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史上最強のメジャーリーガーは引退後は二度目の異世界で自由なスローライフを送りたい  作者: 葵彗星


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第11話 はやり病

 その話を聞いて俺も高校時代を思い出した。甲子園常連校に入学した俺は、当然野球部に入ったが、いつの日も先輩や顧問から聞かされるのは甲子園常連校としてのプライドと矜持だ。


「お前達は栄えある甲子園常連校に入学できた。その名に恥じぬプレイを見せつけろ! そのために日々練習に励め!」


 いまだに昔の軍国主義のような頭の固い連中が指揮してるのかと、辟易していた。俺は楽しく野球をやりたかっただけだ。

 セリナもそんな俺と似たような境遇なのか。由緒ある家系に生まれても、楽して人生を送れるとは限らないのか。


「……どうされました、ゴーイチ様?」

「あぁ、いや……セリナはどうして鍾乳洞まで行ってた?」

「おぉ、その件ですな。さっきも言いかけましたが、実は“魔怨”が流行しておりまして……」


 聞いたことがない言葉が出てきて、一瞬あっけにとられた。“魔怨”ってなんだ。

 だがここは迂闊に聞くな。あまりに疎いようだと、現地人じゃないと疑われる。


「その病の特効薬の原料となる植物が、その鍾乳洞を抜けた先の盆地に生息しているらしいのです。セリナ様はおそらくそれを採取しに向かわれたのでしょう」

「……そうだったのか。それは大変だ」

「大変だ、の一言で済めばまだいいんですが、その……病にかかってるのが……」

「私の……祖父です……」


 突然セリナが声を出した。だがとんでもないことを知ってしまった。


「無理してしゃべるな……って、今なんだって!?」

「セリナ様……実は……ご病気なのはセリナ様の祖父のハヴィエール卿なのです」


 なんでことだ。どうりで無茶をするわけだ。


 亭主が言うには、元々“魔怨まえん”は国外の小さな地域で流行っていた病気らしい。それがここ数年の間に、俺達がいるこのツバルシオン王国にも流行しだした。

 ここから東にあるサドンクリフ地方の港町で、国内で最初の感染例が出たらしい。そこから急速に感染が広まり出し、抵抗力の低い子供や老人を中心に感染者が増えている。


 セリナの祖父グラシオ・フォン・ハヴィエール公爵は3000年を超える年齢だ。エルフは長寿種族で、人間よりも長く数千年は生きられる。

 そのエルフでもやはり高齢になると人間と同様、抵抗力が下がる。ある意味当然と言えるが、エルフならではの事情もある。


「エルフは長い間、森や山など、自然が多い場所でひっそり静かに暮らしていた種族です。その種族としての特質や血統は長い間失われることなく、代々受け継がれています。皮肉なことに、その種族としての特質が、外来からの病原菌に対する抵抗力の低下を招いているわけです」

「なるほどな。人間以上にウイルスに過敏になるわけか」

「う、ウイルス……なんですかそれは?」

「いや、なんでもない。気にしないでくれ」


 うっかり地球の知識をひけらかしてしまった。俺のいた世界でも、数年前にウイルスによる感染症が広まったからな。他人事じゃない。


「いずれにせよ、その植物があれば特効薬は作れるんだな。じゃあ、セリナ。持ってるなら貸してくれないか?」

「……いえ、それが……」

「どうされました? もしかして……なかったのですか!?」


 亭主の問いにセリナは首を振った。


「いえ、正確には鍾乳洞を突破できませんでした」

「なに? そもそも盆地にすら行けなかったのか?」

「はい、申し訳ございません」

「一体何があった? まさか迷子になったとか……」

「探索魔法なら使えます。それだけなら楽だったんですけど……」

「……やはり魔物ですか?」


 理由はそれしかないと思ったが、セリナは黙って頷いた。


「普通の魔物なら私でも倒せます。ただ、あそこの鍾乳洞にいたのは……」

「まさか、キングオーククラスの奴が出たってことか?」

「いえ、キングオークなんかより、もっと恐ろしい気が……」

「物騒なことを言うな。おい、どう思う?」

「……やはり魔物の強化も起きているのかも」

「何が言いたいんだ?」

「いえ、その……最近この町の周辺一帯に出現する魔物は妙に強化されていると、もっぱらの噂でして……」

「さっき出くわしたキングオークも、その一例です。ほかにもSランク魔物の出現も、報告されていて……」


 なんだか恐ろしい雰囲気になってきた。思えば俺が二十年前に『キースラーの町』周辺の魔物を駆逐しすぎて、ほかの冒険者の仕事を奪いすぎてると罵られたって言うのに、一体いつになったら平和になるのやら。


「なにもそんな場所まで、一人で行くことなかったろうに」

「ごめんなさい。どうしても私、一人前として認められたくて……」

「……わかった。とにかく明日すぐに家に帰るんだ、親とサリアが心配しているだろうからな」

「でも手ぶらで帰るわけには!」

「だから、俺がいるだろ?」

「……本当にお任せしてよろしいんですか?」

「俺以外に適任がいるか?」

「……いえ」


 鍾乳洞は、俺達がキングオークと遭遇した地点から南に100メートルほど移動した場所にあるらしい。

 ちょうどキングオークの棍棒も取り逃していたからな。そのついでに鍾乳洞も訪れて、特効薬の植物を採取だ。今夜はたっぷり寝て明日に備えよう。

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