第8話 女神は、空気を読まずにドヤ顔で現れる
――ゴブリン襲来から、半刻ほど後。
村は、まだざわついていた。
倒れたゴブリンの死体。
壊れた柵。
それでも、被害は最小限。
……というか。
「……おかしい」
俺は、村の端で一人、腕を組んでいた。
「こんな数、
俺ひとりで何とかなってるのが、
そもそもおかしい」
分かってる。
自覚は、ある。
だが。
「……なんで、できてるんだよ」
疑問は、尽きない。
その時だった。
「――ふふん!」
背後から、
やけに自信満々な声がした。
「ここまで順調ですね!」
「……嫌な予感しかしない」
振り向いた瞬間。
光。
そして。
「やっぱり私の設定、完璧でした!」
白いローブ。
無駄に輝く羽。
胸を張った――
「……女神」
村のど真ん中に、
堂々と降臨していた。
「ちょっと待てぇぇぇ!!」
俺は即座に叫んだ。
「なんで今出てくる!?
しかも人前で!!」
「大丈夫です!」
女神は、満面の笑み。
「今は誰にも見えてませんから!」
「それもそれで怖いわ!」
村人たちは、
俺が空に向かって叫んでいる様子を見て、
「……やっぱり変な人だ」
「……戦いすぎて頭やられたか?」
などと、
余計な誤解を深めていた。
⸻
「それより見ました?」
女神は、嬉しそうに言う。
「子供たちの声援!
素晴らしい盛り上がりでしたね!」
「聞いてたのかよ……」
「もちろんです!」
胸を張る女神。
「声援が増えると能力上昇!
プロレス的には王道です!」
「だからその基準どこだよ!!」
俺は頭を抱えた。
「しかもさ……」
女神は、俺の顔――マスクを指差す。
「子供向けデザインへの自動変形、
ちゃんと機能してましたね?」
「してたよ!!
勝手に可愛くなってたよ!!」
「良いでしょう?」
「良くない!!」
「でも、
子供たち、怖がりませんでしたよね?」
「……それは……」
否定できなかった。
⸻
「それに」
女神は、
急に真面目な顔になる。
「怒りモードも、
初発動しました」
「……ツノのやつか」
「はい!」
満足そうに頷く。
「守る対象が明確な時、
あなたのマスクは
“守護獣形態”に近づきます」
「名前まで付けてんのかよ……」
「当然です!」
女神は、さらに続ける。
「ちなみに、
村を守るイベントをクリアしたので――」
「……嫌な言い方すんな」
「新機能、解放しました!」
「やめろォ!!」
⸻
「次からはですね」
女神は、楽しそうに指を立てる。
「・声援による能力補正が安定化
・ツッコミを受けるほど耐久力上昇
・パイプイスの召喚短縮」
「最後待て!!」
「はい?」
「ツッコミ受けるほど強くなるって、
俺もう村人全員に
ツッコまれてるんだけど!?」
「素晴らしい環境ですね!」
「最悪だよ!!」
⸻
女神は、満足そうに頷いた。
「では」
軽く手を振る。
「この調子で、
覆面英雄として
世界を救ってください!」
「だから俺は英雄じゃ――」
光が、弾ける。
女神の姿が消える。
――静寂。
⸻
「……マスクさん?」
背後から、
リリアの声。
「……さっきから、
誰と話してたんですか?」
「……独り言だ」
「……ですよね」
彼女は、半眼だった。
子供たちが、遠くから声を上げる。
「マスクおじちゃーん!」
「またゴブリン来たら呼ぶねー!」
「……呼ぶな」
俺は、空を見上げた。
「……なぁ、女神」
もちろん、返事はない。
「……余計な機能、
これ以上増やすなよ」
――だが。
マスクの目元が、
なぜかドヤっと光った。
嫌な予感しかしなかった。
⸻
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