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魔王軍の幹部会議で「…ふん、くだらん。」て言うやつになった  作者: 夕陽 八雲


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第4話 幹部会議

 議長の宣言により、魔王軍幹部会議が始まった。


 俺のミッションは、ここにいる幹部連中に【リオン・アウローラ】の中身が別人だとバレないようにすること。


 そのために俺は、リオン・アウローラを演じて、無事にこの会議を乗り切らなければならない。


「まずは戦況を報告してくれ。それと、君達の現状を知りたい。」


 議長…銀の鎧を身に付けた女性幹部が、この場にいる全員に語りかける。


「リオン、お前はどうだ。何か変わったことはないか?」


(――っ!)


 さっそくきた。


   いきなり確信を突かれた様な質問だったため、びっくりして心臓が跳ね上がる。


(戦況じゃなく近況なら、死にかけて中身が変わりました。)


 …と言うわけにはいかないので、変化を悟られずに何事もなかったかのように応えることにする。


 緊張を隠すため、胸の前で腕を組んでみた。


 腕組みの格好が妙にしっくりくる気がする。おそらく、この体に染み付いた癖なのだろう。


「…俺の方は何も問題はない。 いつも通りだ。」


 どういうのがいつも通りなのか知らんが、議長の質問になんとか落ちついて応える事が出来た。


 …俺は、リオンが今まで何をしていたか知らない。


 リオンの過去の記憶を見ようとしても、今はまだ記憶を全て見れるわけではないので、リオンのこれまでの行動を知ることが出来ないのだ。


 この世界の文字を読めるようになるか、知り合いの魔族についての情報など、生活に必要な最低限の記憶は見ることは出来るが、その他の記憶には(もや)がかかっているため、軽い記憶障害になった気分だ。


 リオンの過去の行動については、あとでクロエからうまく聞き出すか。


「…そうか。他のみんなはどうだ?」


 他の幹部にも報告を促す議長。


「俺の方はもちろん順調だ!我が軍団はすぐに人間軍を倒し、『南の国』を占領するだろう!ガハハハッ!」


 巨躯の魔王軍幹部が自信満々に声を上げる。


(図体でかいし、声もでかい奴だな…。)


 室内に木霊する程の大きな声で話す大男の名は、【フレイムル 】。


 燃える様な赤髪に、二メートルを越す身長と岩の様な筋肉質の巨躯を持つ魔王軍幹部の一人。


 幹部連中では一番厳つい見た目をしており、豪快な笑い方もその厳つい見た目には似合っていた 。


「…僕からも報告します。」


 ―クイッ


 フレイムルの隣の男性が、指先で自分の眼鏡を軽くクイッと押し上げる。


「現在、我ら魔王軍は世界各地に進行し、着々と人間軍を追い詰めています。」


 —クイッ


 眼鏡のブリッジに指先をあてて位置を修正しつつ、そう報告する男性の名は【グラキルス】。


 涼しい顔立ちで、魔王軍一の知能派であり、作戦参謀としての役割をしている幹部らしい。


「我々魔王軍が人間軍を殲滅し、」


 ―クイッ


「世界を手にする日は、」


 ―クイッ


「近いでしょう。」


 キリッと決め顔してそう言って眼鏡を…


 ―クイッ


(いや、眼鏡クイッしすぎだろ! )


 眼鏡のサイズが合ってないんじゃないか?


 ―クイッ クイッ クイックイックイックイッ


  (…話し終わってもめっちゃ眼鏡クイッしてるし。)


 フレイムルの前の席に座る幹部が、小さく手を上げる。


「私もお変わりはなく。 侵略した『東の島国』を統治し、魔族に従順な人間達をしっかり飼い慣らしていますわ。」


 ふふっ…と袖で口を隠して小さく笑う和服の女性。


 侵略だの従順だの飼い慣らすだの、物騒なことを言ってる彼女の名は【ヒミカ】。


 見るからに物腰が柔らかく穏やかな性格の古風な美人で、幹部の中では一番まともそうな印象だったのだが……言動からしてやばい奴なのかもしれない。


 その隣で、脚をパタパタと揺らす小さな幹部が続いて話す。


「ん~、私も変わりはないかな~。いつも楽しく遊んでるよ☆」


 えへへ と明るい笑顔でそう話す黒いドレスの少女、【メリア】。


 無邪気そうな笑顔を浮かべるその様子は、まるで学校のお友達と遊んだ話をする普通の少女の様だ。


( 可愛らしい子じゃないか。見てるだけで和むな~。)


 地獄の中で健気に咲く小さくて可憐な花を見てるような気分になる。


「この前も『西の国』でね、私を殺〇に来た騎士さんたちをみんな串刺しにしたの~。 それをお城の前に置いたら、みんなおとなしくなって、誰も遊んでくれなくなっちゃった。てへ☆」


(怖っ!! )


 何この子…。 恐ろしい子だわ!


