第7話 声援が増えると、ツッコミも増えた
――空気が、張りつめていた。
村の入り口。
俺――マスクと、ゴブリンの群れ。
数は、ざっと十数体。
「……多いな」
正直、少しだけ引いた。
だが、背後を振り返ると――
「……っ」
子供たちが、固まっていた。
逃げ遅れたわけじゃない。
俺の背中を見ている。
「……マスクおじちゃん……」
小さな声。
それだけで、腹が決まった。
「……来いよ」
俺が一歩踏み出すと、
ゴブリンたちが一斉に動いた。
⸻
「うおおお!!」
最初の一体が、棍棒を振り上げる。
俺は、踏み込み――
「エルボー!!」
顔面に叩き込む。
吹き飛ぶ。
「……っ!」
二体目が横から来る。
腕を絡め――
「ネックロック!」
締め落とす。
倒れる。
その様子を見て、
村人たちは、まだ固まったままだった。
「……素手だぞ?」
「……本当に、素手だ……」
疑いと困惑。
信じきれない目。
だが――
「いけー!!」
「マスクおじちゃーん!!」
子供の声が、響いた。
次の瞬間。
体が、軽くなった。
「……あ?」
踏み込みが、さっきより速い。
視界が、クリアになる。
「……声援、か?」
女神の言葉が、脳裏をよぎる。
――盛り上がるほど、強くなる。
「……余計な機能、付けやがって」
口元が、少しだけ歪む。
⸻
ゴブリン三体が、同時に突っ込んでくる。
「スピアァァ!!」
一直線。
まとめて、吹き飛ばす。
「おお……」
「……なんだ、あれ……」
村人の声が、ざわつき始めた。
「……強すぎないか?」
「……いや、ゴブリン相手でも普通は……」
そこに。
「がんばれー!!」
「まけるなー!!」
子供たちの声援が、さらに大きくなる。
――その瞬間。
「……あ、やべ」
自分でも分かる。
テンションが上がってる。
勢いで、ゴブリンを持ち上げ――
「……えい」
軽く、投げる。
ドォン!!
地面が、揺れた。
「……」
一瞬の静寂。
次の瞬間。
「ちょっと待て!!」
「今の、投げ方おかしいだろ!!」
ついに、
村人のツッコミが入った。
「ゴブリンって、そんな飛ぶか!?」
「人の力じゃないだろ!!」
「……今さらかよ」
俺は、心の中で呟く。
⸻
「……マスクさん!!」
リリアの声。
「その戦い方……
どう見ても異常です!!」
「……分かってる」
ゴブリンが、最後の抵抗で突っ込んでくる。
俺は、迎え撃つ。
「ラリアット!!」
叩き落とす。
沈黙。
――すべて、倒れた。
⸻
「………………」
しばらく、誰も動かなかった。
最初に声を上げたのは――
「すげー!!」
「かったー!!」
子供たちだった。
駆け寄ってくる。
「マスクおじちゃん、さいきょー!!」
次に。
「……いや、待て」
「勝ったけどさ……」
村人たちが、頭を抱える。
「素手でゴブリンの群れ倒すって、
どういう理屈だよ……」
「プロレス……って、
こんな危険なものだったか?」
「……違うと思う」
俺は、ぼそっと言った。
リリアが、苦笑しながら近づいてくる。
「……とりあえず」
彼女は言った。
「あなたが
怪物じゃないのは分かりました」
「……それは、助かる」
「でも」
じっと、マスクを見る。
「普通の人でもないですね」
「……それも、分かってる」
子供たちが、俺の周りを囲む。
「ねぇねぇ!」
「またやって!」
「つぎはなにするの!?」
俺は、頭を掻いた。
「……次は」
遠くを見ながら言う。
「……飯、かな」
――笑いが、起きた。
村に、
ようやく空気が戻った。
そして、誰かが呟いた。
「……英雄、かどうかは分からんが」
別の誰かが、続ける。
「……あいつがいなきゃ、
村はやばかったな」
俺は、聞こえないふりをした。
マスクの奥で、
少しだけ――胸が、温かくなった。
⸻
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