表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/44

第36話 ヒール殺法は、正義が嫌がることしかしない





 ――ゴング代わりの笛が鳴った。


「試合、再開でーす!」


 女神レフェリーの声が、

 やけに明るく響く。


「……テンション間違ってるだろ」


 俺――マスクは、

 構えを低くした。


 正面には、

 オーク隊長。


 そして――

 リング外を取り囲むオークたち。


 全員、

 ニヤついている。


「……嫌な予感しかしねぇ」



 最初に動いたのは――

 俺じゃない。


「グルァァァ!!」


 リング外のオークが、

 突然叫んだ。


 子供を指差し、

 威嚇するように斧を振り上げる。


「……っ!」


 だが――

 結界がある。


 分かってる。


 分かっててやってる。


「観客への威嚇行為は――」


 女神が言いかける。


「問題ありません!」


 オーク隊長が即座に遮る。


「攻撃していない!」


「……うっ」


 女神、

 一瞬言葉に詰まる。


「……た、確かに……

 攻撃はしてません!」


「……くそ」


 完全にルール内。



「……来い」


 俺は、

 隊長を睨む。


「正面からやれ」


「それは――」


 隊長は、

 斧を地面に置いた。


「ヒーローの考えだ」


 次の瞬間。


 リング外から、

 砂が投げ込まれる。


「……っ!!」


 視界が、

 一瞬白くなる。


「反則――」


「していません!」


 即座に反論。


「投げたのは

 リング外!」


「……うぅ……」


 女神、

 苦悩の顔。


「……視界妨害、

 グレーゾーン……!」


「……最悪だな」



 その隙に。


 オーク隊長が、

 組み付いてきた。


「……!」


 力が、

 重い。


「……だが」


 踏ん張る。


「ヘッドロック!!」


 首を締める。


「……効いてる」


 だが――


 リング外のオークが、

 ロープを引く。


「……っ!」


 バランスが、

 崩れる。


「ロープは

 触ってません!」


「……引いてるだろ!」


「触ってない!」


「……確かに

 引っ張ってるだけで

 触ってはいません!」


「……理屈がクソだ!」



 隊長が、

 耳元で囁く。


「守る者は、

 忙しいな」


「……っ!」


 その瞬間。


 背中に肘。


「……ぐっ!」


 倒れる。


 ダウン。


「……ワン!」


 女神が、

 慌ててカウントを始める。


「……ツー!」


 すぐ起き上がる。


 2.3カウントくらい。


「……ちっ」


 オーク隊長が、

 舌打ち。



「……見ろ」


 隊長が、

 観客席を見る。


「貴様が倒れるたび、

 奴らは息を呑む」


「……」


「それが――

 ヒールの仕事だ」


 胸糞が、

 悪くなる。


 だが。


 否定できない。



 次は――

 連携。


 隊長が、

 俺をロープへ振る。


「……!」


 反動。


 戻った瞬間。


 リング外から、

 タイミングを合わせた威嚇咆哮。


「……っ」


 一瞬、

 集中が切れる。


「……今だ」


 ショルダータックル。


 叩きつけられる。


「……くっ」



「……反則では?」


 女神が、

 小さく呟く。


「全て――」


 隊長が、

 即答。


「ルール内だ」


 女神、

 唇を噛む。


「……確かに……」



 リングの上。


 俺は、

 膝をついた。


「……なるほどな」


 息を吐く。


「……ヒールってのは」


 立ち上がる。


「強さじゃなく、

 嫌さで勝つんだな」


 マスクの奥で、

 目が細くなる。



「……だが」


 拳を、

 握る。


「俺は、

 嫌なことから

 逃げるために

 立ってるわけじゃない」


 オーク隊長が、

 ニヤリと笑う。


「ほう?」


「……次は」


 構え直す。


「俺が、

 “嫌なこと”を

 やる番だ」


 女神レフェリーが、

 ごくりと唾を飲む。


「……え?」



 リングの外。


 オークたちが、

 一斉に身構える。


 そして――

 観客席が、

 静まり返る。


 誰も、

 声を出していない。


 だが――

 感情は、

 確実に動いていた。



 ヒール殺法は、

 成功している。


 だが同時に――

 観客の心を

 一つにまとめてしまった。


 それが、

 どれほど危険なことかを

 オーク隊長は、

 まだ知らない。




ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

少しでも「おもしろかった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、

感想・レビュー・ブックマーク・評価などで応援していただけると、とても励みになります。


皆さまの反応を参考に、今後の更新ペースや展開も調整していきたいと思っています。

誤字脱字なども気づいた点があれば、遠慮なく教えてください。


これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