第23話 プロレスは、空にもリングを作る
――その夜。
俺――マスクは、宿屋の屋上に立っていた。
空は静かすぎる。
星が、少ない。
「……あいつ」
昼間の“空を支配する存在”。
考えるほど、
腹の奥が冷えていく。
強い。
理不尽。
話が通じない。
「……どうやって、
殴る」
その時だった。
「ふふん!」
「……来るな」
背後に、
予想通りの声。
⸻
「答え、出ましたよ!」
女神が、
無駄に自信満々で立っている。
「……聞いてない」
「聞かなくても、
もう決まってます!」
女神は、
指を鳴らした。
⸻
カァン!!
――鐘の音。
「……?」
次の瞬間。
空間が、
四角形に区切られた。
ロープ。
コーナーポスト。
マット。
「……は?」
俺は、
目を見開いた。
「……リング?」
「そうです!」
女神は、
満足そうに頷く。
「プロレスリング召喚能力です!」
「……なんでだよ!!」
⸻
「空を支配する存在は、
ルールの外にいます」
女神は、
珍しく真面目な顔で言う。
「だから――
ルールの中に引きずり込みます」
女神は、
俺を指差した。
「あなたのルールで」
⸻
「……勝ち方は?」
俺は、
静かに聞いた。
「簡単です」
女神は、
にっこり笑う。
「3カウントを取るだけ」
「……相手が、
空そのものでも?」
「ええ!」
即答だった。
⸻
俺は、
リング中央に立つ。
ロープに触れる。
「……馬鹿みたいだ」
だが。
拳を、
握る。
「……悪くない」
空を支配する存在は、
支配者であっても――
「……レスラーになった瞬間、
対等だ」
マスクの目元が、
これまでで一番、静かに燃えた。
⸻
その時。
雲が、
再び渦を巻く。
『――理解した』
空の声。
『――ならば、
その四角の中で語ろう』
影が、
リングの上空に降りる。
ロープが、
軋む。
「……よし」
俺は、
コーナーに登る。
「……メインイベントだ」
空を支配する存在 vs 覆面レスラー・マスク
――ゴングは、もうすぐだ。
⸻
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