな。初めて訪れた時はこの真っ暗な洞穴を見て、怖がったものだ。まだ十歳だっというのもあるけど、本当に憶病だったんだな。
振り返ると、恥ずかしい。そんな俺でも地球では史上最強のメジャーリーガーになれた、人間変われるもんだな。
だけどゆっくり思い出に浸るのもよそう。今はこの鍾乳洞を抜け、その先にある森にまで行くことが先決だ。
「……マップの構造も変わっていないようだ」
鍾乳洞内は暗かったが、そこはセリナからもらった特殊な魔法道具が活躍してくれた。
蛍光珠輪、首からかけるネックレスのアクセサリーで、これがあるおかげで明るさに困らない。
しばらく進むと、所々壁が大きく窪んだ場所に出た。ここは俺が投球練習をしていた場所だ。
当時野球の練習に最適な場所として選んだのがここだ。ここの鍾乳洞は魔物退治もさることながら、壁の強度が高いから、投球練習には最適だった。
ここで磨き上げた剛速球スキルが、俺を史上最強のメジャーリーガーに導いてくれた。なんだかんだでこの鍾乳洞にはお世話になったな。
「今のは!?」
感傷にふけっていたが、突然異様な気を感じた。鍾乳洞の奥から感じた。
一瞬だけだったが、かなり巨大な魔物の気だ。セリナの言う通り、かなりヤバい奴がいそうだ。
腰からぶら下げているポーチの中に大量の小石があるのを再確認し、俺は奥へ突き進んだ。
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