第31話 オークを、蹴散らす
――最初に動いたのは、オークだった。
「グォォォ!!」
低く、揃った咆哮。
「……合図、
揃えてやがる」
俺――マスクは、前に出る。
「リリア、
下がれ!」
「……うん!」
返事は短い。
迷いはない。
⸻
オークが突っ込んでくる。
数は――
七。
隊列を組み、
左右から挟み込む動き。
「……知恵、使うな」
だが。
「遅い」
⸻
地面を蹴る。
ドンッ!!
一体目のオークの懐へ。
「エルボォォ!!」
顔面に、
鋭く叩き込む。
ゴシャッ
音を立てて、
オークが吹き飛ぶ。
「……一体!」
⸻
二体目。
横薙ぎの棍棒。
「……甘い」
踏み込み、
内側へ。
「ネックロック!!」
首を抱え、
体重を預ける。
「……寝ろ」
ドンッ!!
地面に、
叩き落とす。
⸻
三体目、四体目が同時に来る。
「……連携か」
なら――
「ダブル・ラリアット!!」
両腕を振り抜く。
バキッ!!
二体同時に、
吹き飛ばす。
木に激突し、
動かなくなる。
⸻
「……くそっ」
リリアの息が、
詰まるのが分かる。
これが、
“普通の戦い”じゃないと。
⸻
背後。
気配。
「……っ!」
振り向いた瞬間、
オークの槍。
「……見えてる」
槍を掴み、
引き寄せる。
「スパインバスター!!」
地面に、
叩きつける。
ドゴォン!!
⸻
残り、
二体。
距離を取る。
「……引く判断、
早いな」
普通のオークは、
逃げない。
だが――
こいつらは違う。
「……完全に、
指示されてる」
嫌な確信。
⸻
「……終わりだ」
踏み込む。
最後の一体が、
叫ぶ。
「グルァァ!!」
だが――
「スピィィィア!!」
一直線。
腹部に突き刺さる。
ドォン!!
そのまま、
地面を抉る。
⸻
静寂。
森に、
風の音が戻る。
倒れたオークたち。
全員――
生きている。
「……」
俺は、
拳を緩める。
「……やっぱりだ」
魔物相手だが、
無意識に手加減している自分に気づく。
殺す必要は、
ない。
倒せばいい。
⸻
「……マスク」
リリアが、
恐る恐る近づく。
「……すごい……」
「……すごくない」
即答した。
「……怖いだけだ」
「……え?」
「……オークが、
こんな戦い方をする理由がな」
倒れたオークを見る。
「……これは、
前触れだ」
⸻
その時。
オークの腕に、
刻まれた痕が目に入った。
「……?」
しゃがみ込み、
よく見る。
「……紋章……?」
ただの傷じゃない。
焼き印のような印。
「……リリア」
「……なに?」
「……オークの問題、
これだけじゃない」
立ち上がる。
「……誰かが、
後ろにいる」
⸻
森の奥。
まだ、
気配がある。
群れは――
これで終わりじゃない。
俺は、
マスクに触れた。
「……選ぶ時間は、
もう少し先だな」
今はただ。
蹴散らすしかない。
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