 なんかリオンの記憶にも『要警戒人物』で覚えられてる。…気を付けよう。


 そしてその隣。伸ばした両脚を行儀悪くテーブルに乗せた幹部の番になる。


「私は、『北の国』の連中と相変わらずドンパチやってたよ。まあ、向こうが立てこもってつまんねぇから、会議に出向いたわけだ。」


 退屈そうに椅子を背中で揺らしながら、そう話す軍服の女性【イザベラ】。


 『軍神』とまで称される戦いの天才らしく、本人も戦う事が好きなあまり、手下の魔族をほっぽり出して積極的に前線に立って戦闘に参加するほどだとか。


 ちなみに、手下達からは「姉御」と呼ばれているらしい。


 その前の席に座る不気味な幹部が、モゾッと動く。


「クケケ…。僕も変わらず、 城にこもって研究していたよ。 」


 不気味に笑うクケケさん…もとい【ネヴァクルス】。


 主に魔王軍の後方支援に務め、常に城に籠って何かの研究をしているらしい。


 「ふむ、どうやら何も心配はなさそうだな。各自、己の使命に従事してるようで何よりだ。」


 幹部達の報告を満足そうに聞く議長席の幹部、【クレア 】。

 

 頭以外の全身を鎧で堅めた格好をした女性魔族。魔王軍幹部をまとめる存在であり、魔王を除けば魔王軍最強であると言われている。


 幹部達の席の位置は、長いテーブルの上座に議長であるクレアが座り、そこから左右に四つずつ席が存在する。


 各々が座る席は、議長席から見て右の列――リオン(俺)、 イザベラ、 メリア、 ヒミカ。


 左の列――欠席、ネヴァ、グラキルス、フレイムル…となっている。


 俺はクレアとイザベラの間に座る形になるのだが…、二人ともかなりの美人である。


(魔族とは言え、美人二人の間の席に座れるなんて…)


 そんな美人二人の間に座っている俺は緊張して心臓はドキドキ…


 と同時に、


(…し、しんどい)


 100%堅気じゃない二人が醸し出す、強者の気配から来る圧の様なものに当てられて、俺は緊張して胃はキリキリ…していた。


 暗い部屋の中で魔族共(やばい奴ら)に囲まれているような状況。黙って座ってるだけで体力とか精神とか、なんかいろいろ擦り減って、きつい。


 座っているだけなのに、毒を受けた状態でヒットポイントのゲージが減っていくような感じだ。


(会議早く終わってくれないかな…)


 …緊張しっぱなしで、吐きそうだ。


 それからしばらく会議は進んでいった。話を振られても、一言二言だけしかしゃべらなかったが、今のところ俺が怪しまれる事は無く進んでいる。


(このまま何事も無く閉会になればいいのだがな。)


 …と思っていたのだが。


 ―クイッ…


「…ところでフレイムルさん、イザベラさん。 貴方達はこの前の人間軍との戦い、何故私の考えた作戦を実行しなかったのですか? 」


 グラキルスが、二人の幹部を名指しして問いかける。


「…ふん、 お前の作戦が気に入らなかったからだ。」


「…何?」


 フレイムルの率直な返答に、どういう事かと視線を投げかけるグラキルス。


「私も同じだ。 お前の作戦が気に入らなかった。 あの作戦は、手下達の命を軽視し過ぎてる。」


 イザベラの鋭い視線がグラキルスへ向けられる。


「そうだ。 俺の手下達を囮に使うだの、ふざけやがって!」


「私の手下達もな。」


「…ふっ、なるほど。そういう事ですか。」


 呆れたと言わんばかりに、二人を小馬鹿にした笑みを見せるグラキルス。


 その様子に眉がつり上がるフレイムルとイザベラ。


 どうやら作戦参謀グラキルスの作戦を巡って意見の相違があったらしい。


 フレイムルとイザベラ、グラキルスの鋭い視線がぶつかり、険悪な雰囲気になっていく。


(なんか、やばそうだな…)

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